95 / 105
【2】ちーとにゃんことカミを巡る奇しき不可思議大冒険!
2にゃー
しおりを挟む
「スカーレットしゃん、大丈夫かにゃー!?」
私はノームの転移術である泥から飛び出すと、チリチリ、と首の鈴を鳴らしながら一目散にスカーレットさんに駆け寄った。
こないだ魔王国の経済状況良くないって相談受けてたから、人間との交易をお勧めしておいたんだけど、その事で詰め寄られていると思ったからだ。
直ぐに廊下を走って来る数人の足音。
「スカーレットさん、助太刀は必要か!?」
「魔族至上主義者の反乱ってところなのかしら」
「ライオット、他に仲間は居ない様です。しかし油断しないでください」
「私は魔族と人族は分かり合えると信じています、こんな馬鹿な事はおやめなさい!」
「……ん?」
剣士のライオット=コルト、エルフのスィル=イシュランドール、魔術師サミュエル=シード、光の神官マリーシャ=メドセナ、ダークエルフのティリオン=ギルミアース。
私の仲間が少し遅れて駆けつけて来たのだ。
「待て、落ち着けお前ら!」
ティリオンの冷静なツッコミ。
私を含む一同、大臣達を見詰めた。
奇妙な静寂の後。
「「「「ぎゃああああああ――っっっ」」」」
大臣達は阿鼻叫喚と言った態で頭を腕で庇った。
まるでこの世の終わりが来たかのような発狂ぶりである。
しかし面積的に庇いきれていない。
「にゃー…ハゲてるのかにゃー?」
腕の隙間から見えているのは、円形ハゲ、バーコードハゲ、ツルッパゲ……色んなハゲの博覧会。
私の言葉に大臣達はシクシクとすすり泣きを始めた。
"なんだよ、何も泣く事ないだろー?"
"ごめんなさい、ちょっとやりすぎたわー? そうだっ! ハゲをハゲまそ、ハーゲッ! ハーゲッ!"
シルフィードとサラマンダーがタッグを組み、精霊達とマイムマイムを踊りだす。
「ぐふっ…ゴホッ……ゲホン、ゲホン!」
この中で私以外に唯一精霊の声が聞こえるスカーレットさんは、必死に笑いを誤魔化していた。
***
「髪が抜ける奇病……?」
「そうです、この私も、ここにいる皆全員髪の毛が抜けて行っておるのでございます!うう……」
大臣達の啜り泣きとスカーレットさんの我慢が落ち着いた後で彼らの訴えを改めて聞く。
どうも髪の毛が抜ける変な病気らしい。
何だろうな、でも髪の毛が抜ける病気って。
「髪の毛が抜けるってヤバくないか?」
「ちょっと、ライオット!」
ライオットとスィルの会話に大臣達の顔色が悪くなる。
「魔族と人族の病気は違うのでは?」
「髪が抜ける以外で何か他に症状はあるのでしょうか?」
サミュエルとマリーシャが問いかけると、貴族の一人が思案して、「……酷く疲れやすくなって魔力が減退した事、でしょうか」と答えた。
疲れやすくなって、ってストレスだろうか。
私が知っているものは、
「もちかして、ストレシュからくるダツモウショウとかかにゃー?」
円形脱毛症。それなら命には関わらないだろうけど。
私が言うと、スカーレットさんが憐みと申し訳無さが綯交(ないま)ぜになった表情を浮かべた。
「……申し訳なかったわ、あなた達がそんなに仕事にストレスを感じているとは知らなかったものだから。代替わりして隠居する?」
言って、目を伏せるスカーレットさんに魔王国財務大臣は「違います!」と泣き叫ぶ。
「私共だけではございません、市井からも髪の毛が抜けている奇病が流行っているとの報告が上がっております。しかも、ここ数か月で、です!!!」
「流行って、感染るの、それ!?」
近衛のお姉さんの一人が言うと、皆がずざっと一斉に引いた。
スカーレットさんも顔を引き攣らせたが、咳払いをして気を取り直す。
「……それは確かにおかしいわね。調査はしているの? 原因の究明は? 心当たりはあるのかしら?」
「それが……恐らくこれだと思うのですが……」
大臣は懐から布で覆われた小さなものを取り出した。
布を広げて見せると、そこには。
「櫛……?」
「はい……私も、この者らも皆、これと同じような櫛を数か月前に手に入れているのでございます」
「良く見せてくれるかしら?」
「はい、では失礼を……」
アントム財務大臣は言って、それを持ってスカーレットさんに近づこうとし――
「おっ、お待ちください、陛下! この櫛が原因であるとはまだ分かりません。感染するのであれば危険です!」
近衛のお姉さんに止められていた。
「ひ、酷い……!」
涙目になる大臣その他。エンガチョ扱いである。
近衛のお姉さん達は誰が櫛を受け取って陛下に近づくかで凄い形相でジャンケンを始め。
結局、大臣達がおんおん声を上げて泣き始めて可哀想になったので、チートである私が「しょうがないにゃー」と手を挙げることにした。
私はノームの転移術である泥から飛び出すと、チリチリ、と首の鈴を鳴らしながら一目散にスカーレットさんに駆け寄った。
こないだ魔王国の経済状況良くないって相談受けてたから、人間との交易をお勧めしておいたんだけど、その事で詰め寄られていると思ったからだ。
直ぐに廊下を走って来る数人の足音。
「スカーレットさん、助太刀は必要か!?」
「魔族至上主義者の反乱ってところなのかしら」
「ライオット、他に仲間は居ない様です。しかし油断しないでください」
「私は魔族と人族は分かり合えると信じています、こんな馬鹿な事はおやめなさい!」
「……ん?」
剣士のライオット=コルト、エルフのスィル=イシュランドール、魔術師サミュエル=シード、光の神官マリーシャ=メドセナ、ダークエルフのティリオン=ギルミアース。
私の仲間が少し遅れて駆けつけて来たのだ。
「待て、落ち着けお前ら!」
ティリオンの冷静なツッコミ。
私を含む一同、大臣達を見詰めた。
奇妙な静寂の後。
「「「「ぎゃああああああ――っっっ」」」」
大臣達は阿鼻叫喚と言った態で頭を腕で庇った。
まるでこの世の終わりが来たかのような発狂ぶりである。
しかし面積的に庇いきれていない。
「にゃー…ハゲてるのかにゃー?」
腕の隙間から見えているのは、円形ハゲ、バーコードハゲ、ツルッパゲ……色んなハゲの博覧会。
私の言葉に大臣達はシクシクとすすり泣きを始めた。
"なんだよ、何も泣く事ないだろー?"
