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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
除菌、消臭――時に除霊も出来るらしいアレ。①
しおりを挟む シン達がハオランに追いついていた頃、一方ミアは再び現れたロロネーの船団に襲撃される前線へ向かう。突然現れたり気えたりする不自然な海賊船。その正体を調べる為に自ら名乗り出た彼女は、ツバキのもう一台のボードで波を割いて急行する。
前線の中でもあまり被害の出ていない船を探し、船員の者に合図を送る。餞別として受け取った物資の中には、チン・シー海賊団の仲間であることを知らせる信号弾も含まれていた。
敵軍の目につかぬよう、威力を調整して銃で信号弾を目的の船の上空に打ち出す。煙の量はミアによって抑えられていたが、赤い煙が海面より打ち上がり、乗り合わせている船員の目に止まる。
煙の発生源には、彼らの知らぬ人物であるミアの姿があった。だが彼女の打ち出した信号弾は、シュユーによって作られた特殊なもので、彼らには彼女がチン・シー或いは、シュユー達幹部勢に認められた者であることを知り、直ぐに船へと招き入れる。
「アンタらの主人に頼んで、様子を見に来た者だ。中央で挟撃した筈のロロネーの海賊船が現れたと言う報告が入った」
「あぁ、俺らにも何が何やら・・・。中央にあれだけの船団があったんだ、あれが敵の全勢力だと思ってたのによぉ・・・。一体どうなってやがるんだ」
船員の言っていることは、何もおかしな事ではない。それだけの数の海賊船が、チン・シー海賊団の幻影を取り囲み、総攻撃を仕掛けていた。普通なら全勢力を集めていたと思うものだ。
だが、ミアには一つ引っ掛かることがあったのだ。それは、ロロネー海賊団の船の動きにある。獲物を取り囲み、逃げ場のない状況に追い込んだとはいえ、海賊船をそのまま敵船へ突っ込ませるようなことをするだろうか。
生きた船員の乗っていないロロネーの海賊船であるならば、或いはそういった戦法を取るかもしれないが、その都度船を破損し失っていては新たな船の調達に、金や時間がかかるというものだろう。
それもロロネーならではの戦法と、割り切っていいものなのだろうか。惜しげもなく財産や物資を投げ打つ時というものは、どういった時か。
例えるなら、ゲームなどでたまに見かけるスキル、“銭投げ“が該当するのではないだろうか。金銭に余裕のない時には、使うのを躊躇われるスキルだが、金銭に余裕の出てくる終盤や、ラストダンジョンとなれば惜しみなく使える気になるもの。
これは、シンのクラスであるアサシンの投擲でも、同じことが言えるだろう。投げれば失われるアイテムを、何の気兼ねもなく投げられる時の心境とは、心や準備に“余裕“がある時ではないだろうか。
「高台で援護する。狙撃に適した場所へ案内してくれないか?」
それを確かめる為にも、先ずは前線へ赴いた目的でもあるロロネー海賊団の動向を伺う必要がある。招き入れてくれた船員と共に、ミアはそのままこの船で一番見晴らしの良いポイントへ案内してもらう。
ボードを抱え、案内人の後を追い階段を上がっていくミア。本船で周囲の警戒に当たっていた時と同様、甲板に出ると案内をしてくれた船員はマストの方を指差す。登り方を知っているミアは、ここまででいいと案内を断り自分の持ち場に戻ってくれと言い渡す。
狙撃ポイントに着いたミアは、ライフル銃の組み立てを始め、スコープでロロネーの船団を覗き込む。海賊船の構造上は、中央に集まっていた海賊船とほとんど変わらない。損壊箇所や砲台の数や設計に、見た目上の異変は感じられない。
