22 / 67
第二章 ちょっと怖いけどがんばってみる!
- 10 -
しおりを挟む
私がまじまじとみてしまったせいか、安永さんが軽く眉をひそめる。けれど特に何も言わずに、また慎君の方を向いてしまった。
「慎君、早くしないと、自習室の席なくなっちゃうわよ?」
そう言って安永さんは慎君の手を引っ張っていく。
「気にしすぎかな。……じゃ、美優さん、また明日」
「あ、うん、また明日。安永さん、バイバイ」
結局、慎君の話って、なんだったんだろう。
私が手を振ると、慎君は同じように手を振ってくれたけど、安永さんはこっちを見もしないで教室を出て行ってしまった。その様子に、少しだけ心がざわざわする。
なんか最近、安永さんににらまれることが多いなあ。一、二年生のころ、同じクラスだった時にはもっと気軽に話せたのに。
あ。もしかして、変わったってこういうこと?
「萌ちゃん」
私は、萌ちゃんを、そ、と呼ぶ。莉子ちゃんと美由紀さんは、何やら向こうで話していた。
「今の安永さん、きれいな黒髪だったでしょ?」
「そうね」
「あのね、彼女、前はもっと普通に私と話をしてたの。けど、最近、なんでかわかんないけどあんなふうにきつくなっちゃったのよ。もしかしてこれって……」
私が真剣な顔で言ったら、萌ちゃんは、なぜかにっこりと笑った。
「彼女は違うわ」
「え……そうなの?」
「ええ。近くで見てみたけど、彼女の持つ闇は通常の範囲内よ。ちょっと不機嫌に見えるけれど、おおかれ少なかれ、人は不満とか不安とか負の感情をもっているものだから」
「そうなんだ。じゃあ、何か私、安永さんに嫌われるようなことしちゃったのかなあ……」
心当たりはないけど、いつの間にか嫌なことでも言っちゃったのかな。
「美優ちゃんが心配することはないわ。彼女が不機嫌そうなのは、美優ちゃんとは関係ないことよ」
「え、なんで? 萌ちゃん、理由、わかるの?」
「多分、ね」
そう言って萌ちゃんは、くすくすと笑った。
「だから美優ちゃんは、何も心配することはないのよ」
よくわからないけど、萌ちゃんがいいって言うならいいのかな。うーん、でもちょっともやもやするう。
私たちは、自分のランドセルを持って教室を出た。階段をおりながら、莉子ちゃんが言い出す。
「ねえ、今日は三角公園に遊びに行かない? ちょうど今、いちょうがすごくきれいだって、美由紀ちゃんが言ってたの」
三角公園というのは、公園の形が三角だからそう呼んでいるだけで、本当の名前はちゃんとあるらしい。敷地面積が小さいから男子がサッカーをやるスペースもなく、でもブランコや滑り台なんかの遊具は少しあって、女子が遊ぶにはちょうどいい公園だ。
あの公園には大きないちょうの木があって、時期になれば葉っぱが黄色になってすごくきれいだ。
「莉子ちゃん、感想文終わったの?」
「えー? でも……まだ明日もあるし」
「明日は莉子ちゃん、ピアノだよね。今日やらないと、木曜に提出できないよ?」
莉子ちゃんは、がっくりと肩をおとしてため息をついた。
「……やっぱ、今日やっちゃわなきゃだめだよねえ……」
「がんばってね、莉子ちゃん。私もあと一枚書かなきゃだし」
昨日は萌ちゃんに天使の話を聞いて興奮しちゃって、すっかり感想文のことなんて忘れてしまったのだ。
それに今日は、帰ってから萌ちゃんと一緒に市立図書館に行く約束しちゃったし。
「しかたないなあ。美優と同じレベルなんてやだし、さっさとやっちゃうか」
「莉子ちゃん、ひどい……」
私たちが下駄箱まで来たところで、となりの六年生の下駄箱にも人がいるのに気が付いた。
「萌ちゃん、あの人。宮崎さんだよ」
やっぱり帰るとこらしく、数人の女子と一緒におしゃべりをしている宮崎さんが靴をはきかえていた。
「慎君、早くしないと、自習室の席なくなっちゃうわよ?」
そう言って安永さんは慎君の手を引っ張っていく。
「気にしすぎかな。……じゃ、美優さん、また明日」
「あ、うん、また明日。安永さん、バイバイ」
結局、慎君の話って、なんだったんだろう。
私が手を振ると、慎君は同じように手を振ってくれたけど、安永さんはこっちを見もしないで教室を出て行ってしまった。その様子に、少しだけ心がざわざわする。
なんか最近、安永さんににらまれることが多いなあ。一、二年生のころ、同じクラスだった時にはもっと気軽に話せたのに。
あ。もしかして、変わったってこういうこと?
