14 / 30
- 14 -
しおりを挟む
「役にたててよかった。あの男、いつもああなの?」
「何度かお食事に誘われてはいたんですけど、いつも断っていました。同じ職場なので、あまり露骨に断ることも悪いと思ってなんとなくうやむやにしていたんですけど……」
ぎゅ、と自分の手を握りしめる。
こんなことになるなら、もっときちんと拒絶しておくべきだった。まさかこんな……こんな怖い目にあうなんて。
「ごめんね」
「え?」
急に相良さんが申し訳なさそうに謝った。
「名前、呼び捨てにしちゃったし勝手に触っちゃったし」
「ああ……いえ、全然かまわないです。こちらこそ、急に変な事お願いしてすみませんでした」
とっさのことだったのに、本当の彼氏みたいに守ってくれたのが嬉しかった。すがりついた手を、振りほどかれなくてよかった。
やっぱり相良さん、いい人だなあ。
「俺は全然。小学校の先生だったの?」
送るよ、と言って、相良さんはゆっくりと歩き出す。
「私ですか?」
「さっき、小学校がどうの言ってたから」
「はい。私、小学校で図書館司書をしているんです。さっきの方は小野先生といって、同じ小学校の2年生の担任です」
「そっか。あんまりしつこいようなら、校長なり誰なりに相談した方がいいんじゃない?」
「これで諦めてくれるといいんですけど……」
幸いというか、私に恋人がいると思ってくれたならそれでいい。もう、私に構わないでほしい。
「大丈夫?」
アパートの前で心配そうに聞いてくれた相良さんに、なんとか笑いを作ってみる。
「はい。小野先生だって、人目のある学校ではちゃんとしてくれますので、きっと大丈夫です」
そう言いながら、私の視線は今来た道を確認していた。
ここまでは、こないよね。ついてきていたり……しないよね。
「何度かお食事に誘われてはいたんですけど、いつも断っていました。同じ職場なので、あまり露骨に断ることも悪いと思ってなんとなくうやむやにしていたんですけど……」
ぎゅ、と自分の手を握りしめる。
こんなことになるなら、もっときちんと拒絶しておくべきだった。まさかこんな……こんな怖い目にあうなんて。
「ごめんね」
「え?」
急に相良さんが申し訳なさそうに謝った。
「名前、呼び捨てにしちゃったし勝手に触っちゃったし」
「ああ……いえ、全然かまわないです。こちらこそ、急に変な事お願いしてすみませんでした」
とっさのことだったのに、本当の彼氏みたいに守ってくれたのが嬉しかった。すがりついた手を、振りほどかれなくてよかった。
やっぱり相良さん、いい人だなあ。
「俺は全然。小学校の先生だったの?」
送るよ、と言って、相良さんはゆっくりと歩き出す。
「私ですか?」
「さっき、小学校がどうの言ってたから」
「はい。私、小学校で図書館司書をしているんです。さっきの方は小野先生といって、同じ小学校の2年生の担任です」
「そっか。あんまりしつこいようなら、校長なり誰なりに相談した方がいいんじゃない?」
「これで諦めてくれるといいんですけど……」
幸いというか、私に恋人がいると思ってくれたならそれでいい。もう、私に構わないでほしい。
「大丈夫?」
アパートの前で心配そうに聞いてくれた相良さんに、なんとか笑いを作ってみる。
「はい。小野先生だって、人目のある学校ではちゃんとしてくれますので、きっと大丈夫です」
そう言いながら、私の視線は今来た道を確認していた。
ここまでは、こないよね。ついてきていたり……しないよね。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
18歳(♂)の美人局
靣音:Monet
恋愛
18歳の伊藤佑(いとう ゆう)は、中性的な顔立ちのせいで、女性に間違われる事が度々あった。
そんな佑は高校を卒業すると、すぐに一人暮らしを始める。
しかし、携帯電話は契約しておらず、銀行口座も持っていない。おまけに仕事を探すのもこれからだ。
そんなタイミングで、ある女性に声を掛けられた。「お金欲しくない?」と。
佑は誘われるがまま、翌日にもその女性に会う。そこで佑は、想像もしなかった依頼をされる事になる。彼女は「佑くんだから出来る事」だと言う。
その依頼内容とは……?
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる