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【0】愚かなる旅人達
4.襲撃
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起きたのは恐らく真夜中だった、と思う。
泣きつかれて眠ってしまったとはいえ、そこは下がごつごつと硬い岩場の寝床。
ベッドに慣れたあたしにとっては到底朝まで熟睡出来るものじゃなかった。
真っ暗だった洞窟は、入り口の方から月の光が差しているのだろうか、ある程度視界が利いている。
あたしは寝転んだまま、やはり夢ではなかったことに少なからず落胆しながらぼんやりと考え事をしていた。
***
昨日は変わり映えのしない一日だった、と思う。
一週間は熟睡出来ていたのだろう、荒野の夢も見なくて済んだし体調も悪くは無かった。
片道電車を乗り継いで一時間半もかかる学校のため、いつもの通り5時半に起きて制服に着替えた。
階下の洗面台で髪を梳かして寝癖を取る。
それが終わってリビングに行くと、おっとりした印象だが実はしっかり者のお母さんが、朝食とお弁当のおかずの調理中だったっけ。
あたしは自分のお弁当箱を取り出す。
女の子だし、詰めるぐらいは自分でする、というのが風祭家のルール。
お弁当を詰め終わると、学校へ行く。
高校3年生になってから早2ヶ月。あたしは早生まれだからまだ17歳。
昨日は模試の結果を元に、志望大学について面談する日だった。
あたしが志望しているのは将来食べていけるのに困らなさそうな、という理由から国公立の薬学部。
私学の進学校、エスカレーター式に同系列の大学へ行く同級生もいる。だけどあたしの家は普通のサラリーマン。
もし私立大学を安易に選べば間違いなく借金になるだろう。
あたしは大学こそはあまり親に負担をかけないようにしたいと考えていた。
高校に着くと、教室に入る。
ホームルームまで時間があれば、友達と昨夜見たテレビ番組だのニュースだの、漫画・小説・ゲームだの、他愛ない事を話す。
ホームルームが終わると担任と入れ替わるようにして教科担当の教師が入ってくる。
一時間目から物理だった。
大学受験を見据え、いよいよ授業も難しくなってきている。
特に数学や物理といった教科は、あたしにはついていけるかいけないかというレベルにまでなっていた。
数学は受験に必須だ。学習の遅れによる焦りは時と共に容赦なく自分を追い詰める。
授業中教師に当てられて間違った解答をしてしまい、あたしはクラスの笑い者になった。
溜息を吐きたくなるような午前中の授業が終わると、やっと昼食。
購買に飲み物を買いに走り、友達と弁当を広げる。話題はやっぱりタイムリーな受験の悩みだ。
あたしの模試の結果はD判定。志望大学を落とすか、果ては志望学部すら危ういかも知れない。
どうしよう、と悩むあたしを他所に、友達達の会話が始まった。
「受かる為にも、せめて夏だけでも予備校は行った方がいいのかなぁ。夏期講習の案内が来たんだよね……真奈はどう思う?」
私、C判定だったんだぁ……と零す大親友の真紀は、予備校に行ってる他の同級生が気になるようだ。
「あー、でもさ。ここって私学じゃん。学費でうちはいっぱいいっぱいだから無理かなぁ」
あたしがそう言うと、うちもそーなんだよねーと真紀が言う。
それを聞いていた友達の由利が箸を置いて溜息を吐いた。
「……何かさ、夢が無いよね」
「え?」
「本当はさ、考古学勉強したいんだけど。職業選択という観点から言えばあまり役に立たないじゃん? 必死に勉強した挙句、就職出来なかったら食べていけないし。
昨日親に言われちゃった。このご時勢、食べていける職業を見据えて選択しろって。寧ろそうするしかないよね、うちらってさ。
例えば医療系の看護学部とか薬学部とかさ。他は公務員系? 男子も警察官とか自衛隊受けるんだって」
由利の言葉に真紀が「あー、私も昨夜言われたー、わかるわかるー」と同意する。
