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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
8にゃん
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「――ニャンコを捕らえていた悪者の仕業かも知れない、と?」
え?
目を瞑った私の耳を打ったのは、私に対する疑いの声――ではなく、魔術師の推測だった。
恐る恐る目を開けると、スィルが私はそう考えたの、とサミュエルに顔を向けて頷いているのが見えた。
「その可能性の方が高いわね。周囲には誰もいなかったわ。隠れている気配もしなかった。もしそうだとしても、ニャンコはここにいる。その何者かはニャンコを見付けられなくて去った…それとも?」
ニャンコを捕らえていた人間は少なくとも只者ではない。あれだけの魔術を行使できる存在――。
最悪の場合はどこかの権力者の手先である可能性もある。
そんな風に彼らは考えたようだ。
内心胸を撫で下ろす。バレてない、バレてない。
そんな私の筋肉の弛緩に、マリーシャが落ち着きましたか? と腕を緩めた。
「ニャンコとは、誰かが常に一緒にいた方がよさそうですね」
「ああ」
ライオットが神官に同意すると、魔術師が話は元に戻りますが、と仕切り直した。
「大フォレストワームの事はどうしますか?」
「既に死んでいる以上、ギルドに報告するしかないだろう」
剣士の言葉に皆が沈黙の同意を返す。
結局彼らは、大フォレストワームが死んでいた事と、スィルが調べてきた調査結果をギルドに報告することになった。私を発見したことと、大神殿のケット・シー保護区に連れて行くとの情報に加え、ケット・シーを狙う恐ろしい存在がいるかもしれない、との推測も添えて。
***
翌日。
私達は暗いうちから民宿に別れを告げ、馬車に乗って村を出た。
草原はどこまでも広がっているように見える。ただ平らな大地ではなく、起伏がある。
ところどころ木も生えており、牛や羊のような生き物も放牧されていた。
羊飼いの家なのだろう、粗く削りだして作った石レンガを積み重ねて作った粗末な家や小屋も散見出来る。前世で見た、イギリスの放牧地帯に似た風景だ。
私たちの馬車が走っている道から百メートルほど離れたところに、森から出た川が蛇行している。
水が確保できる道は旅にうってつけってわけだ。
見晴らしも良いし、襲ってくるものも遠くから発見しやすい。
「このまま最短で行けば明日の夕方までにはリュネって宿場街に着く」
「行きは大丈夫だったけど、帰りはどうかしら?」
「まさか日が高いうちは出ないだろうさ」
何の事かと思っていると、サミュエルが答えてくれた。
「遠くに片側が絶壁になっている山が見えるでしょう?もう少し行くとあそこの崖下を通る道に出ます。街への距離は最短なのですが、よく魔物が出るのです。夜行性のため昼間は滅多に出ないので大丈夫ですが、夜に近づけば近づくほど危険ですね」
近隣の住民も昼間にのみ通行するのですよ、と言われ。
これはもしかしてフラグというやつだろうか?――嫌な予感が胸中をよぎる。
「安全な道もあるんだけどね。だいぶ回り道になるわ――まあ、安全といってもそっちは追いはぎが出るんだけどね」
「相手をするなら魔物の方がいいな。人間は変に知恵付いてるから性質が悪いし」
スィルとライオットが不安な事を言う。
その日の夜は野宿だった。
皆、水を汲んできたり薪となる枯れ草や枯れ枝を拾ってきたり鍋や食器、野生動物や野草などの食材を調達したりしている。肉はスィルさんが鮮やかな弓捌きで一矢のもと鴨を射落とした。
私も勿論マリーシャに手伝ってもらいながら野草採集や薪拾いを手伝った。
旅の食事はジビエと根菜、野草を煮込んだスープを作る。
一つの鍋で作れて栄養を無駄なく摂取できるからだそうで。
ちなみに主食は甘芋とパンである。
食べてごらんと渡された熱々の甘芋をはふはふしながら食べると、優しい甘みが口の中に広がる。
まんま、サツマイモだった。おいしい。
夢中になって食べていると、目の前に甘芋が差し出された。
ライオットである。
「パンと交換してくれないか、ニャンコ。甘芋は俺はいいや。パンが無かった時嫌って程食べさせられたからな。それに食いすぎるとオナラが出るだろう?剣持って戦う時にブー、なんてかっこ悪いからいらない」
「にゃっ、本当に良いのかにゃ? 美味しいのにライオットしゃんは食べないのかにゃ?」
「ああ。じゃあパンと交換で」
「本当ライオットは我侭なんだから!」
「……」
スィルが腰に手を当ててぼやく。
私は交換自体に不満はなかったが、ちょっと面白くなくなって一計を案じた。
「ニャンコ?」
ライオットの隣にわざわざ移動して食事再開。
「にゃー、甘芋は甘くってとっても美味しいにゃ~♪」
言いながら、ちらりとライオットを見上げる。
「あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「いらないから」
苦笑気味のライオット。成り行きを見守っていた皆がくすくすと笑いだす。
「にゃ~おいしいにゃ~♪あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「だからいらないって」
そんなやりとりを数回繰り返す。
しかし、私がスープを飲むためふと目を離した隙に。
「甘芋美味しいにゃー♪な、ニャンコ♪」
ライオットが私の口調を真似してかじっているそれは!
「に゛ゃあああああああああっっ!!!」
私の甘芋がぁっ!!!
とうとうこらえきれず、悲鳴を上げる私以外がドッと笑った。
ちなみにその夜、甘芋を食べ過ぎた私はプープーとオナラを連発してしまい、皆の忍び笑いに耐える羽目になったのであった。うう、恥ずかしい。
しかしライオットにも真夜中に襲ってきた狼との戦闘中に盛大に放屁するという天罰が下ったのでよしとする。
え?