「萌ちゃん」
私は、萌ちゃんを、そ、と呼ぶ。莉子ちゃんと美由紀さんは、何やら向こうで話していた。
「今の安永さん、きれいな黒髪だったでしょ?」
「そうね」
「あのね、彼女、前はもっと普通に私と話をしてたの。けど、最近、なんでかわかんないけどあんなふうにきつくなっちゃったのよ。もしかしてこれって……」
私が真剣な顔で言ったら、萌ちゃんは、なぜかにっこりと笑った。
「彼女は違うわ」
「え……そうなの?」
「ええ。近くで見てみたけど、彼女の持つ闇は通常の範囲内よ。ちょっと不機嫌に見えるけれど、おおかれ少なかれ、人は不満とか不安とか負の感情をもっているものだから」
「そうなんだ。じゃあ、何か私、安永さんに嫌われるようなことしちゃったのかなあ……」
心当たりはないけど、いつの間にか嫌なことでも言っちゃったのかな。
「美優ちゃんが心配することはないわ。彼女が不機嫌そうなのは、美優ちゃんとは関係ないことよ」
「え、なんで? 萌ちゃん、理由、わかるの?」
「多分、ね」
そう言って萌ちゃんは、くすくすと笑った。
「だから美優ちゃんは、何も心配することはないのよ」
よくわからないけど、萌ちゃんがいいって言うならいいのかな。うーん、でもちょっともやもやするう。
私たちは、自分のランドセルを持って教室を出た。階段をおりながら、莉子ちゃんが言い出す。
「ねえ、今日は三角公園に遊びに行かない? ちょうど今、いちょうがすごくきれいだって、美由紀ちゃんが言ってたの」
三角公園というのは、公園の形が三角だからそう呼んでいるだけで、本当の名前はちゃんとあるらしい。敷地面積が小さいから男子がサッカーをやるスペースもなく、でもブランコや滑り台なんかの遊具は少しあって、女子が遊ぶにはちょうどいい公園だ。
あの公園には大きないちょうの木があって、時期になれば葉っぱが黄色になってすごくきれいだ。
「莉子ちゃん、感想文終わったの?」
「えー? でも……まだ明日もあるし」
「明日は莉子ちゃん、ピアノだよね。今日やらないと、木曜に提出できないよ?」
莉子ちゃんは、がっくりと肩をおとしてため息をついた。
「……やっぱ、今日やっちゃわなきゃだめだよねえ……」
「がんばってね、莉子ちゃん。私もあと一枚書かなきゃだし」
昨日は萌ちゃんに天使の話を聞いて興奮しちゃって、すっかり感想文のことなんて忘れてしまったのだ。
それに今日は、帰ってから萌ちゃんと一緒に市立図書館に行く約束しちゃったし。
「しかたないなあ。美優と同じレベルなんてやだし、さっさとやっちゃうか」
「莉子ちゃん、ひどい……」
私たちが下駄箱まで来たところで、となりの六年生の下駄箱にも人がいるのに気が付いた。
「萌ちゃん、あの人。宮崎さんだよ」
やっぱり帰るとこらしく、数人の女子と一緒におしゃべりをしている宮崎さんが靴をはきかえていた。
0
あなたにおすすめの小説
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance!
(also @ なろう)
マジカル・ミッション
碧月あめり
児童書・童話
小学五年生の涼葉は千年以上も昔からの魔女の血を引く時風家の子孫。現代に万能な魔法を使える者はいないが、その名残で、時風の家に生まれた子どもたちはみんな十一歳になると必ず不思議な能力がひとつ宿る。 どんな能力が宿るかは人によってさまざまで、十一歳になってみなければわからない。 十一歳になった涼葉に宿った能力は、誰かが《落としたもの》の記憶が映像になって見えるというもの。 その能力で、涼葉はメガネで顔を隠した陰キャな転校生・花宮翼が不審な行動をするのを見てしまう。怪しく思った涼葉は、動物に関する能力を持った兄の櫂斗、近くにいるケガ人を察知できるいとこの美空、ウソを見抜くことができるいとこの天とともに花宮を探ることになる。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる