約束してね。恋をするって

いずみ

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第二章 それぞれの嫉妬

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「おう、お疲れさま!」

「お邪魔でしたー。それから、校内ではほどほどにしたほうがいいっすよ」

 にやにやしながら言って笑う彼らに、陽介はきょとんとしたまま手を振る。



「何をほどほどにって?」

 陽介はわけがわからず首をかしげるが、皐月はからかわれたことに気づいて、か、と頬をそめる。

「な、何かしらね」

 こういうことに、陽介は本当に鈍い。皐月は、それが助かるやらもどかしいやらで複雑な気分だ。

「俺たちも帰るか」

 陽介が壁の時計を見上げる



「……もうちょっと。活動計画、作っちゃおうよ」

 せっかく二人きりになれたのだ。皐月としてはもう少しこの時間を楽しみたい。陽介も、皐月の言葉にうなずいた。



「そうだな。申請にするなら早い方がいいし。えーと、夏の観測合宿の時と同じでいいかな。あれをもとにして……」

 ファイルを探す陽介の背を、皐月は笑顔で見つめていた。



  ☆



「陽介」

 陽介が帰宅すると、リビングから母親が呼んだ。静かなその声に、陽介は気づかれない程度のため息をつく。



「なに? 母さん」

「ちょっと来なさい」

 おとなしくリビングへ入ると、ソファーに姿勢正しく母親が座っていた。その前のテーブルには、朝陽介が置いていった成績表が置かれている。

「そこへ座りなさい」

 陽介は、母親の目の前に座る。



「この成績は、なんなの」

 きつい口調は、問いかけるものではなく叱責だ。

「ごめん、ちょっと勉強がおろそかになった」

「だからバイトなどやめろと言ったでしょう」

「もうやめたよ。次の期末は大丈夫」

「そうでないと困るわ」

 母親は、ため息をつきながら成績表を開いた。



「クラブを続けるなら、きちんと本業の勉強でも結果を出しなさい。退部してしまったら内申に響くからと思って続けるのを許してきたけれど、それで成績が下がるなんて本末転倒よ」

「クラブが理由じゃないよ」

「望遠鏡はクラブで使うのでしょ? だから、私が買ってあげるっていったのに」

「俺のものなんだから、自分で買いたかったんだよ。それで成績が落ちたのは悪かったと思っている。だから、これからは気をつけるよ」

「そうしてちょうだい。医学部はそんなに甘いものじゃないのよ? 今日は出かけるのはやめて勉強しなさい。修学旅行が終わったらすぐ期末でしょう?」

「げ。……はーい」

 言って、陽介は立ち上がる。



「もうすぐお夕食よ」

「うん。着替えてくる」

 階段をのぼっていくと、ちょうど降りてくる姉の香織と鉢合わせた。
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