貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】

アルコルというその星は実は見えない方が死亡フラグ。

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 「そんな、ルイン!!」


 奴は急いで倒れた黒豹の元へと走る。


 「冒険者よ、お前の相手はこの私だ!」


 リノが奴に切りかかるが、奴は凄まじい反応速度で攻撃を受け止めると、獄炎よりも煮えたぎった怒りを露わにする。


 「邪魔をするなぁ!!」


 化け物みたいな怪力でリノを振り払う。吹っ飛ばされたリノは岩に強く体を打ってしまう。奴はそのまま黒豹の元へと歩いていく。


 「そんな…ルイン…!」


 奴は黒豹を抱きかかえてその場で泣いた。
 

 「お前達は生きて返さんぞ…」


 ーーーアサイラム領 ダビネスーーー


 「失礼します。魔王様、リノさんから通信が来ました。」


 エレーナが自室にいたレオに話す。


 「リノから?」


 通信魔道具を付けると、弱ったリノが一生懸命に説明した。


 「魔王様、私とジョーカーは武闘派クランネメシスの副団長、ルーシアと戦闘しています!ですが、ジョーカーが倒れて、奴は彼を狙っています。私も負傷したので、増援をお願いしたいです!」


 「なんだと?いいだろう。今すぐケーレスを送る。」


 通信が終了すると、急いでエレーナに言う。


 「エレーナ、至急アルファを呼んできてくれ。」


 ーーー戦闘場所ーーー


 「そいつに指1本触れるんじゃない!」


 リノが滑らかな動きで刀を振る。しかしどれも奴に避けられてしまう。


 「邪魔するな!獄炎!」


 あと少しで届きそうだったが、惜しくも奴の獄炎によって距離を取られてしまう。


 「パレント・タケミカヅチ、グラディウス!」


 次の瞬間、リノが風のように奴の獄炎を避けて懐に入り、奴に切りかかる。
 そして1本の腕が血と共に宙を舞った。それは奴のものではなかった。ボトッと落ちたその腕は、リノのものだった…
 次の瞬間、彼女は歯を食いしばって残った左腕で奴に殴りかかるが、奴はその腕を力いっぱいに握った。
メキメキと音を立ててリノの左腕は使い物にならなくなった。彼女はその場で膝をついた。


 「死ね、東洋人。」


 奴はそう言うと、リノの腹部に剣を一刺しした。
 彼女は吐血して、その場で仰向けに倒れた。


 「まお…さま。すみ、ません…。」


 そう言うと彼女はそっと目を閉じて息を引き取った。


 「ルーシアさん、こっちに桁違いの魔力を持った奴が接近してます。撤退しましょう!」


 「仇は取ってやる。ルイン…魔王をこの手で倒してみせるからな。」


 奴はそう言うと冒険者と共にその場から去っていった。
 奴らが去ってからすぐにガルムが到着した。
 だが、既にそこに立っているものは誰一人いなかった。
 ガルムはジョーカーの元へと駆け寄る。


 「おい、無事か?」


 ジョーカーはなんとか息をしていた。掠れた声で彼が喋る。


 「お、おい…リノは…?」


 それを聞いたガルムは急いでリノの元へと向かう。
 だがそこには片腕は切られ、もう1つの腕は粉々に変形した無惨なリノの姿が。


 「リノ…」


ーーーアサイラム領 ダビネスーーー


 ガルムが帰ってきたのは夕方の頃だった。1人の負傷者とひとつの死体を抱えて。


 「私がついた頃には既に…」


 嘘だ。リノが負けるはずがない…死ぬはずがないだろう!ふざけるな。
 その時、レオの血反吐を吐くような叫びが響く。


 「クソがあああ!!!」


 その叫びは近くの森をビビらせた。木々は揺れ、動物は巣に籠り、川は水しぶきを立てた。


 「ケーレス。」
 

 そう言うとレオの目の前に瞬時にケーレスが集合する。


 「はっ。」


 「ネメシスの外道共を一匹残らず殺してこい。」


 「御意!」


 「ルーシアは残せ。奴はこの俺が父の元へと案内してやる…」


 そう言うレオの目からは膨大な闇が溢れそうになっていた…
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