約束してね。恋をするって

いずみ

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第二章 それぞれの嫉妬

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「だからダメだって言ってるだろ。夜遅いんだから、女子が出歩く時間じゃない」

「陽介と一緒なら大丈夫だよ」

「たとえ俺が一緒でも、危ないことに変わりはない。だめったらだめ」



 言いながら、陽介の頭の中には白いワンピース姿が浮かぶ。

「俺がいない時にも一人で来ているんだろうか」

「ん? 何?」

 声に出ていたらしく、皐月が聞き返してきた。

「いや、なんでも」

 ぶう、とむくれた皐月はその顔のまま続けた。



「そういえば陽介、天文部で修学旅行の夜に観測会やるって話はどうなったの? 流星群があるんでしょ?」

 来月、陽介たち2年生は修学旅行を予定している。先日天文部で話をしている時に、活動計画としてそんな話をしたことを陽介は思い出した。



「あれな。どうしようか」

「せっかく泊りがけなんだから多少夜遅くなってもいいんだもん。ここはやはりやるべきでしょう」

「やりたいんだけど、うちの学年、二人だけじゃん」

「人数は関係ないでしょ。部としての活動なんだから」

「場所はどうする? 泊まるの京都の駅前だろ? ホテルからじゃ星なんか見えないだろう」

「嵐山の方まで行ってみたら?」



 夜に出歩くことを陽介に反対されている皐月にとっては、めったにない機会ではある。もちろん、一緒に星空を見上げるのが一番の目的ではあるが、それ以外にも夜なりの夜景スポットなど陽介と行動できるならきっとなんでも思い出になると皐月は期待する。



「嵐山か」

 行ったことはないが、山の方なら場所によっては観測可能かもしれない。ちょうどしし座流星群が見ごろになる時期だから、修学旅行前後で自分でも観測自体はやるつもりだった。

 ただ、夏にやった観測会では、流星群という言葉に踊らされて部員たちをがっかりさせてしまった経験がある。陽介は慎重に聞いた。



「流星群って言っても、期待するほど星は流れないぞ?」

「うん、それは夏にやったからわかってる。夏の観測会が楽しかったから、またやってみたいのよ。ね、だめもとで課外活動として申請してみれば? 私たちがやってみて成果がでれば、来年以降も天文部の活動として申請しやすいし」



 身を乗り出して皐月が力説するのを聞けば、流星群に興味を持ってくれたことに陽介も嬉しくなる。

「皐月がそんなに楽しみにしてくれてるなら、ぜひともやらなきゃな」

 にこにことした笑顔を間近で見て、皐月は、は、と我に返る。

(ちょっと、強引だったかしら)



「そ、そうよ。立派な天文部員でしょ?」

「おう。一緒に星見ような」

 陽介の言葉に深い意味がないことは重々わかっているが、それでもこりずに胸がはずんでしまう。そうやって無意識のうちに陽介は、度々女生徒に誤解を与えてきた。

 皐月は、陽介に気づかれないように小さくため息をつく。

(そういうこと、私だけに言ってくれればいいのに)



「まずは活動計画作って、先生に申請してみよう。許可がおりるといいんだけど。あ、佐々木先生がいないから、誰か先生に同行してもらわなきゃいけないな」

 顧問の佐々木は3年生の担任だ。陽介たちの修学旅行には同行していない。



「そうねえ。うちの担任は学年主任だから忙しそうだし、各クラス担任以外で修学旅行行く先生って誰がいたかしら」

「先輩、俺たち帰りまーす」

 顔をあげると、先ほどの二人が菓子を食べ尽くして帰り支度を始めている。
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