"ごめんなさい、ちょっとやりすぎたわー? そうだっ! ハゲをハゲまそ、ハーゲッ! ハーゲッ!"
シルフィードとサラマンダーがタッグを組み、精霊達とマイムマイムを踊りだす。
「ぐふっ…ゴホッ……ゲホン、ゲホン!」
この中で私以外に唯一精霊の声が聞こえるスカーレットさんは、必死に笑いを誤魔化していた。
***
「髪が抜ける奇病……?」
「そうです、この私も、ここにいる皆全員髪の毛が抜けて行っておるのでございます!うう……」
大臣達の啜り泣きとスカーレットさんの我慢が落ち着いた後で彼らの訴えを改めて聞く。
どうも髪の毛が抜ける変な病気らしい。
何だろうな、でも髪の毛が抜ける病気って。
「髪の毛が抜けるってヤバくないか?」
「ちょっと、ライオット!」
ライオットとスィルの会話に大臣達の顔色が悪くなる。
「魔族と人族の病気は違うのでは?」
「髪が抜ける以外で何か他に症状はあるのでしょうか?」
サミュエルとマリーシャが問いかけると、貴族の一人が思案して、「……酷く疲れやすくなって魔力が減退した事、でしょうか」と答えた。
疲れやすくなって、ってストレスだろうか。
私が知っているものは、
「もちかして、ストレシュからくるダツモウショウとかかにゃー?」
円形脱毛症。それなら命には関わらないだろうけど。
私が言うと、スカーレットさんが憐みと申し訳無さが綯交(ないま)ぜになった表情を浮かべた。
「……申し訳なかったわ、あなた達がそんなに仕事にストレスを感じているとは知らなかったものだから。代替わりして隠居する?」
言って、目を伏せるスカーレットさんに魔王国財務大臣は「違います!」と泣き叫ぶ。
「私共だけではございません、市井からも髪の毛が抜けている奇病が流行っているとの報告が上がっております。しかも、ここ数か月で、です!!!」
「流行って、感染るの、それ!?」
近衛のお姉さんの一人が言うと、皆がずざっと一斉に引いた。
スカーレットさんも顔を引き攣らせたが、咳払いをして気を取り直す。
「……それは確かにおかしいわね。調査はしているの? 原因の究明は? 心当たりはあるのかしら?」
「それが……恐らくこれだと思うのですが……」
大臣は懐から布で覆われた小さなものを取り出した。
布を広げて見せると、そこには。
「櫛……?」
「はい……私も、この者らも皆、これと同じような櫛を数か月前に手に入れているのでございます」
「良く見せてくれるかしら?」
「はい、では失礼を……」
アントム財務大臣は言って、それを持ってスカーレットさんに近づこうとし――
「おっ、お待ちください、陛下! この櫛が原因であるとはまだ分かりません。感染するのであれば危険です!」
近衛のお姉さんに止められていた。
「ひ、酷い……!」
涙目になる大臣その他。エンガチョ扱いである。
近衛のお姉さん達は誰が櫛を受け取って陛下に近づくかで凄い形相でジャンケンを始め。
結局、大臣達がおんおん声を上げて泣き始めて可哀想になったので、チートである私が「しょうがないにゃー」と手を挙げることにした。
1
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?
ノデミチ
ファンタジー
ゲームをしていたと思われる者達が数十名変死を遂げ、そのゲームは運営諸共消滅する。
彼等は、そのゲーム世界に召喚或いは転生していた。
ゲームの中でもトップ級の実力を持つ騎団『地上の星』。
勇者マーズ。
盾騎士プルート。
魔法戦士ジュピター。
義賊マーキュリー。
大賢者サターン。
精霊使いガイア。
聖女ビーナス。
何者かに勇者召喚の形で、パーティ毎ベルン王国に転送される筈だった。
だが、何か違和感を感じたジュピターは召喚を拒み転生を選択する。
ゲーム内で最弱となっていたテイマー。
魔物が戦う事もあって自身のステータスは転職後軒並みダウンする不遇の存在。
ジュピターはロディと名乗り敢えてテイマーに転職して転生する。最弱職となったロディが連れていたのは、愛玩用と言っても良い魔物=ピクシー。
冒険者ギルドでも嘲笑され、パーティも組めないロディ。その彼がクエストをこなしていく事をギルドは訝しむ。
ロディには秘密がある。
転生者というだけでは無く…。
テイマー物第2弾。
ファンタジーカップ参加の為の新作。
応募に間に合いませんでしたが…。
今迄の作品と似た様な名前や同じ名前がありますが、根本的に違う世界の物語です。
カクヨムでも公開しました。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~
はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま)
神々がくじ引きで決めた転生者。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」
って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう…
まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる