竜が守護せし黄昏の園の木に咲く花は

譚音アルン

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【1】大魔術師

1.プロローグ

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 グノディウス王国の北には、頂を白く染めた山脈が横たわっている。

 『神の御座所』と呼ばれるそこは、世界でもっとも神に近いところとして古くから聖地としてみなされてきた。
 山脈の向こう側には、『死の大地』と呼ばれる荒野が広がっている。ゆえに、神々はその頂で生と死の世界を司っているといわれてきた。

 創造神ウルをはじめ、信仰されている神は国によってまちまちである。ただ、聖典に記されている神々の内でもっとも謎多き神とされている賢神フォーンは、特に魔術師達の信仰を集めていた。


***


 グノディウス王国の西の外れ、アリア皇国との国境に位置するコトナの村を出てかれこれ七日。飛竜グルガンの様子も少し疲れている様だった。

 最後の物質補給の場所となってしまった村で仕入れた食料はあともって八日というところだろうか。
 竜の背に乗っているゼーウェン自身、疲れの色は隠せなかったが、それ以上に先へ先へと自分を駆り立てる思いが充満していた。

 ――もう直ぐ、あと少しで試練が達成される。

 周りは見渡す限りの岩山と太陽に焼き尽くされた不毛の大地。

 「もう一頑張りだ、グルガン」

 自分自身をも励ますつもりで飛竜にそう声をかけると、彼はただひたすら目指し続ける。 
                 
 ――死の大地の中心、その高峰を。
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