「私も本当は漫画家になりたかったのに、才能のある一握りの人しか儲からないし食べていけないし、いつまでも夢を見てるんじゃないって親に大・大・大反対されてるしね。とりあえず取っておいて損はないからって、今度日商簿記受けさせられるんだよ」
夢が無いよねー、と話し合う二人にあたしは曖昧に微笑む事しか出来なかった。
皆、それぞれの道をしっかり見据えて行動し、勉強を続けている。
――それなのにあたしだけ取り残されていて。
自分だけ空回りしている気がする。焦りと不安だけが、増大し始めていた。
「――そう言えばさ、真奈相変わらずあの夢を見てんの?」
不意に由利が話を振ってきた。
「一週間前に、見たかな。でもここの所熟睡しちゃってて。夢そのものを見てないんだよね。夜寝ていつの間にか朝起きてるって感じ」
「夢占いによるとさ、荒野の夢は『寂しさを感じている』とか『人生の目的を見失っている』という意味なんだって。真奈、心当たりはない?」
「うーん、どうだろう? でも、最近もし見るとしたら……後者なのかもね」
暫しの沈黙。
トーンダウンしたあたしを励まそうとしたのか、真紀はおどけてみせた。
「もしかしたらさ、異世界トリップの前触れかと私は思ってるんだけど」
「あはは、真紀漫画読みすぎー!」
由利が笑う。あたしもつられて笑った。
でも、由利の夢占いは当たってる、と思う。あたしには何一つ、情熱を燃やせるものがなかったから。
そして午後の進路相談の時。
あたしの模試の結果成績表を見ながら担任の教師は頭をぼりぼりと掻いた。
「うーん、風祭はなー。先生は前の進路相談の時言ったよな。お前の希望する薬学部、受験勉強のモチベーションが保てるなら受かるとは思うぞって。
だが、このままだったらかなり厳しいぞ、D判定だから。夏休みどれだけ追い込めるか、が勝負だな。もし次の模試でもD判定だったら、志望を変えた方がいいと先生は思う」
「はい……」
「お前のソフトボール部先輩、姫野だって夏で勝負して難関の国公立看護学校に行ったんだ。風祭も予習復習をちゃんとして根性出せば追いつくと思うから」
帰り際に、本当に薬学部に行きたいのか、と念を押すように教師に聞かれた。
あたしは気持ちとは裏腹に、はいと答えた。
意気消沈して帰宅したあたしは、味気ない夕食を食べて風呂に入った。
その後、自室に篭って机に向かうと数学の問題集を開く。
ノートを開き、分かるところから復習して問題を解き始めたものの。
難解な数学は真奈の精神を疲労させていき、受験と進路の悩みを思い出させて辛くなる。
結局、一時間問題集をやったところで、あたしはベッドにボスンと倒れこんだ。
そして、あの荒野の夢を見る。
白いあの花を見つけて。
触ろう指を伸ばした次の瞬間にはもう、あたしはこちらの世界に来てしまっていたのだろう。
***
日常生活にはこれといって異常は無かった。
この世界に来てしまったのは、どう考えても。
――やっぱり、あの夢に出てきた白い花が原因としか……。
一週間程前は夢を見ていても普通に目が覚めていたのだから。
どうすれば元の世界に戻れるのだろうか。分からない。出来れば、情報が欲しい。この世界に帰る手がかりはあるのだろうか。
元の世界に帰る手がかりを探すにしても、生活基盤も無く言葉すら通じない現状では生きていくことすら儘ならない。
あたしはつらつらと考える。
まずは言葉を覚えなければ、と思う。言葉を覚えたら、生活していくための仕事も必要になってくる。
それまでは、悪いけれどゼーウェンを頼るしかない。
助けてくれて、こうして面倒を見てくれているということは、彼が善人である証だろうと思う。
――言葉を覚えて自活出来るまでは、ゼーウェンについていこう。
この世界で初めて会った彼についていく。それは生まればかりの鳥の雛が初めて見たものを親と思う、刷り込み現象に似ているかも知れないけれども。
少なくとも悪い選択ではない、と思う。あたしは生きる為にもそうする事に決めた。
トイレに行きたくなって起き上がると、ゼーウェンが居ない事に気付く。荷物はそのままだ。
――あれ……?
彼もトイレに出たのかな?
そう思いながら洞窟の外の方へと歩き出した時、あたしの耳に金属を打ち合うような音と叫び声が届いた。
――な、何の音!?
