白い結婚か黒い結婚か。

mabu

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白と黒

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「聖女ユカリ!私はお前との婚約を破棄する!」

婚約披露のパーティーでの突然のお前呼び。

婚約破棄はコチラとしても願ってもない事だけど何様?

あぁ、

第二王子だったわ。



私、吉井由香里が突然この世界に召喚されたのはつい数日前の事。


この国が最大国である為、
この世界の均衡を保つ為だけに召喚された聖女として。

世界の均衡とか訳の分からない説明をされたが
分かった事はもう二度と元の世界には戻れない事と
この国の王子との結婚が決まっていた事だけ。

あぁ、後はこの国がこの世界で最大国であり
王子は3人。

第一王子は皇太子としてすでに結婚もしていて王子2人と王女の3人の子持ち。

少し年の離れた弟の第二王子と第三王子が候補者だったが
第二王子王子のたっての希望で
第二王子との結婚が決定。

国内外にも既に発表されていて
5日後にはお披露目パーティーが行われるとの事。

そんなバカげた話を直ぐに信じられると思う?

ココ何処?から始まって
召喚がど~たら
聖女がど~たら
挙句に結婚だぁ~?

何処の頭のイカれた…ゴホン。
ネジの緩んだお人達なんでしょう。


ただ、悲しいかな全て現実で
時間が経っても
翌日寝て起きても事態は変わらない。

ソコでようやく現実を受け入れつつも
アレよアレよとドレスの寸法やら
パーティー当日の流れの学習やらで
あっという間にパーティー当日。

今日の主役である第二王子との顔合わせも無いまま当日とか有りなの?

第二王子が私と同じ19歳とは聞いたけど
イマイチ人柄は分からない。

一つ年下の第三王子の人柄は
とても大人しく優しいと皆が教えてくれたけど

第二王子の事になると言葉を濁すんだよね。

ソレだけで問題有り有りな気配がしてたけど

当日になってガチでおバカちゃんだったと分かるなんて……
巻き込まれた私の立場はどーなるの?

私が驚いて何も言えない内に第二王子はベラベラと話ている。

「私には好いた人が居る。
彼女を愛してはいるが身分が低い為結婚は諦めていた。
だが、お前をお飾りの正妃として結婚してやる変わりに彼女を側妃にと思っていたのに!
側妃は国王しか認められないなど聞いてなかった!
側妃が無理ならお前の様な何処の生まれかも分からない様な得体のしれない女と結婚するつもりはない!
よって、婚約は破棄する!
…あぁ、白い結婚でよければ結婚してやる。
私は彼女しか愛せないから彼女には愛人として生活してもらうが
私は彼女と住むゆえ
お前は1人で別邸にて暮らせ!
うん、ソレがイイ!
お前がどうしてもと頼むから仕方なく結婚してやるんだ、感謝しろ!
婚約破棄も取り消してやる!」



……バカ王子だったんだね?
だから皆言葉を濁していたんだね?

「何とか言え!
お前は口がきけないのか!」


プチ


「さては私に見惚れて言葉がでないのだな?」


プチプチ


「そんな私と結婚出来るのだ
白い結婚とはいえ有り難くて言葉に出来ないのだな?」


プチプチプチ



「では、おま」
    「………した。」

「えっ?」

「婚約破棄を承りましたと申しました。」


「な、なんだと!」

「だからぁ~、婚約破棄すればって言ってんでしょ?
耳大丈夫?
黙って聞いてればお前、お前って、あんた何様?
王子様?
はっ!
王子が何だっていうのよ?
皇太子様は立派に成長なさってるし次の国王になる方だから偉い方だけど
貴方第二王子ってだけで政務も何も熟して無いんじゃない?
ちゃんと勉強して政務に勤めてたら貴方より聖女の立場の私の方が身分が上だって分かるのに…
皆年が離れて生まれた貴方を甘やかし過ぎたと心配してたわ。
だけど国の為、世界の為に召喚した聖女を自分の手で安全な暮らしを提供したいと言った貴方を信じて結婚を許可したのに
ソレを裏切るなんて…
国王様。最初の聖女の権力を使わせて貰います。」


今までのやり取りを聞いていた国王が寂しそうな申し訳無い様な顔で頷くのを見て
第二王子に向き直る。

「第二王子殿下。
聖女の名において
貴方の王位継承権を剥奪します。
今から貴方は王子ではなくなる為何処かの爵位を承る様に!
ただし!
高位貴族の地位は実績を示してからでないと認めません。
本気で愛した方が居るならその方と結婚するも良し。
コレからは愛する家族の為にもしっかりと勤めなさい!」


近衛兵に連れられて会場を出て行く王子。


すると1人の若い男性が近づいて来て片膝を付き頭を下げる。


「初めまして聖女ユカリ様。
私は第三王子のカイザールと申します。
兄である第二王子が大変失礼をいたしました。
横暴な物言いの第二王子に対し配慮ある采配、有り難い事でございます。
貴女様のその雄姿に一目惚れ致しました。
どうか私と結婚して頂けないでしょうか?
是非とも私の身も心も貴女の為に尽くさせて頂きたく思います。
貴女が望むなら如何様な男にでもなりましょう。
屈強な男がお望みならその肉体をも手に入れてみせます。
頭の切れる男がお望みならこの世界の全知識をも習得してご覧に入れます。
どうか私と結婚して下さい!
貴女の望む事なら全てなんでも叶えて見せます!」



……
………

国王様や?
皇太子様もか?
貴方達は年が離れたからと教育を間違えていませんか?


方や白い結婚をといい

方や黒い結婚とも言える位の執着。

極端な弟2人ができてますよ?

白い結婚がなくなったと同時に
黒い結婚が決定。


貴女の言う色に染まります!
貴女以外の色には染まりません!
とばかりな執着質な黒い結婚より
おバカちゃんとの白い結婚の方が自由に出来たのでは?

冷静に考えれば
あのまま条件をつけて白い結婚を受け入れれば
コレから先1人でのんびり快適な生活が出来たのでは?

ああ~~!

失敗した~~!


いや、
でもそんな上手くはいかなかったよね?

あのおバカちゃんに条件を出しても横暴なお坊ちゃんが
私の条件をスンナリ了承する訳がない。

本当に?

私の出す条件なんて知れてるよ?

まず白い結婚は絶対
後は住む家の権利
老後までの生活費

コレ位なら
スンナリ了承したんじゃね?

元々白い結婚って言ってたから
契約書に喜んでサインしたでしょうよ。

住む家も別邸って言ってたから多分個人で所有してる邸宅があるはず。

生活費も個人で別邸を所有する位の個人資産があったはずだし、
なくても王子用の予算か王子妃用
の予算が出るから預金をすれば暮らせていけたはずなんだ……


ああああ……


黒い結婚も悪くは無いよ?
相手が完全に自分に合わせてくれるんだから。
でもその相手を好きになれなかったら
ソレはもう拷問でしかないんだよ…

しかも相手が自分に愛想を尽かしたら?
執着が憎しみや憎悪に変わった途端、
ジ.エンドなんよ?

…ブルブル…


「どうぞ宜しくお願いします。
聖女ユカリ様…」


第三王子の期待の籠もった目。

パーティー会場中の歓声や喜声に押されて渋々とその手を取ると
会場中に割れんばかりの拍手が響く。

今まで会った人の評価を信じるしかない。

黒い結婚を望む様な人物が周辺に自分の本性を表す様な事はしないと思うけど……

彼が私の何を気に入ったのか
先程の表現は本心なのか
今後はじっくり話し合って方針を決めていこう。




全く知らない相手との結婚。
貴女ならどっちを選ぶ?

白い結婚を選び自分の力で自由をもぎ取る?

黒い結婚を選び相手を自分色に染めて
色褪せない様に怯えながら日々塗り重ね続ける?



私?

私はしょっぱで間違えて選択肢を減らしたので
黒一択!

でも、怯え続けて暮らすのはごめんだから開き直って白い結婚の提案もしてみます。

コレから旦那様になる人なんだから
どちらにせよ仲良くなりたい。

見た目は申し分なく美男子だし、結構ドンピシャなので
中身さえ嫌な奴でなければ直ぐ好きになれるハズ…

お互いに見合う様に努力をしようかな?





半年後異世界から召喚された聖女様と
最大国の第三王子との婚姻式が無事に行われた。


その後2人の話し合いで白い結婚になったのか黒い結婚になったのかは2人しか知らない。


……数年後には誰でも分かったとかという終わりかも?…



………………END……………………








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