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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!

48にゃん

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 「ニャンコ、おれたちはニャンコを巡って争うのにゃ。何でニャンコが参加するんだにゃ?」

 「ニャンコにゃん…どうしてにゃ?」

 私の突然の宣戦布告に二人は戸惑いを見せていた。

 「良くぞ言いました、ニャンコ――この勝負の行方、私エアルベスが見届けましょう!」

 いつの間にかエアルベスさんが来ていた。私は頷く。

 「勝負のルールは至って簡単シンプルです。世界樹の葉を摘み、この籠いっぱいに一番早く満たした者を勝ちとします」

 ケット・シー達は降ってわいた勝負にきっと集中して仕事が出来ないだろう。
 ならばいっそ午前後半部はお休みにして世界樹の葉摘み大会を臨時開催した方が良い――エアルベスさんはそう言った。
 流石ケット・シーの性格を把握している。

 「それでは、位置に着いてください」

 エアルベスさんの言葉に、四人のケット・シーが――ん?四人?
 何故か先程泣きながら走っていったミミが参加している。

 「わたくちはニャンコにだけは負けられにゃいのにゃっ! タレミミしゃま、ミミがかったらケッコンちてほちいにょにゃっ!」

 「分かったにゃ。ミミが勝てたらケッコンでも何でもしてやるにゃ!」

 けなげなミミにタレミミは余裕たっぷりに同意する。
 どうせ誰にも自分には勝てない、そう思っているのが分かった。
 世界樹の葉摘みにおいてはこれまでもずっと上位をキープし続けてきたのだろうから。

 「用意――」

 しかし、その慢心が命取りだよタレミミ。
 私は目の前の世界樹の葉をじっと見る。

 「――始め!」

 エアルベスさんの号令に、皆一斉に慌てて摘み始めた。

 私は目を閉じた――何かに似ている。
 そう、あの猫じゃらしの先端部分は、世界樹の葉の摘むべき形に酷似している。

 光と闇の神が夢に現れ遊んでくれたのは――私は唐突に悟った。
 神々は知ってか知らずか、私に全力を出させ、この場に必要な技能を夢学習させてくれていたのだ!

 一向に動かない私にギャラリーがザワザワとしている。

 "ニャンコ、早く摘まないとー!"

 "早くしないと負けてしまうですじゃ!"

 "おい、どうした?"

 "他の子はもう摘み始めていますのよ!?"

 精霊達も騒いでいる。
 しかし、私の心は風の無い泉のように凪いでいた。

 今こそ、チート能力を…にゃん斗聖拳を解放する時!

 私はカッと目を見開く。

 我は聖猫帝ニャウザー…いや、ニャンコなるぞ!
 この生温い乙女ゲーの世界を聖猫帝に相応しい世紀末に塗り替えてやるわ!

 スゥ…と両手を手刀の形にして構える。
 一瞬で見極め、摘採、籠へ投下――全力を出させてもらう!

 「あにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ! あにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ! ほあにゃー!!!」

 心なしか声が甲高くなるのは仕様である。
 私はただ只管芝刈り機のように高速で世界樹の葉をんでは投げんでは投げていく。

 「す、凄いにゃ…」

 「わたちの目がおかしくなったのかにゃ……ニャンコの手の動きが、全く見えないにゃ」

 私の籠には瞬く間に世界樹の葉がいっぱいになった。

 「そこまでです――勝負あり! 勝者、ニャンコ!」

 エアルベスさんの終了宣言。
 観客は全員、地を揺るがすような歓声を上げた。

 ニャンコにゃん! ニャンコにゃん! ニャンコにゃん! ニャンコにゃん! ……

 ケット・シー達が拍手喝采、皆口々に私の名を称えている。
 四人の精霊王達も揃って輪になって私の周りをグルグル回っていた。
 私は鷹揚に手を振って応えた。実に王様気分である。

 「負けたにゃ…いままで誰にも負けたことがなかったこのおれが、負けたにゃ……」

 「ニャンコにゃん…すごいこだったんだにゃー」

 「う…うしょにゃ…」

 タレミミが地に手をついて呆然としている。
 ハチクロはただただぽかーんとしていた。
 ミミは現実が信じられないようで、ふるふると首を振っている。

 「さっ、わたちが勝ったから言うとおりにしてもらうにゃ!」

 腰に手を当てて言うと、タレミミとハチクロはお互い謝り合って握手した。
 今度はタレミミがミミに謝ろうとすると――

 「こ、こんにゃのわたくちは認めにゃいにゃっ!」

 「――ミミ! おれたちではニャンコには敵わないにゃ! 負けを認めるにゃっ!」

 「なににゃ! タレミミしゃまだって、ニャンコとにょ勝負に負けたからカタチだけわたくちに謝っただけで、ホンシンからじゃにゃいにゃ!」

 タレミミの制止も聞かず、ミミは捨て台詞を吐いてエアルベスさんの下へ走っていってしまった。
 ミミはさながら幼児がお母さんのお腹に顔を埋めるようにエアルベスさんの服に顔を埋め、涙で濡らしている。
 乙女心は複雑なのだろう。
 恋というものは時として嫉妬を生み、人を狂わせてしまう。

 「恋は争いや悲しみを生むにゃ――このニャンコ、恋などいらぬのにゃ!」

 「ニャンコにゃん……それじゃ、さびしくないかにゃ?」

 悲しそうに言ったハチクロに、私は首を振って笑う。

 「恋などなくても、友愛があるにゃ! みんなおともだちでなかよく暮らせばいいのにゃっ!」

 "なんか精霊の愛情に似てるわー!"

 "そうじゃそうじゃ、喧嘩せず互いを思いやりながら暮らせばいいですじゃー!"

 "一件落着だな、やれやれ"

 "平和が一番ですわ"

 私の言葉にエアルベスさんも同じ気持ちだったようで、ミミの頭を撫でて慰めながらうんうんと頷いていた。
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