洞窟入り口付近にある、少し大きな岩の影に身を寄せて外をそっと伺う。月明かりの下、二つの人影が見えた。
一人はゼーウェン、もう一人は全身黒装束を着た人物だった。何か叫びあいながら手に持った剣で戦っている。
あたしの目には追うのがやっとの速さ。
ゼーウェンの方が劣勢のようだった。ある瞬間に、黒装束が鋭い一声を上げたかと思うと、ゼーウェンの剣が弾き飛ばされる。
後ろにどう、と尻餅をついたゼーウェンに、黒装束が剣先を突きつけるのが見えた。
泣きつかれて眠ってしまったとはいえ、そこは下がごつごつと硬い岩場の寝床。
ベッドに慣れたあたしにとっては到底朝まで熟睡出来るものじゃなかった。
真っ暗だった洞窟は、入り口の方から月の光が差しているのだろうか、ある程度視界が利いている。
あたしは寝転んだまま、やはり夢ではなかったことに少なからず落胆しながらぼんやりと考え事をしていた。
***
昨日は変わり映えのしない一日だった、と思う。
一週間は熟睡出来ていたのだろう、荒野の夢も見なくて済んだし体調も悪くは無かった。
片道電車を乗り継いで一時間半もかかる学校のため、いつもの通り5時半に起きて制服に着替えた。
階下の洗面台で髪を梳かして寝癖を取る。
それが終わってリビングに行くと、おっとりした印象だが実はしっかり者のお母さんが、朝食とお弁当のおかずの調理中だったっけ。
あたしは自分のお弁当箱を取り出す。
女の子だし、詰めるぐらいは自分でする、というのが風祭家のルール。
お弁当を詰め終わると、学校へ行く。
高校3年生になってから早2ヶ月。あたしは早生まれだからまだ17歳。
昨日は模試の結果を元に、志望大学について面談する日だった。
あたしが志望しているのは将来食べていけるのに困らなさそうな、という理由から国公立の薬学部。
私学の進学校、エスカレーター式に同系列の大学へ行く同級生もいる。だけどあたしの家は普通のサラリーマン。
もし私立大学を安易に選べば間違いなく借金になるだろう。
あたしは大学こそはあまり親に負担をかけないようにしたいと考えていた。
高校に着くと、教室に入る。
ホームルームまで時間があれば、友達と昨夜見たテレビ番組だのニュースだの、漫画・小説・ゲームだの、他愛ない事を話す。
ホームルームが終わると担任と入れ替わるようにして教科担当の教師が入ってくる。
一時間目から物理だった。
大学受験を見据え、いよいよ授業も難しくなってきている。
特に数学や物理といった教科は、あたしにはついていけるかいけないかというレベルにまでなっていた。
数学は受験に必須だ。学習の遅れによる焦りは時と共に容赦なく自分を追い詰める。
授業中教師に当てられて間違った解答をしてしまい、あたしはクラスの笑い者になった。
溜息を吐きたくなるような午前中の授業が終わると、やっと昼食。
購買に飲み物を買いに走り、友達と弁当を広げる。話題はやっぱりタイムリーな受験の悩みだ。
あたしの模試の結果はD判定。志望大学を落とすか、果ては志望学部すら危ういかも知れない。
どうしよう、と悩むあたしを他所に、友達達の会話が始まった。
「受かる為にも、せめて夏だけでも予備校は行った方がいいのかなぁ。夏期講習の案内が来たんだよね……真奈はどう思う?」
私、C判定だったんだぁ……と零す大親友の真紀は、予備校に行ってる他の同級生が気になるようだ。
「あー、でもさ。ここって私学じゃん。学費でうちはいっぱいいっぱいだから無理かなぁ」
あたしがそう言うと、うちもそーなんだよねーと真紀が言う。
それを聞いていた友達の由利が箸を置いて溜息を吐いた。
「……何かさ、夢が無いよね」
「え?」
「本当はさ、考古学勉強したいんだけど。職業選択という観点から言えばあまり役に立たないじゃん? 必死に勉強した挙句、就職出来なかったら食べていけないし。
昨日親に言われちゃった。このご時勢、食べていける職業を見据えて選択しろって。寧ろそうするしかないよね、うちらってさ。
例えば医療系の看護学部とか薬学部とかさ。他は公務員系? 男子も警察官とか自衛隊受けるんだって」
由利の言葉に真紀が「あー、私も昨夜言われたー、わかるわかるー」と同意する。
「私も本当は漫画家になりたかったのに、才能のある一握りの人しか儲からないし食べていけないし、いつまでも夢を見てるんじゃないって親に大・大・大反対されてるしね。とりあえず取っておいて損はないからって、今度日商簿記受けさせられるんだよ」
夢が無いよねー、と話し合う二人にあたしは曖昧に微笑む事しか出来なかった。
