6 / 52
ひさごの章
杼媛
しおりを挟む
もう恥も外聞もかなぐり捨てて、すぐ横に座る義兄の腰に飛び付いた。期待どおり抱きしめ返してくれたので、少しだけ安心した。
「あー、よしよし。ひさごは偉いな~、よーく頑張った。ずっと我慢してたじゃないか、怖かっただろう、私の義弟は大したやつだ」
「ま、泣いて当然の結果でしょう。よいよい、無礼講じゃ。この海媛が保障する」
俺が泣きつくしてから少し落ち着いた頃合いを見計らって、義兄は炊事場へと戻って行った。
「申し訳ございません。情けなくも取り乱し、お見苦しい姿を見せてしまいました」
「別によい。あれは無礼講、休んで身動きが取れるようになったのなら、本題はここからです。わたくしに付いていらっしゃい」
海媛の後ろをトボトボと歩き、宮殿内を移動する。すれ違う使用人は皆一礼して去っていくが、全員から向けられる好奇の目は隠せない。そのまま庭に出て桑の木の間を抜け、カタコトカタコトと音が鳴る建物に入ったら、まだ妙齢の女人が機織り機の前に座り、どこか儚げな風情を漂わせていた。彼の女は海媛が近付くとこちらを振り向き、あどけない笑顔を見せた。
「まあ、姐さま。もう引っ張って来るなんて。相変わらず雷さまの様、くわばらくわばら」
「杼媛こそ、減らず口を叩く暇があったら、睦言でも磨きなさいよ」
「なんと無礼なお言葉。世が世であれば、さぞあたくしを憐れんで下すったでしょうに。ヨヨヨ」
「ええごもっとも。杼媛のご父兄には感謝しなくては。我らが長上に寝返って下すって、ありがたや、ありがたやとね」
「もう、姐さまのいじわる。霧彦もそうお思いでしょう」
上目遣いに見つめられ、それ自体は蠱惑的な仕草なのに、こちらを見透かす様な瞳に冷や汗が流れた。
「……特段そうは思いません」
「ムムム、まあよいです」
「お喋りも程々にしましょう、霧彦を呼んだのは他でもない。わたくし達媛の内情を知ってもらう必要があるからです」
「あー、よしよし。ひさごは偉いな~、よーく頑張った。ずっと我慢してたじゃないか、怖かっただろう、私の義弟は大したやつだ」
「ま、泣いて当然の結果でしょう。よいよい、無礼講じゃ。この海媛が保障する」
俺が泣きつくしてから少し落ち着いた頃合いを見計らって、義兄は炊事場へと戻って行った。
「申し訳ございません。情けなくも取り乱し、お見苦しい姿を見せてしまいました」
「別によい。あれは無礼講、休んで身動きが取れるようになったのなら、本題はここからです。わたくしに付いていらっしゃい」
海媛の後ろをトボトボと歩き、宮殿内を移動する。すれ違う使用人は皆一礼して去っていくが、全員から向けられる好奇の目は隠せない。そのまま庭に出て桑の木の間を抜け、カタコトカタコトと音が鳴る建物に入ったら、まだ妙齢の女人が機織り機の前に座り、どこか儚げな風情を漂わせていた。彼の女は海媛が近付くとこちらを振り向き、あどけない笑顔を見せた。
「まあ、姐さま。もう引っ張って来るなんて。相変わらず雷さまの様、くわばらくわばら」
「杼媛こそ、減らず口を叩く暇があったら、睦言でも磨きなさいよ」
「なんと無礼なお言葉。世が世であれば、さぞあたくしを憐れんで下すったでしょうに。ヨヨヨ」
「ええごもっとも。杼媛のご父兄には感謝しなくては。我らが長上に寝返って下すって、ありがたや、ありがたやとね」
「もう、姐さまのいじわる。霧彦もそうお思いでしょう」
上目遣いに見つめられ、それ自体は蠱惑的な仕草なのに、こちらを見透かす様な瞳に冷や汗が流れた。
「……特段そうは思いません」
「ムムム、まあよいです」
「お喋りも程々にしましょう、霧彦を呼んだのは他でもない。わたくし達媛の内情を知ってもらう必要があるからです」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
鍵っ子少年のはじめて
Ruon
BL
5時45分頃、塾帰りのナツキは見知らぬ男の人に後をつけられていると知らずに帰宅した瞬間、家に押し入られてしまう。
両親の帰ってくるまで二時間、欲塗れの男にナツキは身体をいやらしく開発されてしまう。
何も知らない少年は、玩具で肉棒で、いやらしく堕ちていく─────。
※本作品は同人誌『鍵っ子少年のはじめて』のサンプル部分となります。
ゲイアプリで知り合った男の子が浮気してお仕置き調教されるはなし
ましましろ
BL
あらすじはタイトルの通りです。
※作者の性欲発散のために書いたのでかなりハードなプレイ、マニアックな内容となっております。
【登場人物】
黒田春人 (ハル)
会社員
26歳
宮沢時也 (M)
無職
18歳
タロさん
別のBL小説を同時に連載しているので投稿頻度はまだらです。
【※R-18】αXΩ 懐妊特別対策室
aika
BL
αXΩ 懐妊特別対策室
【※閲覧注意 マニアックな性的描写など多数出てくる予定です。男性しか存在しない世界。BL、複数プレイ、乱交、陵辱、治療行為など】独自設定多めです。
宇宙空間で起きた謎の大爆発の影響で、人類は滅亡の危機を迎えていた。
高度な文明を保持することに成功したコミュニティ「エピゾシティ」では、人類存続をかけて懐妊のための治療行為が日夜行われている。
大爆発の影響か人々は子孫を残すのが難しくなっていた。
人類滅亡の危機が訪れるまではひっそりと身を隠すように暮らしてきた特殊能力を持つラムダとミュー。
ラムダとは、アルファの生殖能力を高める能力を持ち、ミューはオメガの生殖能力を高める能力を持っている。
エピゾジティを運営する特別機関より、人類存続をかけて懐妊のための特別対策室が設置されることになった。
番であるαとΩを対象に、懐妊のための治療が開始される。
[R18] 輪姦されメス落ちする男子高校生
ねねこ
BL
高校2年の本田楓は、夏休みに友達と一緒に海に行く。
泳いでいると、楓はいつのまにかある島に辿り着く。そこで彼らは楓を輪姦し初めた。
楓の体は徐々に快感しか感じない体になり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる