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「俺も好きなんだ、ラグバ」
「え?」
「男性ファンも結構多いんだぜ? ラグバって」

 知ってる。男性5人組のアイドルとは言うけれど、意外にコンサートで見るのは女性ばかりではない。小学生くらいやシルバーヘアの人もいて、老若男女に好かれているのがわかる。

「もしかして、あなたも会員なの?」
 だからラグバの会員証だってすぐわかったのかな。
「いや? 歌は聞くけどね」
「そうなんだ」
「はい、お待ち!」
 そこで、頼んだラーメンが出てきた。

 ラグバの話は続けたかったけど、とりあえず私は割り箸を手に取って、思い出して眼鏡をはずした。
 麺類食べるとくもっちゃうんだよね。どうせ伊達だから、無くても困らない。

「ん! 美味しい!」
 驚いた。味には期待してなかったけど、すごくおいしい!
 麺が細麺なのも好みだし、スープのとんこつはこってりしているのにくどくない。トッピングはきくらげとチャーシューとネギだけのシンプルなラーメンだった。

「だろ? 俺好きでさ、ここのラーメン。よく来るんだ。もともと今夜だってここで食べるつもりだったんだけど、一緒に来るはずだった奴にドタキャンされた。あいつ、自分で誘っておいて残業だと? ぜってー許さねえ」
 半分独り言のようにぶつぶつ言いながら、男は食べる気配がない。

「だったら一人で来ればよかったのに」
「言ったろ。一人で食べるの嫌なんだよ」
「そうみたいね。それより食べれば? のびるよ?」
 私がすすめると、男はサングラスを外してポケットに放り込んでから割り箸を手に取った。私もラーメンを食べながら見ていると、やけにゆっくりと食べ始める。そこで、私ははたと気づいた。

「……もしかして、猫舌なの?」
「いいだろ、別に」
 あら。そうなんだ。
 しばらくは二人で食べることに専念する。ある程度冷めてしまえば、男が食べるのは早かった。餃子まで食べても私より早く食べ終わる。

「うまそうに食うな、お前」
 今度は私の食べるのを見てた男が感心したように言った。
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