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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
60にゃん
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光の最高司祭ヴォードは傍付きの神官に、今は夜遅いので明日ご説明に参りますと言づけて使者に応対するように命じた。
ひとまずこの日は休んで明日を待つこととなる。
職員達がケット・シー達を部屋に戻らせるように誘導している。
私も、と続こうとした時、マリーシャに止められた。
「――ニャンコ、今晩は私達と一緒に寝ましょう」
魔王スカーレットが私の身柄を要求したので、護衛も兼ねて私だけ他のケット・シーとは別行動になったと言われた。
タレミミやハチクロ、ミミが立ち止まって心配そうに見つめてくる。
「わたちはダイジョウブにゃ。ありがとうにゃ!」
頷いて安心させると、私はマリーシャさんに手を引かれる。ライオット、サミュエル、スィル、ティリオンがそれに続く。
何であんたも来るのという視線を向けるも、ダークエルフは澄まし顔である。
「クリステル様に御身の護衛を命じられたのです」
「ニャンコ様は闇の御子ですから」
クリステルがそう言って神官に案内されて去っていく。
でもねー、今更さぁ。
ちらっ。
「インギンなティリオンなんてガラじゃないにゃ。キモチワルイにゃ!」
「うるさい――俺だとてお前に敬語を使いたくなどない!」
ティリオンは苦虫を噛みしめたような表情になって小声で反論した。
***
次の日。
朝早く起こされ、私は冒険者達、教皇、最高司祭、ティリオンにエアルベスさんらとともに王宮へ上がる。
午前中待たされ、お昼近くになってやっと王の前にいきなり通される。
イシュラエア王レグザック=ギル=ヴィンザーク=イシュラエアは厳ついおじさんだった。冒険者達とティリオン、エアルベスさんは膝をついて名乗りを上げる。
ただ、流石に最高司祭と教皇は軽く礼をしただけにとどまった。
王権と法権は同等なのだろう。
私は礼儀を知らないのでとりあえず冒険者達と同じようにしようとすると、最高司祭と教皇に止められた。
神々の祝福を受けた御子だから、という事らしい。
「イシュラエア王、こちらは光の神イーラと闇の神アンシェラの祝福を受けし御子、ニャンコ=コネコ様です」
「何と、無礼な…」
ヴォードの紹介に声を上げたのはギュンター公爵だった。
昨日ダンスしまくったせいか、疲労感たっぷりに車椅子に座っている。
「ケット・シーごときが王に頭を下げぬなど……!」
「――御身はケット・シーなれど、神の祝福を受けし御子なれば教皇や最高司祭よりも上の地位にあるべき存在。それに、鈴をご覧頂ければお分かりになるかと思いますが、地水火風の四大精霊よりそれぞれの精霊石も授かっておいでです。いわば、世界に愛されし存在。一国の王の位とて、その前には意味をなしません」
クリステルが迫力を以て鋭い視線を向けた。
公爵はそれに怯む。
「よい、道理である――して、昨晩ドラゴンが大神殿より飛び立ちしは如何なる理由か」
イシュラエア王レグザックの問いに、光の最高司祭がかくかくしかじかで、と説明する。
「私はドラゴンを世界樹の畑の地下洞窟に捕えているなど聞いてはおりませんでしたぞ。エアルベスに聞けば、それは王命だったとか。これは如何なる事なのでしょう」
ご説明を、と迫る最高司祭。
レグザック王はぬぅ…と唸った。
その反応から推測するに、どうもドラゴンの件は神殿側には内密にしていたようだ。
「余がギュンター公爵より聞いておるのは、そこの世界樹の畑の管理者エアルベスの負担を軽くする良い策が見つかったとの事だ。余はそれに許可を出しはしたが、任せきりにしており詳しくは知らぬ。ギュンター公爵、申し開きをせよ」
王は公爵に全ておっかぶせて丸投げした。
ギュンター公爵はたちまち慌てだす。
「お、王よ! 私はそこなエアルベスに騙されたのです! 世界樹の畑を拡大出来る、ドラゴンを捕え水の精霊に管理させておけば安全だと申して!」
エアルベスさんを一方的に糾弾する公爵。
彼女はあっけにとられたかと思うと顔を怒りに真っ赤に染めた。
「そ、そんな…そもそもあれはギュンター公爵が王命だと命令書をお持ちになって私に命じられたことではありませんか!
