はんぶんこ天使

いずみ

文字の大きさ
28 / 67
第三章 悪魔になんかならないで!

- 5 -

しおりを挟む
「ありがとう。美優ちゃんのおかげよ」
 萌ちゃんは私のその手をそっと握りながら言った。

「私の?」
「うん。宮崎さんの心に、光を差し込んでくれた。人をうらやんでうらやんで闇を作ってしまった宮崎さんに、まだ自分はだめじゃない、って思わせてくれたの。だから、まだ融合していなかった……ええと、宮崎さんをのっとっていなかった闇を落とすことができたのよ。ありがとう」
「最初から、あの翼の力を使っていればすぐ終わったのに」
 私が言うと、萌ちゃんは苦笑する。

「あれは、私の持っている力のすべてだから……最初の段階で使ってしまったら、その後何があっても私は無力になってしまう。だから、弱い力を使って浄化を……ええとなんていえばいいのかな。魂をきれいにすることを続けて、闇を薄くしていってからでないと使えないのよ」
「そっか……」
「でも、びっくりしちゃった。美優ちゃんがあんなにはっきり人に言うことって、あまりないから」
 言われて自分でも気づいた。必死だったから、普段のようにためらっている暇もなかった。
 私は、少し照れながら笑った。

「だって、萌ちゃんがけがしたみたいだったから必死で……そうだ、腕は? 痛くないの?」
「ええ、大丈夫。少しあざにはなるかもしれないけれど、さっき力を集めたから、その時に私の傷も一緒に治っちゃったわ。それより、美優ちゃんの肩も見せて?」
「あ」
 私もあれを受けたんだっけ。
 ムチで打たれた肩を触ると、ずきりと痛みが走った。

「やっぱり、いたああい」
「動かないで」
 そう言うと、萌ちゃんは私の肩に、そ、と手を置いた。と、そこから、さっきの翼と同じ暖かい光があふれる。すると、みるみるうちに私の肩の痛みが消えてしまった。

「力は使っちゃったんじゃないの?」
「ええ。だから完全な治療はできないけれど、痛みを消すくらいならなんとか」
「うん、もう全然痛くない。ありがとう、萌ちゃん」
「あとは、彼女ね」

 そう言うと萌ちゃんは私の手を離して、ばさりと翼を揺らしながらほんの一歩で宮崎さんのとなりに立った。

  倒れている宮崎さんの体に手をかざして、私にしたのと同じようにその体をほんのり光る手で撫でていく。宮崎さんは眠っているように動かない。
「けがはないみたいね。ようやく、宮崎さんの悪夢が醒めたのよ。本当に、よかったわ」
 私も近寄って見てみると、その顔はとても穏やかだった。

「宮崎さん、やっぱりきれいだね」
 私が六年の教室で彼女を見た時には、もう闇が彼女をあやつっていたんだろう。今の宮崎さんは、その時よりもとてもやわらかい笑顔を浮かべて眠っていた。
「ふふ、そうね」

 萌ちゃんが話す動きにつれて、その背中にある翼がゆらゆらと揺れていた。うっすらと光を帯びたそれは、透けてはいたけれど、本で見た天使の翼よりずっとずっときれいだった。
「ねえ、この翼って、触れる?」
 私が聞くと、萌ちゃんはちょっと目を見開いた。

「触りたいの?」
「うん」
「いいわよ。そっとね、くすぐったいから」
 言われた通り、そおっと手をのばす。
 その翼は、ほんのりと暖かくて、思ったよりすべすべしていた。

「きれいだね」
 思わずつぶやくと、萌ちゃんが嬉しそうに笑った。
「ありがとう。私は下っ端だからこんな翼だけれど、もっと上の天使様になると、真っ白でとても大きな翼を持っているのよ?」
「そうなんだ。萌ちゃんもいつかそうなるの?」
「ううん、そういう天使様は、最初から天使だった方だけよ。私は、このまま」
「え……そうなんだ。ごめん」
 悪いこと聞いちゃったのかな。しゅんとした私に、萌ちゃんは笑った。

「そうじゃないの。私たちは一定の修行を終えたらまた生まれ変わるから、翼は必要なくなるの。これは、それまでの仮の翼。天使である証拠ね。この世界から力を貸してもらえるのも、この翼のおかげなのよ」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

マジカル・ミッション

碧月あめり
児童書・童話
 小学五年生の涼葉は千年以上も昔からの魔女の血を引く時風家の子孫。現代に万能な魔法を使える者はいないが、その名残で、時風の家に生まれた子どもたちはみんな十一歳になると必ず不思議な能力がひとつ宿る。 どんな能力が宿るかは人によってさまざまで、十一歳になってみなければわからない。 十一歳になった涼葉に宿った能力は、誰かが《落としたもの》の記憶が映像になって見えるというもの。 その能力で、涼葉はメガネで顔を隠した陰キャな転校生・花宮翼が不審な行動をするのを見てしまう。怪しく思った涼葉は、動物に関する能力を持った兄の櫂斗、近くにいるケガ人を察知できるいとこの美空、ウソを見抜くことができるいとこの天とともに花宮を探ることになる。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

処理中です...