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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
50にゃん
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仮初の主であるヒュペルトはもう必要ない。
ケット・シー保護区へ忍び込み、目的を果たすだけだ。
ドラゴンは王都のケット・シー保護区に居る――その情報をサラマンダーから知ったスカーレット達。
彼女らはヒュペルトを外出するように仕向けると、すぐさま宿を辞した。
そのまま街道を少し離れた場所で魔族としての本性に戻り、王都へ驚異的な身体能力と持久力でひた走る。
体力を大分消耗したが、夜になる頃には全員無事に辿り着いていた。
王都へ入って大神殿に近い宿を借り、少し休息する。
後は次の夜を待って侵入するだけである。
警戒すべきは水の精霊の使い手である人物――エアルベスという女性ぐらいだろうか。
人間の国とはもうおさらばも同然――午後になって最後の食事をしに宿の階下へ降りていくと、そこにはニャンコを連れていた冒険者たちが居た。
マリーシャとかいう女神官は不在だったが、エルフと剣士、魔法使いの三人がテーブルを囲んで何やら話し込んでいる。
スカーレットは何となく勘のようなものが働いて、魔族の能力を少し解放すると耳を澄ませた。
***
マリーシャが大神殿へ行っている間、スィルは闇の神殿へ風の精霊を飛ばして探っていた。
ライオットとサミュエルは神殿周辺の聞き込みをする。
熟練の冒険者である彼らが必要な情報を収集するのに然程時はかからなかった。
午後、彼らは宿の一階にある食堂で知りえた事を分析する。
「――風の精霊からの視覚情報で分かったんだけど、ギュンター公爵邸には闇の神官が出入りしているわ。それと、ドラゴンの骨らしきものを郊外の屋敷に運び込んでいる」
スィルは風の精霊との視覚共有で見た景色を思い出す。
ギュンター公爵邸の郊外の屋敷の地下に、整然と並べられた巨大なドラゴンの骨。
彼女は数度ドラゴンを見たことがあったが、骨の持ち主はそれよりも一回り大きなものだった。
スィルがそう言うと、やはりそうでしたかと魔術師が頷く。
「ギュンター公爵はドラゴンの骨を集めていたと聞きました。ギルドで公爵のお抱え商人から採掘の依頼が出ていたそうですが、その行先は公爵の下で間違いないですね」
「顔見知りが居たんで聞いたら、納品されたのは古代ドラゴンの骨だったそうだ。国境の岩山で見つかったんだと。ドラゴンの骨は薬にもなるらしいが、奴は全身の骨を集めていたから薬目的ではないな。大金を払ってまで骨を集める理由、それが何なのか……」
ライオットが考え込む。「出入りしてるっていう、過激派の闇の神官が気になるな」
「エルフの古老に聞いたことがあるわ。昔、闇の禁術で生贄を捧げて行う術があったって。その中には骨を用いて屍を蘇らせ操るものもあって、生贄の血肉がそのまま屍のそれとなって蘇ると」
「闇の神官ロドリゲスが集めていた孤児達……生贄の為と考えると辻褄は合いますね」
「もし、過激派の闇の神官達がその禁忌の術を知り得ていたら――奴らはそれを企んでいるという事か」
「という事は、あの街だけではなく他でも孤児達が攫われていたんでしょうね。むしろ、そう考える方が自然だわ」
「過激派の資金源などが気になっていたんだが、裏に公爵が居れば話は違ってくる。屍とはいえドラゴンを意のままに操れれば公爵は強大な兵器を手にする事になる。謀反でも起こそうとしているのか……?」
「そこなんですよね。動機が何なのか――謀反を起こして成功したとしても、他の貴族や諸侯が黙っていないでしょう。それに、そのような大それた事をするにはやり方が少し杜撰な気がしますし」
三人がうーん、と考え込んだ時。
「――皆様、何かお悩みですか」
降ってきた涼やかな声。
「あんたは、スカーレット……」
ライオットが驚いたように呟く。
つい先日、王都からかなり離れた街で会ったばかりの女性がそこに居た。
ケット・シー保護区へ忍び込み、目的を果たすだけだ。
ドラゴンは王都のケット・シー保護区に居る――その情報をサラマンダーから知ったスカーレット達。
彼女らはヒュペルトを外出するように仕向けると、すぐさま宿を辞した。
そのまま街道を少し離れた場所で魔族としての本性に戻り、王都へ驚異的な身体能力と持久力でひた走る。
体力を大分消耗したが、夜になる頃には全員無事に辿り着いていた。
王都へ入って大神殿に近い宿を借り、少し休息する。
後は次の夜を待って侵入するだけである。
警戒すべきは水の精霊の使い手である人物――エアルベスという女性ぐらいだろうか。
人間の国とはもうおさらばも同然――午後になって最後の食事をしに宿の階下へ降りていくと、そこにはニャンコを連れていた冒険者たちが居た。
マリーシャとかいう女神官は不在だったが、エルフと剣士、魔法使いの三人がテーブルを囲んで何やら話し込んでいる。
スカーレットは何となく勘のようなものが働いて、魔族の能力を少し解放すると耳を澄ませた。
***
マリーシャが大神殿へ行っている間、スィルは闇の神殿へ風の精霊を飛ばして探っていた。
ライオットとサミュエルは神殿周辺の聞き込みをする。
熟練の冒険者である彼らが必要な情報を収集するのに然程時はかからなかった。
午後、彼らは宿の一階にある食堂で知りえた事を分析する。
「――風の精霊からの視覚情報で分かったんだけど、ギュンター公爵邸には闇の神官が出入りしているわ。それと、ドラゴンの骨らしきものを郊外の屋敷に運び込んでいる」
スィルは風の精霊との視覚共有で見た景色を思い出す。
ギュンター公爵邸の郊外の屋敷の地下に、整然と並べられた巨大なドラゴンの骨。
彼女は数度ドラゴンを見たことがあったが、骨の持ち主はそれよりも一回り大きなものだった。
スィルがそう言うと、やはりそうでしたかと魔術師が頷く。
「ギュンター公爵はドラゴンの骨を集めていたと聞きました。ギルドで公爵のお抱え商人から採掘の依頼が出ていたそうですが、その行先は公爵の下で間違いないですね」
「顔見知りが居たんで聞いたら、納品されたのは古代ドラゴンの骨だったそうだ。国境の岩山で見つかったんだと。ドラゴンの骨は薬にもなるらしいが、奴は全身の骨を集めていたから薬目的ではないな。大金を払ってまで骨を集める理由、それが何なのか……」
ライオットが考え込む。「出入りしてるっていう、過激派の闇の神官が気になるな」
「エルフの古老に聞いたことがあるわ。昔、闇の禁術で生贄を捧げて行う術があったって。その中には骨を用いて屍を蘇らせ操るものもあって、生贄の血肉がそのまま屍のそれとなって蘇ると」
「闇の神官ロドリゲスが集めていた孤児達……生贄の為と考えると辻褄は合いますね」
「もし、過激派の闇の神官達がその禁忌の術を知り得ていたら――奴らはそれを企んでいるという事か」
「という事は、あの街だけではなく他でも孤児達が攫われていたんでしょうね。むしろ、そう考える方が自然だわ」
「過激派の資金源などが気になっていたんだが、裏に公爵が居れば話は違ってくる。屍とはいえドラゴンを意のままに操れれば公爵は強大な兵器を手にする事になる。謀反でも起こそうとしているのか……?」
「そこなんですよね。動機が何なのか――謀反を起こして成功したとしても、他の貴族や諸侯が黙っていないでしょう。それに、そのような大それた事をするにはやり方が少し杜撰な気がしますし」
三人がうーん、と考え込んだ時。
「――皆様、何かお悩みですか」
降ってきた涼やかな声。
「あんたは、スカーレット……」
ライオットが驚いたように呟く。
つい先日、王都からかなり離れた街で会ったばかりの女性がそこに居た。
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