やはりライオットさん達の言う通りでした! 魔王スカーレットは、人間に化けておりましたが、その時ギュンター公爵に仕えていたと言いました! 昨日だって、ギュンター公爵は闇の過激派の神官と男同士仲良くダンスをして――悪魔に魂を売り渡した公爵に、私こそ騙されたのですわ!」
叫ぶようにぶちまけたエアルベスさん。
レグザック王はほう、と片眉を上げる。
あ、たぶん気になってるのは男同士のダンスだろう。
「――ギュンター公爵、それは真実か?」
「ち、違います! そもそもドラゴンを攫ったのはお前であろうエアルベス、この魔女め! ――全ての元凶はそやつで御座います! 騎士達よ、王国を破滅に導こうとするこの毒婦を捕えよ!」
公爵の言葉に王宮の騎士達が動きを見せる。
エアルベスさんはわなわなと震えだした。
身分差――圧倒的に不利なのは彼女だ。
「――ウソをつくんじゃにゃいにゃっ!!!」
私はエアルベスさんを庇うように立つと、公爵を指さし叫んだ。
ひとまずこの日は休んで明日を待つこととなる。
職員達がケット・シー達を部屋に戻らせるように誘導している。
私も、と続こうとした時、マリーシャに止められた。
「――ニャンコ、今晩は私達と一緒に寝ましょう」
魔王スカーレットが私の身柄を要求したので、護衛も兼ねて私だけ他のケット・シーとは別行動になったと言われた。
タレミミやハチクロ、ミミが立ち止まって心配そうに見つめてくる。
「わたちはダイジョウブにゃ。ありがとうにゃ!」
頷いて安心させると、私はマリーシャさんに手を引かれる。ライオット、サミュエル、スィル、ティリオンがそれに続く。
何であんたも来るのという視線を向けるも、ダークエルフは澄まし顔である。
「クリステル様に御身の護衛を命じられたのです」
「ニャンコ様は闇の御子ですから」
クリステルがそう言って神官に案内されて去っていく。
でもねー、今更さぁ。
ちらっ。
「インギンなティリオンなんてガラじゃないにゃ。キモチワルイにゃ!」
「うるさい――俺だとてお前に敬語を使いたくなどない!」
ティリオンは苦虫を噛みしめたような表情になって小声で反論した。
***
次の日。
朝早く起こされ、私は冒険者達、教皇、最高司祭、ティリオンにエアルベスさんらとともに王宮へ上がる。
午前中待たされ、お昼近くになってやっと王の前にいきなり通される。
イシュラエア王レグザック=ギル=ヴィンザーク=イシュラエアは厳ついおじさんだった。冒険者達とティリオン、エアルベスさんは膝をついて名乗りを上げる。
ただ、流石に最高司祭と教皇は軽く礼をしただけにとどまった。
王権と法権は同等なのだろう。
私は礼儀を知らないのでとりあえず冒険者達と同じようにしようとすると、最高司祭と教皇に止められた。
神々の祝福を受けた御子だから、という事らしい。
「イシュラエア王、こちらは光の神イーラと闇の神アンシェラの祝福を受けし御子、ニャンコ=コネコ様です」
「何と、無礼な…」
ヴォードの紹介に声を上げたのはギュンター公爵だった。
昨日ダンスしまくったせいか、疲労感たっぷりに車椅子に座っている。
「ケット・シーごときが王に頭を下げぬなど……!」
「――御身はケット・シーなれど、神の祝福を受けし御子なれば教皇や最高司祭よりも上の地位にあるべき存在。それに、鈴をご覧頂ければお分かりになるかと思いますが、地水火風の四大精霊よりそれぞれの精霊石も授かっておいでです。いわば、世界に愛されし存在。一国の王の位とて、その前には意味をなしません」
クリステルが迫力を以て鋭い視線を向けた。
公爵はそれに怯む。
「よい、道理である――して、昨晩ドラゴンが大神殿より飛び立ちしは如何なる理由か」
イシュラエア王レグザックの問いに、光の最高司祭がかくかくしかじかで、と説明する。
「私はドラゴンを世界樹の畑の地下洞窟に捕えているなど聞いてはおりませんでしたぞ。エアルベスに聞けば、それは王命だったとか。これは如何なる事なのでしょう」
ご説明を、と迫る最高司祭。
レグザック王はぬぅ…と唸った。
その反応から推測するに、どうもドラゴンの件は神殿側には内密にしていたようだ。
「余がギュンター公爵より聞いておるのは、そこの世界樹の畑の管理者エアルベスの負担を軽くする良い策が見つかったとの事だ。余はそれに許可を出しはしたが、任せきりにしており詳しくは知らぬ。ギュンター公爵、申し開きをせよ」
王は公爵に全ておっかぶせて丸投げした。
ギュンター公爵はたちまち慌てだす。
「お、王よ! 私はそこなエアルベスに騙されたのです! 世界樹の畑を拡大出来る、ドラゴンを捕え水の精霊に管理させておけば安全だと申して!」
エアルベスさんを一方的に糾弾する公爵。
彼女はあっけにとられたかと思うと顔を怒りに真っ赤に染めた。
「そ、そんな…そもそもあれはギュンター公爵が王命だと命令書をお持ちになって私に命じられたことではありませんか!
やはりライオットさん達の言う通りでした! 魔王スカーレットは、人間に化けておりましたが、その時ギュンター公爵に仕えていたと言いました! 昨日だって、ギュンター公爵は闇の過激派の神官と男同士仲良くダンスをして――悪魔に魂を売り渡した公爵に、私こそ騙されたのですわ!」
叫ぶようにぶちまけたエアルベスさん。
レグザック王はほう、と片眉を上げる。
あ、たぶん気になってるのは男同士のダンスだろう。
「――ギュンター公爵、それは真実か?」
「ち、違います! そもそもドラゴンを攫ったのはお前であろうエアルベス、この魔女め! ――全ての元凶はそやつで御座います! 騎士達よ、王国を破滅に導こうとするこの毒婦を捕えよ!」
公爵の言葉に王宮の騎士達が動きを見せる。
エアルベスさんはわなわなと震えだした。
身分差――圧倒的に不利なのは彼女だ。
「――ウソをつくんじゃにゃいにゃっ!!!」
私はエアルベスさんを庇うように立つと、公爵を指さし叫んだ。
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