チン・シー軍の船団に飛んでいく亡霊を、次々にライフルで狙撃していくミア。通常弾とは異なり、属性を込めた弾薬を使っている為、一撃でその魂を冥府へと送り返す。
するとそこで、ミアは異様な雰囲気を醸し出すロロネーの船団に隠された、ある現象を目撃する。狙撃を行う最中、味方の軍が放った砲撃が敵の海賊船にぶつかろうとする瞬間を捉えた。
海上戦において散々目にしてきた光景に、特に意識することはなかったがミアはその一瞬を見逃さなかった。砲弾は敵船に直撃し爆発する。そう思われたが、着弾後の爆煙が晴れてみると、海賊船には“その砲撃“による損壊はなく、元からあった損壊跡が形を変えただけだったのだ。
「何だッ・・・アレは!?」
つまり、その海賊船は砲撃によるダメージを一切受けていなかったのだ。慌てて他の海賊船の様子を観察するミアだったが結果は同じく、派手な爆発の演出や煙は出ていようと、船に砲弾が命中していることはなかった。
だが、そのことに船員達が気付くのも時間の問題だったようだ。何発撃ち込んでも沈むことのない、ボロボロの海賊船。次弾の装填に忙しなく動いていた船員も、漸くその異常な様子に、疑問を持ち始めた。
「こんなに命中しているのに、何故敵の船は沈まない!?」
「砲弾は命中している筈だ・・・船も損壊している。だが・・・」
「船の状態も、こっちとは比べものにならないのに・・・!」
ざわめき出すチン・シー海賊団。その様子を、ハオランの到着を待ちながら眺めるロロネーは、霧の向こう側で滑稽だと言わんばかりに笑みを溢していた。
「ハハハッ!撃て撃てぇぇ、間抜け共ぉ!!そうやって物資を消耗するがいい。テメェらの攻撃が当たることはねぇがなぁ!」
こちらの攻撃が当たっているように見えていただけで、今まで一切ダメージを与えられていない異様な光景に、ミアは混乱しながらもそれが嘘か真か確かめようと、海賊船の狙撃を試みる。
しかし結果は同じ。属性を込めた弾丸は海賊船に命中したところで、凍結弾なら命中箇所を多少凍らせる程度で、銃痕のような穴が新しく現れるだけだった。
「これがロロネー海賊団の不滅の海賊船、“ゴーストシップ“だ」
前線の中でもあまり被害の出ていない船を探し、船員の者に合図を送る。餞別として受け取った物資の中には、チン・シー海賊団の仲間であることを知らせる信号弾も含まれていた。
敵軍の目につかぬよう、威力を調整して銃で信号弾を目的の船の上空に打ち出す。煙の量はミアによって抑えられていたが、赤い煙が海面より打ち上がり、乗り合わせている船員の目に止まる。
煙の発生源には、彼らの知らぬ人物であるミアの姿があった。だが彼女の打ち出した信号弾は、シュユーによって作られた特殊なもので、彼らには彼女がチン・シー或いは、シュユー達幹部勢に認められた者であることを知り、直ぐに船へと招き入れる。
「アンタらの主人に頼んで、様子を見に来た者だ。中央で挟撃した筈のロロネーの海賊船が現れたと言う報告が入った」
「あぁ、俺らにも何が何やら・・・。中央にあれだけの船団があったんだ、あれが敵の全勢力だと思ってたのによぉ・・・。一体どうなってやがるんだ」
船員の言っていることは、何もおかしな事ではない。それだけの数の海賊船が、チン・シー海賊団の幻影を取り囲み、総攻撃を仕掛けていた。普通なら全勢力を集めていたと思うものだ。
だが、ミアには一つ引っ掛かることがあったのだ。それは、ロロネー海賊団の船の動きにある。獲物を取り囲み、逃げ場のない状況に追い込んだとはいえ、海賊船をそのまま敵船へ突っ込ませるようなことをするだろうか。
生きた船員の乗っていないロロネーの海賊船であるならば、或いはそういった戦法を取るかもしれないが、その都度船を破損し失っていては新たな船の調達に、金や時間がかかるというものだろう。
それもロロネーならではの戦法と、割り切っていいものなのだろうか。惜しげもなく財産や物資を投げ打つ時というものは、どういった時か。
例えるなら、ゲームなどでたまに見かけるスキル、“銭投げ“が該当するのではないだろうか。金銭に余裕のない時には、使うのを躊躇われるスキルだが、金銭に余裕の出てくる終盤や、ラストダンジョンとなれば惜しみなく使える気になるもの。
これは、シンのクラスであるアサシンの投擲でも、同じことが言えるだろう。投げれば失われるアイテムを、何の気兼ねもなく投げられる時の心境とは、心や準備に“余裕“がある時ではないだろうか。
「高台で援護する。狙撃に適した場所へ案内してくれないか?」
それを確かめる為にも、先ずは前線へ赴いた目的でもあるロロネー海賊団の動向を伺う必要がある。招き入れてくれた船員と共に、ミアはそのままこの船で一番見晴らしの良いポイントへ案内してもらう。
ボードを抱え、案内人の後を追い階段を上がっていくミア。本船で周囲の警戒に当たっていた時と同様、甲板に出ると案内をしてくれた船員はマストの方を指差す。登り方を知っているミアは、ここまででいいと案内を断り自分の持ち場に戻ってくれと言い渡す。
狙撃ポイントに着いたミアは、ライフル銃の組み立てを始め、スコープでロロネーの船団を覗き込む。海賊船の構造上は、中央に集まっていた海賊船とほとんど変わらない。損壊箇所や砲台の数や設計に、見た目上の異変は感じられない。
チン・シー軍の船団に飛んでいく亡霊を、次々にライフルで狙撃していくミア。通常弾とは異なり、属性を込めた弾薬を使っている為、一撃でその魂を冥府へと送り返す。
するとそこで、ミアは異様な雰囲気を醸し出すロロネーの船団に隠された、ある現象を目撃する。狙撃を行う最中、味方の軍が放った砲撃が敵の海賊船にぶつかろうとする瞬間を捉えた。
海上戦において散々目にしてきた光景に、特に意識することはなかったがミアはその一瞬を見逃さなかった。砲弾は敵船に直撃し爆発する。そう思われたが、着弾後の爆煙が晴れてみると、海賊船には“その砲撃“による損壊はなく、元からあった損壊跡が形を変えただけだったのだ。
「何だッ・・・アレは!?」
つまり、その海賊船は砲撃によるダメージを一切受けていなかったのだ。慌てて他の海賊船の様子を観察するミアだったが結果は同じく、派手な爆発の演出や煙は出ていようと、船に砲弾が命中していることはなかった。
だが、そのことに船員達が気付くのも時間の問題だったようだ。何発撃ち込んでも沈むことのない、ボロボロの海賊船。次弾の装填に忙しなく動いていた船員も、漸くその異常な様子に、疑問を持ち始めた。
「こんなに命中しているのに、何故敵の船は沈まない!?」
「砲弾は命中している筈だ・・・船も損壊している。だが・・・」
「船の状態も、こっちとは比べものにならないのに・・・!」
ざわめき出すチン・シー海賊団。その様子を、ハオランの到着を待ちながら眺めるロロネーは、霧の向こう側で滑稽だと言わんばかりに笑みを溢していた。
「ハハハッ!撃て撃てぇぇ、間抜け共ぉ!!そうやって物資を消耗するがいい。テメェらの攻撃が当たることはねぇがなぁ!」
こちらの攻撃が当たっているように見えていただけで、今まで一切ダメージを与えられていない異様な光景に、ミアは混乱しながらもそれが嘘か真か確かめようと、海賊船の狙撃を試みる。
しかし結果は同じ。属性を込めた弾丸は海賊船に命中したところで、凍結弾なら命中箇所を多少凍らせる程度で、銃痕のような穴が新しく現れるだけだった。
「これがロロネー海賊団の不滅の海賊船、“ゴーストシップ“だ」
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