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最終章
⚠️閲覧注意⚠️当該話には自殺に関する内容が含まれます。 乱心
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そんなののどこが可愛いんだろう。身内同士の間で無理矢理育まれた生命なのに。
いっそ死ぬか、男に産まれて殺されていれば――タマル冠だって、あそこまで追いつめられずに済んだだろうに。
「長上、最近手がしびれて困ってるんです。なんだかピリピリして……握ってくれたら治るかも」
だからもう、赤ん坊をあやすのは止めて。
「子供返りもいい加減にしろ。その態度も女を知れば少しは改まるんじゃないのか、媛相手なら構わん。誰とでも番えばいい」
驚いて、視界から一切の色が消えた。
「聞きましたよ。霧彦も見放されて可哀想に。一人ぼっちで泣いていらっしゃるんですね」
「私は泣いてない。勝手に決めつけないでください」
ああ気持ち悪い。理解者面して抱き着くなよ。と思ったら、杼媛は急にしくしくと泣き出した。どいつもこいつも情緒不安定かよ。媛が次々とこんなんじゃ、長上も大変だな。
「ねえね……あたくしだけ生きててごめんなさい」
「っ、まさかそれ、天媛の事じゃ」
「ええ。それと霧彦はご存じでしたか、あやぎり朝の、その由来」
――天媛処刑前夜。
あたくしは最期まで付きっきりで、ねえねのお世話を命じられていました。
といっても、いつも通りお喋りして甘えていただけで、はたから見れば、どちらが世話係なのやらという感じでしたけど。
いつまでも楽しく過ごしていたら、あたくしはついうっかりと、海媛の所へ行くのを忘れておりました。
海媛は誠実なお人柄だし、当時から料理もお得意で。毒殺を警戒した長上によって、ねえね専属のお食事係を命じられていたのです。
でもあたくしが取りに行くのを忘れたせいで、最後なのに食事抜きになりそうでした。ねえねは笑って許してくれたけど。
そこへ長上が、心底呆れながら夕餉を運んで来たんです。流石に独房の中までは入って来ませんでしたけど。そして去り際に、ねえねが声を掛けたんです。
「あれからずっと。アンタにええ名前考えとったんよ、あやぎり、って」
知らないし、全く興味も沸かない女の処刑話を聞かされるなんて、どんな睦言だ。
「だから、だあい好き。霧彦のお顔は、天媛ねえねに似てるもの」
もしかして。もしかして。長上が好きなのも初めから。どうしておかしいと思わなかったんだろう。祈祷師の話に細かい指定は無かったし、長上は性格上、顔の好みもうるさくない。相手は別に誰でもよかったんだ――それなのに、何で俺なんかを呼んだんだ。
あれから何度か、杼媛に誘われるまま体を繋げたら、とうとう子供が出来てしまった。しかも産まれたのは男だった。
「うっううっ……、どうして、どうして赤ちゃんばっかり~。もうおれのことなんか、皆どうでもいいんだろっ。知らない知らない、そんなヤツ大っきらい。泣き声もうるさい……さっさと死んじゃえ」
「霧彦、なんてこと言うのですか、流石に度が過ぎています。杼媛に謝りなさい」
「……ぜったいにいやだっ、だってほんとの事だもん。なんでおれが海媛なんかに怒られなくちゃいけないんだ。アンタなにもしてないじゃん、飯炊いて居座ってるだけ」
「姐さま、放って置きましょう。そんな人、気にする価値も無いのだから」
俺は無言で産屋を出ていき、そのまま居室で首を吊った。両脚が宙に浮き、衝撃と共に喉がギチギチと締まっていく、やがて全てが暗澹に包まれた。どこか遠くで物音がして、最期に聴きたかった声もする。でも何を言っているか、結局全然わからなかった。
いっそ死ぬか、男に産まれて殺されていれば――タマル冠だって、あそこまで追いつめられずに済んだだろうに。
「長上、最近手がしびれて困ってるんです。なんだかピリピリして……握ってくれたら治るかも」
だからもう、赤ん坊をあやすのは止めて。
「子供返りもいい加減にしろ。その態度も女を知れば少しは改まるんじゃないのか、媛相手なら構わん。誰とでも番えばいい」
驚いて、視界から一切の色が消えた。
「聞きましたよ。霧彦も見放されて可哀想に。一人ぼっちで泣いていらっしゃるんですね」
「私は泣いてない。勝手に決めつけないでください」
ああ気持ち悪い。理解者面して抱き着くなよ。と思ったら、杼媛は急にしくしくと泣き出した。どいつもこいつも情緒不安定かよ。媛が次々とこんなんじゃ、長上も大変だな。
「ねえね……あたくしだけ生きててごめんなさい」
「っ、まさかそれ、天媛の事じゃ」
「ええ。それと霧彦はご存じでしたか、あやぎり朝の、その由来」
――天媛処刑前夜。
あたくしは最期まで付きっきりで、ねえねのお世話を命じられていました。
といっても、いつも通りお喋りして甘えていただけで、はたから見れば、どちらが世話係なのやらという感じでしたけど。
いつまでも楽しく過ごしていたら、あたくしはついうっかりと、海媛の所へ行くのを忘れておりました。
海媛は誠実なお人柄だし、当時から料理もお得意で。毒殺を警戒した長上によって、ねえね専属のお食事係を命じられていたのです。
でもあたくしが取りに行くのを忘れたせいで、最後なのに食事抜きになりそうでした。ねえねは笑って許してくれたけど。
そこへ長上が、心底呆れながら夕餉を運んで来たんです。流石に独房の中までは入って来ませんでしたけど。そして去り際に、ねえねが声を掛けたんです。
「あれからずっと。アンタにええ名前考えとったんよ、あやぎり、って」
知らないし、全く興味も沸かない女の処刑話を聞かされるなんて、どんな睦言だ。
「だから、だあい好き。霧彦のお顔は、天媛ねえねに似てるもの」
もしかして。もしかして。長上が好きなのも初めから。どうしておかしいと思わなかったんだろう。祈祷師の話に細かい指定は無かったし、長上は性格上、顔の好みもうるさくない。相手は別に誰でもよかったんだ――それなのに、何で俺なんかを呼んだんだ。
あれから何度か、杼媛に誘われるまま体を繋げたら、とうとう子供が出来てしまった。しかも産まれたのは男だった。
「うっううっ……、どうして、どうして赤ちゃんばっかり~。もうおれのことなんか、皆どうでもいいんだろっ。知らない知らない、そんなヤツ大っきらい。泣き声もうるさい……さっさと死んじゃえ」
「霧彦、なんてこと言うのですか、流石に度が過ぎています。杼媛に謝りなさい」
「……ぜったいにいやだっ、だってほんとの事だもん。なんでおれが海媛なんかに怒られなくちゃいけないんだ。アンタなにもしてないじゃん、飯炊いて居座ってるだけ」
「姐さま、放って置きましょう。そんな人、気にする価値も無いのだから」
俺は無言で産屋を出ていき、そのまま居室で首を吊った。両脚が宙に浮き、衝撃と共に喉がギチギチと締まっていく、やがて全てが暗澹に包まれた。どこか遠くで物音がして、最期に聴きたかった声もする。でも何を言っているか、結局全然わからなかった。
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