目を瞑った私の耳を打ったのは、私に対する疑いの声――ではなく、魔術師の推測だった。
恐る恐る目を開けると、スィルが私はそう考えたの、とサミュエルに顔を向けて頷いているのが見えた。
「その可能性の方が高いわね。周囲には誰もいなかったわ。隠れている気配もしなかった。もしそうだとしても、ニャンコはここにいる。その何者かはニャンコを見付けられなくて去った…それとも?」
ニャンコを捕らえていた人間は少なくとも只者ではない。あれだけの魔術を行使できる存在――。
最悪の場合はどこかの権力者の手先である可能性もある。
そんな風に彼らは考えたようだ。
内心胸を撫で下ろす。バレてない、バレてない。
そんな私の筋肉の弛緩に、マリーシャが落ち着きましたか? と腕を緩めた。
「ニャンコとは、誰かが常に一緒にいた方がよさそうですね」
「ああ」
ライオットが神官に同意すると、魔術師が話は元に戻りますが、と仕切り直した。
「大フォレストワームの事はどうしますか?」
「既に死んでいる以上、ギルドに報告するしかないだろう」
剣士の言葉に皆が沈黙の同意を返す。
結局彼らは、大フォレストワームが死んでいた事と、スィルが調べてきた調査結果をギルドに報告することになった。私を発見したことと、大神殿のケット・シー保護区に連れて行くとの情報に加え、ケット・シーを狙う恐ろしい存在がいるかもしれない、との推測も添えて。
***
翌日。
私達は暗いうちから民宿に別れを告げ、馬車に乗って村を出た。
草原はどこまでも広がっているように見える。ただ平らな大地ではなく、起伏がある。
ところどころ木も生えており、牛や羊のような生き物も放牧されていた。
羊飼いの家なのだろう、粗く削りだして作った石レンガを積み重ねて作った粗末な家や小屋も散見出来る。前世で見た、イギリスの放牧地帯に似た風景だ。
私たちの馬車が走っている道から百メートルほど離れたところに、森から出た川が蛇行している。
水が確保できる道は旅にうってつけってわけだ。
見晴らしも良いし、襲ってくるものも遠くから発見しやすい。
「このまま最短で行けば明日の夕方までにはリュネって宿場街に着く」
「行きは大丈夫だったけど、帰りはどうかしら?」
「まさか日が高いうちは出ないだろうさ」
何の事かと思っていると、サミュエルが答えてくれた。
「遠くに片側が絶壁になっている山が見えるでしょう?もう少し行くとあそこの崖下を通る道に出ます。街への距離は最短なのですが、よく魔物が出るのです。夜行性のため昼間は滅多に出ないので大丈夫ですが、夜に近づけば近づくほど危険ですね」
近隣の住民も昼間にのみ通行するのですよ、と言われ。
これはもしかしてフラグというやつだろうか?――嫌な予感が胸中をよぎる。
「安全な道もあるんだけどね。だいぶ回り道になるわ――まあ、安全といってもそっちは追いはぎが出るんだけどね」
「相手をするなら魔物の方がいいな。人間は変に知恵付いてるから性質が悪いし」
スィルとライオットが不安な事を言う。
その日の夜は野宿だった。
皆、水を汲んできたり薪となる枯れ草や枯れ枝を拾ってきたり鍋や食器、野生動物や野草などの食材を調達したりしている。肉はスィルさんが鮮やかな弓捌きで一矢のもと鴨を射落とした。
私も勿論マリーシャに手伝ってもらいながら野草採集や薪拾いを手伝った。
旅の食事はジビエと根菜、野草を煮込んだスープを作る。
一つの鍋で作れて栄養を無駄なく摂取できるからだそうで。
ちなみに主食は甘芋とパンである。
食べてごらんと渡された熱々の甘芋をはふはふしながら食べると、優しい甘みが口の中に広がる。
まんま、サツマイモだった。おいしい。
夢中になって食べていると、目の前に甘芋が差し出された。
ライオットである。
「パンと交換してくれないか、ニャンコ。甘芋は俺はいいや。パンが無かった時嫌って程食べさせられたからな。それに食いすぎるとオナラが出るだろう?剣持って戦う時にブー、なんてかっこ悪いからいらない」
「にゃっ、本当に良いのかにゃ? 美味しいのにライオットしゃんは食べないのかにゃ?」
「ああ。じゃあパンと交換で」
「本当ライオットは我侭なんだから!」
「……」
スィルが腰に手を当ててぼやく。
私は交換自体に不満はなかったが、ちょっと面白くなくなって一計を案じた。
「ニャンコ?」
ライオットの隣にわざわざ移動して食事再開。
「にゃー、甘芋は甘くってとっても美味しいにゃ~♪」
言いながら、ちらりとライオットを見上げる。
「あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「いらないから」
苦笑気味のライオット。成り行きを見守っていた皆がくすくすと笑いだす。
「にゃ~おいしいにゃ~♪あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「だからいらないって」
そんなやりとりを数回繰り返す。
しかし、私がスープを飲むためふと目を離した隙に。
「甘芋美味しいにゃー♪な、ニャンコ♪」
ライオットが私の口調を真似してかじっているそれは!
「に゛ゃあああああああああっっ!!!」
私の甘芋がぁっ!!!
とうとうこらえきれず、悲鳴を上げる私以外がドッと笑った。
ちなみにその夜、甘芋を食べ過ぎた私はプープーとオナラを連発してしまい、皆の忍び笑いに耐える羽目になったのであった。うう、恥ずかしい。
しかしライオットにも真夜中に襲ってきた狼との戦闘中に盛大に放屁するという天罰が下ったのでよしとする。
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