皆、それぞれの道をしっかり見据えて行動し、勉強を続けている。
――それなのにあたしだけ取り残されていて。
自分だけ空回りしている気がする。焦りと不安だけが、増大し始めていた。
「――そう言えばさ、真奈相変わらずあの夢を見てんの?」
不意に由利が話を振ってきた。
「一週間前に、見たかな。でもここの所熟睡しちゃってて。夢そのものを見てないんだよね。夜寝ていつの間にか朝起きてるって感じ」
「夢占いによるとさ、荒野の夢は『寂しさを感じている』とか『人生の目的を見失っている』という意味なんだって。真奈、心当たりはない?」
「うーん、どうだろう? でも、最近もし見るとしたら……後者なのかもね」
暫しの沈黙。
トーンダウンしたあたしを励まそうとしたのか、真紀はおどけてみせた。
「もしかしたらさ、異世界トリップの前触れかと私は思ってるんだけど」
「あはは、真紀漫画読みすぎー!」
由利が笑う。あたしもつられて笑った。
でも、由利の夢占いは当たってる、と思う。あたしには何一つ、情熱を燃やせるものがなかったから。
そして午後の進路相談の時。
あたしの模試の結果成績表を見ながら担任の教師は頭をぼりぼりと掻いた。
「うーん、風祭はなー。先生は前の進路相談の時言ったよな。お前の希望する薬学部、受験勉強のモチベーションが保てるなら受かるとは思うぞって。
だが、このままだったらかなり厳しいぞ、D判定だから。夏休みどれだけ追い込めるか、が勝負だな。もし次の模試でもD判定だったら、志望を変えた方がいいと先生は思う」
「はい……」
「お前のソフトボール部先輩、姫野だって夏で勝負して難関の国公立看護学校に行ったんだ。風祭も予習復習をちゃんとして根性出せば追いつくと思うから」
帰り際に、本当に薬学部に行きたいのか、と念を押すように教師に聞かれた。
あたしは気持ちとは裏腹に、はいと答えた。
意気消沈して帰宅したあたしは、味気ない夕食を食べて風呂に入った。
その後、自室に篭って机に向かうと数学の問題集を開く。
ノートを開き、分かるところから復習して問題を解き始めたものの。
難解な数学は真奈の精神を疲労させていき、受験と進路の悩みを思い出させて辛くなる。
結局、一時間問題集をやったところで、あたしはベッドにボスンと倒れこんだ。
そして、あの荒野の夢を見る。
白いあの花を見つけて。
触ろう指を伸ばした次の瞬間にはもう、あたしはこちらの世界に来てしまっていたのだろう。
***
日常生活にはこれといって異常は無かった。
この世界に来てしまったのは、どう考えても。
――やっぱり、あの夢に出てきた白い花が原因としか……。
一週間程前は夢を見ていても普通に目が覚めていたのだから。
どうすれば元の世界に戻れるのだろうか。分からない。出来れば、情報が欲しい。この世界に帰る手がかりはあるのだろうか。
元の世界に帰る手がかりを探すにしても、生活基盤も無く言葉すら通じない現状では生きていくことすら儘ならない。
あたしはつらつらと考える。
まずは言葉を覚えなければ、と思う。言葉を覚えたら、生活していくための仕事も必要になってくる。
それまでは、悪いけれどゼーウェンを頼るしかない。
助けてくれて、こうして面倒を見てくれているということは、彼が善人である証だろうと思う。
――言葉を覚えて自活出来るまでは、ゼーウェンについていこう。
この世界で初めて会った彼についていく。それは生まればかりの鳥の雛が初めて見たものを親と思う、刷り込み現象に似ているかも知れないけれども。
少なくとも悪い選択ではない、と思う。あたしは生きる為にもそうする事に決めた。
トイレに行きたくなって起き上がると、ゼーウェンが居ない事に気付く。荷物はそのままだ。
――あれ……?
彼もトイレに出たのかな?
そう思いながら洞窟の外の方へと歩き出した時、あたしの耳に金属を打ち合うような音と叫び声が届いた。
――な、何の音!?
洞窟入り口付近にある、少し大きな岩の影に身を寄せて外をそっと伺う。月明かりの下、二つの人影が見えた。
一人はゼーウェン、もう一人は全身黒装束を着た人物だった。何か叫びあいながら手に持った剣で戦っている。
あたしの目には追うのがやっとの速さ。
ゼーウェンの方が劣勢のようだった。ある瞬間に、黒装束が鋭い一声を上げたかと思うと、ゼーウェンの剣が弾き飛ばされる。
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