追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

作戦

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 まぁ、流石に冗談だ(半分くらいは)。このまま同士討ちで終わるのは、この街の人たちに申し訳なさ過ぎる。仕方なく、俺が仲介に入り、争いを止めさせる。
 途中でゴリマッチョが俺のことを馬鹿にしながら抵抗してきたが、所詮は小物。俺は目にも見えぬ速さで、渾身の蹴りを男のシンボルめがけて蹴り上げる。だが、渾身といっても、ちゃんと手加減はしている。俺が本気で蹴ったら、真っ二つに割れるからな。物理的に。
 俺の蹴りを受けたゴリマッチョは体をビクンッと震わせ、その場に座り込んだ。それを見ていたガリはうっ、という声を漏らして、自分のシンボルを抑えていた。大丈夫。大人しくしてたら、やらないから。
 隣にいた治癒師は痛がるゴリマッチョを見て、いい気味と言って笑っていた。多分、男じゃなくても、俺の蹴りは痛いぞ? 
 そしてロザリア。お前はいつまでニヤニヤしている。ほっぺ引っ張るぞ。

「話が進まないから進めさせてもらうぞ。ロザリアには、そこに倒れている男をつかせる。あんたたちは俺についてもらうぞ?」

「は、はい! そうさせてもらいますっ!」

 さっきとは違って、えらく腰が低いな。そんな上司の顔をうかがう社員のような目線を向けなくても……そんな目で見ても、ボーナスやらんぞ?

「時間がないから手短に言わせてもらう。作戦内容はロザリアが言った通り、部隊ユニットでいく。最初は近接職のあんたとゴリマッチョが違う方向から攻めてもらう。俺とロザリアは後方からレッドドラゴンの攻撃をできるだけ対処する。余裕があったら攻撃魔法も使うが、基本は防御魔法を使う。ロザリア、お前は防御魔法を使えるか?」

「うーん。攻撃魔法で防御するのを防御魔法っていうなら使えるかな?」

「それでも問題ない。だが、お前がゴリマッチョを守ることを忘れそうだな。お前、自己中だし」

「な――ッ! じ、自己中じゃないしっ!」

「洞窟を壊したの。誰でしたっ――」

「すいません。私は自己中です」

「ってわけだ。ゴリマッチョが負傷した場合は、俺が治癒師のあんたを連れて直しに行く。その間、ガリの後方支援がいなくなるわけだが……頑張ってくれ」

「ええ! そんなぁ! 無茶ですよ!」

 うるさいなぁ。仮にもAランクだろ。ちょっとくらい耐えてみろよ。仕方ない。ロザリア、やってやれ。

「頑張ってください。あなただけが頼りなんです」

「ふん、この僕に任せなさい」

 ガリの調子が戻った。ほんと、単純だなぁ。治癒師も呆れているじゃないか。もっとしっかりしろよ。
 ロザリアには視線を送っただけだったが、うまく俺のやって欲しいことを読み取ってくれた。パートナーとして嬉しいぞ。
 だがロザリア、わかったから、褒めてくれっていう表情をこっちに向けるな。正直うっとうしい。どうせ褒めたところで調子に乗るし、ここは無視だ。

「作戦は以上だ。本当はもっと綿密に行いたいが時間がない。あとはその場でなんとかやって欲しい。で、だ。すぐに討伐に行きたいが、準備が整ってないと思う。だから、少し時間を取ることにする。今から十分後、レッドドラゴンが出たらしい方向にある西門に集合だ」

 おぉ、なんか最初は馬鹿にされていたが、いつの間にか、俺がリーダーみたいな立ち位置になっている。俺、実はリーダーって立場が合ってたんじゃないか?
 昔のパーティーでも俺がリーダーをやっていれば、あの女たちは……アイツら、面食いだったから一緒だな。くそッ! イケメン死すべし!

 で、そろそろ起きてもらわないと討伐作戦に支障が出るので、俺は嫌々ながらも、ゴリマッチョに回復魔法をかける。
 え? 治癒師じゃないのに回復ができるのかって? 実は治癒師というのも魔術師の中の一つであり、回復に特化した魔術師のことを一般に指すのだ。そして、俺のような接近戦を得意とする魔術師は魔法剣士、遠距離を得意とするのが、そのまま魔術師と呼ばれるのだ。
 まぁ、俺の場合は遠距離魔法も使えるし、回復魔法も使えるので、元の役職となる魔術師と名乗っているのだ。ふん、凄いだろ。もっと褒めろ。

 ゴリマッチョは俺の神聖な光に包まれ、ホッとした表情を見せたのは一瞬。俺を見た瞬間、飛び上がって――

「すいませんでした――ッ!」

 ま、小物によくある反応を示して、慌ててギルドから出て行った。Aランクなのに小物とは。一個上のSランクとどれだけの差があるのだろうか? あっ。あれはバケモノだからいいか。
 そして、いつの間にか、ガリも消えていた。アイツら、このまま戻ってこないんじゃないんだろうな?

「よし、ロザリア。俺たちも行くか」

……で、俺はロザリアと二人で出てきたはずなのだが……

「……なんで、あんたがいるんだ?」

「別にいいでしょ? どうせ行くところは同じなんだし」

 なぜか、治癒師の女がついてきていた。
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