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【2】ちーとにゃんことカミを巡る奇しき不可思議大冒険!

5にゃー

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 スカーレットさんはこれから正式な使者を選抜するらしい。その人も私達と共にクースゥーへ連れて行って欲しいとの事。
 「少し時間を貰うわね。そちらも色々準備もあるでしょうから」と私達は支度金を貰った。お金はこの国独自の通貨で人間の国のお金とは違った。有難く頂戴する。

 「俺達の誰も獣人国家には行った事が無い。先ずは情報収集だな」

 確かにそうだ。
 ティリオンがそう言うと、全員一致で賛成になった。

 「では私は図書室へ向かいます。獣人国家について書かれた本を読んできます」

 「サミュエル、私も一緒に行きます」

 サミュエルとマリーシャがそう言えば、ライオットが頼んだと頷いた。

 「じゃあ残りは旅の準備の買い出しとこの国の王都に居る獣人達に聞き込み。
 運が良ければ櫛を売りつけた記憶に残らない謎の商人を見つけられるかも知れない」

 「決まりね」

 スィルがパチリと手を叩く。このメンバーで王都市街地へと繰り出す事になった。

 「ティリオンとライオット、私とニャンコで組むのが良いわ。買い物は嵩張るでしょうから、転移魔法か空間魔法が必要になるもの」

 「それで構わないか、ティリオン」

 「……良いだろう。それで、件の商人が見つかった場合だが――ニャンコ。相手が記憶操作をしてきた場合に備えて、俺達に光と闇の加護を頼めるか?」

 「お安い御用にゃ!」

 私が光と闇の加護バリアを皆に張ると、めいめい買い物をして待ち合わせる、という事で解散になった。


***


 「にゃんにゃん♪ にゃにゃにゃにゃにゃん♪」

 私はスィルの手をぶんぶんと振り回しながら調子はずれの歌を歌っていた。
 スィルはクスクスと笑っている。

 「ご機嫌ね、ニャンコ」

 「にゃっ、こうしてブラブラするのが楽しいのにゃ!」

 現在、スィルと共に中央市場を歩いているのだが、非常に活気があった。
 あちこちで売り子の声が上がり、ガヤガヤしている。
 ちなみに私達の買い出しの担当は食料である。買った先から、ぽいぽいと空間魔法で収納収納。

 「便利な力よね、それ。旅先でも料理が出来るし。ただ難点は売っているものがこの国の料理の材料ばかりで、私達は調理法を知らないって事」

 そう言えばイシュラエア王国では西洋寄りの料理だった。それに引き換えこちらは中東っぽい文化のようで、香辛料が豊富に売られている。

 「にゃっ、だったらニャンコが料理してあげるにゃー!」

 「えっ、ニャンコが……?」

 本当に料理出来るの? と言いたげに怯むスィル。
 まあ気持ちは分からんでもない。私だってタレミミ達や三歳児が料理を作ると言われたら一抹どころではない不安を抱くだろうから。
 しかし私は普通のケット・シーではない。元人間の、スーパーケット・シーなのである!

 「大丈夫にゃ! ニャンコは料理上手なのにゃ! 期待していて良いにゃ! 信じられないなら一度試してみるにゃ!」

 ピッと手を挙げて自信たっぷりに宣言すると、スィルはますます不安そうな顔になった。

 「それにしても、凄い活気ね。良心的な食料品店を一つ一つ探して回るのもキリが無いわ……というか、さっきから風の精霊に頼んで良さそうな店を探しているんだけどなかなか見つからないわね」

 視線だけを動かして周囲を油断なく観察するスィル。
 あからさまにキョロキョロすると、おのぼりさんと思われて良からぬ輩が近づいて来るのはどこの国でもお約束なんだそうだ。

 "全ての会話を聞いて判断するのは骨が折れるわー。店が沢山あり過ぎるのよー。ニャンコどうにかならないかしらー?"

 そう言ったのは風の精霊王シルフィード。成る程。数があまりに多すぎて判別しにくいって事か。
 私はしばし考え、魔術言語日本語を口にした。

 「『ボッタクリしない食料品店を、スィルと私だけに見えるように赤矢印で示せ』にゃ――赤い矢印のあるお店が良心的にゃ」

 「助かるわ、ニャンコ」

 魔法を使ったは良いが、しかしそういう店は極端に少なかった。
 私とスィルは結構歩いた末、市場の端の方にある食料品店の一つにやっと矢印を認め、そこで買い物をしたのだった。

 色々あるんだろうな、ショバ代とか。
 市場の端にあるお店程新参で、なかなか売れないから価格で勝負するしかないという事か。しかし新参であってもボッタクリは横行していると。
 定価という概念が無い事の弊害に思いを馳せながら買った物を全て亜空間に放り込んだ後、少し疲れたのでそこらへんにあった木箱に座って休む事にした。

 「少し時間が余ったわね。ニャンコ、屋台で何か食べてみる?」

 「食べるにゃ!」

 スィルは「ちょっと待っててね」と言って近くの屋台へ向かった。
 私は手持無沙汰になり、ふと櫛を売っている商人を探してみようと思い立つ。
 風の精霊を呼び、王都中に拡散させてそれらしき存在を探って貰うように頼んだ。
 数秒もせぬ内に、シルフィードが目の前にホバリングする。

 "……ニャンコー、あのねー、言いにくいんだけど―"

 「にゃ?」

 "見つけちゃったわー、それらしき商人ー"

 「にゃっ!?」

 私は仰天する勢いのまま、後ろへひっくり返った。
 いきなり犯人発見である。
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