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後輩思いの暁先輩

放課後の図書室仲間

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 やはり1―1にも居辛い灯枇あけびは、ヒヲス中学校でも当然の如く、図書室通いの常連となった。しかしケチな事に、ヒヲス中学校の図書室は昼休みと放課後にしか利用できなかったので、灯枇あけびはそれ以外の休み時間は渋々教室でも本を読み、移動教室の際は制服のポケットから文庫本を取り出して続きを読んだ。


 その日の放課後は部活動紹介で、色んな部活動員達が次々と交互に前に出て来て、部の特色をアピールした。その中には水泳部員達も居て、水泳界では定番ブランドの一つ、アリーナの赤いチームライン柄の、グレーカラーのジャージを着た集団が何やら部の活動を紹介した。灯枇あけびは彼らの仲間に入れば、もう一度水泳が出来る事に気が付いた。


 それと水泳部とは通称「スイ部」の座を争う、吹奏楽部の集団も現れて、吹奏楽器を吹き鳴らした。灯枇あけびはそれを見て、フルートなんて吹けたら格好いいだろうなあ、とは思ったものの、たしか母親か誰かがきつい練習は灯枇あけびには無理だと言い、更には女子が多い吹奏楽部は上下関係が大変に厳しいという噂も耳にし、たしか妃鞠も吹奏楽部ってちょっと良いなと言っていたため、灯枇あけびは吹奏楽部にも、どこの部活にも見学に行く事は無かった。


 灯枇あけびはもうじき1年生専用の体験入部期間も終了するという頃にも変わらず、放課後の図書室に皆勤し、柾谷まさやや図書室仲間たちと駄弁ったり、本を読んだり、明日の朝読書用の本を物色していた。図書室仲間たちには、3年生や2年生の先輩も含まれていた。先輩達は皆気さくな人々で、灯枇あけびも先輩達には敬語を使う以外、何も気にせず親しくお喋りすることが出来た。

 その中に、3年のぎょう先輩という、やはり気さくでハンサムな先輩も居た。ぎょう先輩は面倒見も良く、灯枇あけびが実は水泳部に関心を抱いており、未だ見学に行けず悩んでいる事を聞くと、「俺が頼んで来てやるよ!」と図書室からひとっ走りして、水泳部の知人に宜しく言ってくれ、灯枇あけびの水泳部見学の手筈を整えると、笑顔で図書室からプールサイドまで連れて行ってくれ、灯枇あけびにエールを送りながら、また図書室へと去って行った。


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