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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
18にゃん
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咳き込む事数秒。
「ああ、きったねぇ…つーか、あれ、ニャンコのおまじないだよ…な。凄いな」
「『児童誘拐犯』て、まんまじゃないですか…しかし、恐ろしい程繊細に織り込まれた魔術ですね」
サミュエルは戦慄さえ覚えた。
犯人が誰かも、人数さえも分からぬ状況の中、それを定め、更に印をつけるなど。
魔術の常識では考えられない事だ。
ニャンコの流れるような長い詠唱を思い出す。
夢で光の神に教えてもらったと言っていたが――正に神の領域の呪文。
そうしている間にも、『児童誘拐犯』は堂々と広場を通り過ぎていく。
「感心してる場合じゃない。サミュ」
「ええ――『我に彼の行く場所を知らしめよ』」
男の行く先、いる方向の情報が魔術によってサミュエルの脳に伝達されてくる。
どうも街から出ようとしているようだった。
「追うぞ」
二人は男から充分距離を保ちながら追いかけ始めた。
***
教会に居た女神官はやつれていたが、優しそうな人だった。
突然の来訪に戸惑いながらも迎え入れてくれた。マリーシャが名乗ると恐縮していたが。
マリーシャ、結構教会組織ではそこそこ偉い人みたいである。
話を聞けば、孤児達は雀の涙の収入を得るために街の外へ出て薬草(ハーブ)を集めていたそうだ。
そして教会はそれを使って薬を煎じ、売って生計としていた。
涙ながらに語る彼女を慰めるマリーシャ。
私も、「『攫われた子供達が無事で帰ってくる事が実現する』…にゃ。『この教会内の人間が食事に困らない事が実現する』…にゃ」と日本語で小さく呟く。
恐らく攫われたのは街の外だろう。きっと、一網打尽に全員連れ去られた。
孤児の誰かの弟妹だろう、スラムに残っていた子供は幼児ばかり。
彼女は全員を教会へ連れて帰り、保護していた。
だが、その世話に追われなかなか孤児達を探しに行けない状態だそうだ。
話を聞きつけた街の人達からの寄付は若干増えたものの、食費はそれを上回り、僅かな蓄えも尽きかけ、行き先の不安に苛まれていた。
マリーシャは一筆書いて女神官に手渡す。ギルド経由で手紙を飛ばせば大神殿がよきに取り計らってくれるとの事で、女神官はほっとしていた。
教会を出て、そこから一番近い門へ向かう。
ひとまず現場を見てみようという事になったからだ。
「あら、ライオット達だわ」
スィルが指差した先、バラバラと歩く通行人のはるか彼方、街の門の傍に米粒程の二人の人影があった。
私は驚く。あれで判別出来るとは。エルフの視力は某アフリカの部族並である。
彼らはそのまま向こうに消えた。
「人目を避けるように歩いてたわ。もしかして――誰かを、追ってる?」
「折角ですし、私達も追いかけて合流しましょうか」
「ちょっと待って…風の精霊よ…ライオット達を追いかけて頂戴……」
スィルが宙を見つめて囁くように呼びかけると、小さな羽根の生えた半透明の妖精がどこからとも無く周囲に沢山現れ、門の方へ飛んでいった。
エルフと言えば風の精霊。鉄板だな。
しかし飛んでいく直前、こちらをチラチラ見ていたのは気のせいだろうか。
「何だか嫌な予感がするの、マリーシャ。私達は一旦宿に戻って馬と装備を整えてから行きましょ」
「ああ、きったねぇ…つーか、あれ、ニャンコのおまじないだよ…な。凄いな」
「『児童誘拐犯』て、まんまじゃないですか…しかし、恐ろしい程繊細に織り込まれた魔術ですね」
サミュエルは戦慄さえ覚えた。
犯人が誰かも、人数さえも分からぬ状況の中、それを定め、更に印をつけるなど。
魔術の常識では考えられない事だ。
ニャンコの流れるような長い詠唱を思い出す。
夢で光の神に教えてもらったと言っていたが――正に神の領域の呪文。
そうしている間にも、『児童誘拐犯』は堂々と広場を通り過ぎていく。
「感心してる場合じゃない。サミュ」
「ええ――『我に彼の行く場所を知らしめよ』」
男の行く先、いる方向の情報が魔術によってサミュエルの脳に伝達されてくる。
どうも街から出ようとしているようだった。
「追うぞ」
二人は男から充分距離を保ちながら追いかけ始めた。
***
教会に居た女神官はやつれていたが、優しそうな人だった。
突然の来訪に戸惑いながらも迎え入れてくれた。マリーシャが名乗ると恐縮していたが。
マリーシャ、結構教会組織ではそこそこ偉い人みたいである。
話を聞けば、孤児達は雀の涙の収入を得るために街の外へ出て薬草(ハーブ)を集めていたそうだ。
そして教会はそれを使って薬を煎じ、売って生計としていた。
涙ながらに語る彼女を慰めるマリーシャ。
私も、「『攫われた子供達が無事で帰ってくる事が実現する』…にゃ。『この教会内の人間が食事に困らない事が実現する』…にゃ」と日本語で小さく呟く。
恐らく攫われたのは街の外だろう。きっと、一網打尽に全員連れ去られた。
孤児の誰かの弟妹だろう、スラムに残っていた子供は幼児ばかり。
彼女は全員を教会へ連れて帰り、保護していた。
だが、その世話に追われなかなか孤児達を探しに行けない状態だそうだ。
話を聞きつけた街の人達からの寄付は若干増えたものの、食費はそれを上回り、僅かな蓄えも尽きかけ、行き先の不安に苛まれていた。
マリーシャは一筆書いて女神官に手渡す。ギルド経由で手紙を飛ばせば大神殿がよきに取り計らってくれるとの事で、女神官はほっとしていた。
教会を出て、そこから一番近い門へ向かう。
ひとまず現場を見てみようという事になったからだ。
「あら、ライオット達だわ」
スィルが指差した先、バラバラと歩く通行人のはるか彼方、街の門の傍に米粒程の二人の人影があった。
私は驚く。あれで判別出来るとは。エルフの視力は某アフリカの部族並である。
彼らはそのまま向こうに消えた。
「人目を避けるように歩いてたわ。もしかして――誰かを、追ってる?」
「折角ですし、私達も追いかけて合流しましょうか」
「ちょっと待って…風の精霊よ…ライオット達を追いかけて頂戴……」
スィルが宙を見つめて囁くように呼びかけると、小さな羽根の生えた半透明の妖精がどこからとも無く周囲に沢山現れ、門の方へ飛んでいった。
エルフと言えば風の精霊。鉄板だな。
しかし飛んでいく直前、こちらをチラチラ見ていたのは気のせいだろうか。
「何だか嫌な予感がするの、マリーシャ。私達は一旦宿に戻って馬と装備を整えてから行きましょ」
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