20 / 105
【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
20にゃん
しおりを挟む
マイムマイム踊りを中断させられた風妖精達が、思い思いに部屋の中をひゅんひゅん飛び交う中。
私と風の妖精王と押し問答していた。
「そっそもそも何でこんなにたくさん出てきたのにゃ!?」
"あっ、それはニャンコの魔力が底なしで美味しいからよー!"
「ここから出してちょーらいにゃっ!」
"えー、ダメよー。ニャンコを留めて守るようにって風の精霊の愛し子のお願いだもん"
くるくると表情を動かしてシルフィードはのたまった。
風の精霊の愛し子、は恐らくスィルの事だろう。
じゃあスィルに出していいか聞いて来いと言えば、"残念だけどー、彼女はあたし達の言葉わかんないのよねー"とあっけらかんと言われた。
ちょっとカチンとくる。
「力づくであらっぽいことはしたくないのにゃ。出して欲しいにゃっ!」
"えー、ニャンコなら、別にここに居たままでも何とかできるでしょー?"
「……」
う…それはそうだが。
シルフィードの言葉に思い直して、ひとまず彼らの様子を見ることにした。
***
ライオットとサミュエルは、丁度件の崖道の入り口にさしかかる辺りでスィル、マリーシャと合流していた。『児童誘拐犯』を追っている間、耳元で風の精霊がスィルの伝言を運んできたからである。
サミュエルの魔術で男のおおよその方向を定め、スィルが風の精霊に命じて探る。
精霊が探ってきたイメージをスィルの心に直接描き出した。
「――間違いないわ。子供達はこの崖山の上の自然洞窟に捕らわれてる。風体は山賊ね。ざっと二十人は居るかしら。後、山賊にグルタニアの神官が紛れてるわ」
「最高司祭様の懸念は現実になってしまったみたいだな」
「二十人…私たちだけでやれるでしょうか?」
「奇襲なら、なんとかいけるかもしれません」
四人は子供達奪還のための計画を練り始める。
そして、夜陰に乗じ、決行。
手筈としては、スィルが子供達の見張りを眠らせ、ライオットとサミュエルが闇の神官に向かう。
マリーシャはその隙に子供達のそばへ行き結界を張る。
だが――
「これは……彼らは私達の事に気付いています。遠見の術でしょうか」
「待ち伏せされてるな、明らかに。だが――」
サミュエルとライオットの視線の先、篝火に照らされた子供達と見張りの男達。
その光から外れた向こうの闇の中に、赤いものがちらほら潜んでいるのが見えた。
「ニャンコ様様ね、助かるわ」
スィルが冷たい笑みを浮かべる。
自分達が斬りこむのを待ち構えているのだろうが、こうもバレバレでは意味が無い。
「子供達が人質にとられる前に迅速にかたをつけなければなりません」
マリーシャが毅然と決意して言う。
ライオットは剣の柄に手を掛けて姿勢を低くした。
男達が余所見をしたその瞬間、号令を掛ける。
「――出る!」
私と風の妖精王と押し問答していた。
「そっそもそも何でこんなにたくさん出てきたのにゃ!?」
"あっ、それはニャンコの魔力が底なしで美味しいからよー!"
「ここから出してちょーらいにゃっ!」
"えー、ダメよー。ニャンコを留めて守るようにって風の精霊の愛し子のお願いだもん"
くるくると表情を動かしてシルフィードはのたまった。
風の精霊の愛し子、は恐らくスィルの事だろう。
じゃあスィルに出していいか聞いて来いと言えば、"残念だけどー、彼女はあたし達の言葉わかんないのよねー"とあっけらかんと言われた。
ちょっとカチンとくる。
「力づくであらっぽいことはしたくないのにゃ。出して欲しいにゃっ!」
"えー、ニャンコなら、別にここに居たままでも何とかできるでしょー?"
「……」
う…それはそうだが。
シルフィードの言葉に思い直して、ひとまず彼らの様子を見ることにした。
***
ライオットとサミュエルは、丁度件の崖道の入り口にさしかかる辺りでスィル、マリーシャと合流していた。『児童誘拐犯』を追っている間、耳元で風の精霊がスィルの伝言を運んできたからである。
サミュエルの魔術で男のおおよその方向を定め、スィルが風の精霊に命じて探る。
精霊が探ってきたイメージをスィルの心に直接描き出した。
「――間違いないわ。子供達はこの崖山の上の自然洞窟に捕らわれてる。風体は山賊ね。ざっと二十人は居るかしら。後、山賊にグルタニアの神官が紛れてるわ」
「最高司祭様の懸念は現実になってしまったみたいだな」
「二十人…私たちだけでやれるでしょうか?」
「奇襲なら、なんとかいけるかもしれません」
四人は子供達奪還のための計画を練り始める。
そして、夜陰に乗じ、決行。
手筈としては、スィルが子供達の見張りを眠らせ、ライオットとサミュエルが闇の神官に向かう。
マリーシャはその隙に子供達のそばへ行き結界を張る。
だが――
「これは……彼らは私達の事に気付いています。遠見の術でしょうか」
「待ち伏せされてるな、明らかに。だが――」
サミュエルとライオットの視線の先、篝火に照らされた子供達と見張りの男達。
その光から外れた向こうの闇の中に、赤いものがちらほら潜んでいるのが見えた。
「ニャンコ様様ね、助かるわ」
スィルが冷たい笑みを浮かべる。
自分達が斬りこむのを待ち構えているのだろうが、こうもバレバレでは意味が無い。
「子供達が人質にとられる前に迅速にかたをつけなければなりません」
マリーシャが毅然と決意して言う。
ライオットは剣の柄に手を掛けて姿勢を低くした。
男達が余所見をしたその瞬間、号令を掛ける。
「――出る!」
1
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
あめの みかな
ファンタジー
教会は、混沌の種子を手に入れ、神や天使、悪魔を従えるすべを手に入れた。
後に「ラグナロクの日」と呼ばれる日、先端に混沌の種子を埋め込んだ大陸間弾道ミサイルが、極東の島国に撃ち込まれ、種子から孵化した神や天使や悪魔は一夜にして島国を滅亡させた。
その際に発生した混沌の瘴気は、島国を生物の住めない場所へと変えた。
世界地図から抹消されたその島国には、軌道エレベーターが建造され、かつての首都の地下には生き残ったわずかな人々が細々とくらしていた。
王族の少年が反撃ののろしを上げて立ち上がるその日を待ちながら・・・
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる