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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
グレイ・ダージリン(104)
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「お待たせ致しましたわ、マリー様。私にお話があるとか……?」
一刻程後、女王リュサイは騎士ドナルドを伴って喫茶室に姿を現した。
マリーは彼女達を迎え入れ、「どうぞお掛けになって下さいまし」と席を勧める。
では……とソファーに腰掛けた女王リュサイ。騎士ドナルドがその背後に控えた。
香り高いお茶が振る舞われた後、マリーが本題を切り出す。
「実は、リュシー様に提案がありますの。エスパーニャ王国とカレドニア王国の同盟を結ばれては、と」
「エスパーニャ王国と?」
「ええ。エスパーニャ王国の交易船は度々海賊に襲われています。アルビオン王国が海賊を雇ってそうさせているのですわ」
聖女としての能力で確かめたので間違いはありません、とマリー。
それまで黙っていた騎士ドナルドが発言を求める。
「エスパーニャ王国と我がカレドニア王国とで挟み撃ちに、ということでしょうか」
「話が早くて助かりますわ。幸い、レアンドロ殿下がこちらにいらっしゃっておりますし。私が仲介すれば、同盟は成ると思うんですの」
自信たっぷりの発言に、女王リュサイと騎士ドナルドは顔を見合わせる。
「エスパーニャ王国との同盟は、申し入れてもなかなか受け入れて貰えないと叔父様が仰られていました。マリー様が仲介して下さるのは嬉しいことですわ」
「有難いお話ですが、エスパーニャ王国は受けるでしょうか? 幾ら何でも、同盟という国家間のこと、レアンドロ殿下は聖女様の言われるとおりに動いて下さるのでしょうか?」
――凄く有難いけれど大丈夫だろうか。
そんな期待と不安が綯交ぜになったような二人。
マリーは目を細めると、扇をパラリと開いた。
「ああ、それは大丈夫ですわ。レアンドロ殿下は信仰篤く、賢い方。共通の敵を持つ両国の同盟の意義を分かって下さると思いますわ。私が場を設けて立ち合い、殿下にそれをお伝えするつもりですの」
レアンドロ王子が訪れたのは、その次の日のことだった。
***
ホセ子爵を伴って現れたレアンドロ王子。
マリーは女王リュサイ達を交え、喫茶室でお茶会を開く。
簡単な挨拶を交わした後、「リシィ様は御一緒ではないのですか?」と訊ねた女王に、レアンドロ王子は「彼女はつい最近祖国から使いの者がやってきたそうですが――その後は何故か姿を見ていませんね」と首を傾げている。
「ご病気? お会いしに行くべきかしら?」
心配そうな女王リュサイ。数十秒後、窓の外でカラスが鳴いた。
「……ご病気ではないようですわ。ただ、お元気がないみたいですわね」
「まあ」
「使いの者から気落ちするような話を聞いたのかも知れませんね」
レアンドロ王子の言葉に、手紙を書こうという話をする。
と、マリーが思い出したように「気落ちするようなお話と言えば、」と切り出した。
「レアンドロ殿下。気になることを耳にしましたの。エスパーニャの商船が海賊に悩まされているとか……太陽神によれば、裏でアルビオン王国が糸を引いているそうですわ」
酷い話ですわよね、と悲し気な表情を作るマリー。
レアンドロ王子は「な、何と!」と驚愕し、ホセ子爵は「やはりそうでしたか」と苦々しい表情を浮かべる。
「そこで私は考えましたの。カレドニア王国と同盟を結ばれては、と。カレドニア王国のリュサイ女王陛下にとっても、アルビオンの好色王は不倶戴天の敵だそうです。それに……かの王は聖女たる私の身柄を狙っているとか。私、恐ろしくて……」
体を掻き抱きながら怯えて見せるマリーに、レアンドロ王子は庇護欲を掻きたてられたようだった。
「何と……道理で海賊のことで取り締まるよう苦情を申し入れても、一向に被害が減らぬどころか増える訳だ。そうなれば確かにカレドニア王国との同盟は我が国にとっても意義がある。ホセ、そなたはどう思う?」
「アルビオン王国が海賊を嗾けてきているのであれば、反対する理由はございません。しかしそれには裏付けが必要です」
いかな聖女の言葉であろうとも、飽くまでも冷静なホセ子爵。マリーは裏付けならばありますわ! と声を上げる。
「レアンドロ殿下。殿下は無敵艦隊の主と伺いました。海賊達を拿捕して証拠を掴めば良いのですわ。 太陽神はこう仰せになりましたの。『アルビオンの海賊、ヒューズ・ドレイクがアルビオン王の私掠許可証を所持している』と。艦隊で海賊達を駆逐し、私掠許可証を手に入れればアルビオン王に言い訳は出来ませんわ。
神の教えを失ったアルビオンに、再び神の恩寵を齎す為に、どうか殿下のお力添えを頂けないでしょうか。これはグレイには出来ぬことなのです」
マリーがちらりとこちらを見る。
レアンドロ王子はほう、と優越感を帯びた眼差しを向けて来た。
僕は小さく「そうですね。悔しいですが……武勇のない身には、流石に海賊退治は私には出来ません」と口にして項垂れてみせる。
この時の僕の目には――レアンドロ王子が仕掛けられた罠に疑問すら持たず、むしろ前のめりでかかっていく憐れで馬鹿な鳥に見えて仕方が無かった。怒る気はすっかり失せていたのだった。
僕のそんな態度が諦めた負け犬だと思われたかどうかは定かではないが、レアンドロ王子の笑い声が喫茶室に響き渡る。
「成程! しかし海賊退治となれば、私も命を懸けねばなりません。神はその功績をどれ程のものとして下さるのでしょうか」
「そうですわね……海賊退治が終われば、功績はグレイのそれを超えることになりますわ。後は――神の難問を残すのみとなります」
「ほう! 分かりました。必ずや、海賊退治を成し遂げて、難問にも答えて見せましょう。その難問は、もう決まっているのでしょうか。時間が惜しいのです。先に教えて頂くことは出来ますか?」
「勿論ですわ。紙に記して出立の日にお渡しいたしましょう」
その後、無事に女王リュサイとレアンドロ王子の間で同盟の約束が交わされた。聖女であるマリーの立ち合いであり、このことは教会を通じて公にされることになる。
そして、レアンドロ王子の帰国の日。
見送るマリーは、その難問の紙を手渡しながら、それに正しく答えられるまでは会うことは叶わない、太陽神が許さないと伝えている。
中身を改めたレアンドロ王子は、世界中の学者をかき集めてでも必ず答えを出してみせると言って帰って行った。僕も見せて貰ったけれど、学者なら解けそうな感じの数学の証明問題。
数学が得意なヤンが興味深そうに頑張れば出来そうだと言って書き写していく。
本当に大丈夫なのかな――そう不安が心を過ったのも束の間。
「解明出来るといいわねぇ、私達が生きている間に」
マリーの前世で四百年かかった証明問題だと聞いて、僕は素っ頓狂な声を上げた。
だから大船に乗った気持ちで居てね……って、本当なのそれ!?
一刻程後、女王リュサイは騎士ドナルドを伴って喫茶室に姿を現した。
マリーは彼女達を迎え入れ、「どうぞお掛けになって下さいまし」と席を勧める。
では……とソファーに腰掛けた女王リュサイ。騎士ドナルドがその背後に控えた。
香り高いお茶が振る舞われた後、マリーが本題を切り出す。
「実は、リュシー様に提案がありますの。エスパーニャ王国とカレドニア王国の同盟を結ばれては、と」
「エスパーニャ王国と?」
「ええ。エスパーニャ王国の交易船は度々海賊に襲われています。アルビオン王国が海賊を雇ってそうさせているのですわ」
聖女としての能力で確かめたので間違いはありません、とマリー。
それまで黙っていた騎士ドナルドが発言を求める。
「エスパーニャ王国と我がカレドニア王国とで挟み撃ちに、ということでしょうか」
「話が早くて助かりますわ。幸い、レアンドロ殿下がこちらにいらっしゃっておりますし。私が仲介すれば、同盟は成ると思うんですの」
自信たっぷりの発言に、女王リュサイと騎士ドナルドは顔を見合わせる。
「エスパーニャ王国との同盟は、申し入れてもなかなか受け入れて貰えないと叔父様が仰られていました。マリー様が仲介して下さるのは嬉しいことですわ」
「有難いお話ですが、エスパーニャ王国は受けるでしょうか? 幾ら何でも、同盟という国家間のこと、レアンドロ殿下は聖女様の言われるとおりに動いて下さるのでしょうか?」
――凄く有難いけれど大丈夫だろうか。
そんな期待と不安が綯交ぜになったような二人。
マリーは目を細めると、扇をパラリと開いた。
「ああ、それは大丈夫ですわ。レアンドロ殿下は信仰篤く、賢い方。共通の敵を持つ両国の同盟の意義を分かって下さると思いますわ。私が場を設けて立ち合い、殿下にそれをお伝えするつもりですの」
レアンドロ王子が訪れたのは、その次の日のことだった。
***
ホセ子爵を伴って現れたレアンドロ王子。
マリーは女王リュサイ達を交え、喫茶室でお茶会を開く。
簡単な挨拶を交わした後、「リシィ様は御一緒ではないのですか?」と訊ねた女王に、レアンドロ王子は「彼女はつい最近祖国から使いの者がやってきたそうですが――その後は何故か姿を見ていませんね」と首を傾げている。
「ご病気? お会いしに行くべきかしら?」
心配そうな女王リュサイ。数十秒後、窓の外でカラスが鳴いた。
「……ご病気ではないようですわ。ただ、お元気がないみたいですわね」
「まあ」
「使いの者から気落ちするような話を聞いたのかも知れませんね」
レアンドロ王子の言葉に、手紙を書こうという話をする。
と、マリーが思い出したように「気落ちするようなお話と言えば、」と切り出した。
「レアンドロ殿下。気になることを耳にしましたの。エスパーニャの商船が海賊に悩まされているとか……太陽神によれば、裏でアルビオン王国が糸を引いているそうですわ」
酷い話ですわよね、と悲し気な表情を作るマリー。
レアンドロ王子は「な、何と!」と驚愕し、ホセ子爵は「やはりそうでしたか」と苦々しい表情を浮かべる。
「そこで私は考えましたの。カレドニア王国と同盟を結ばれては、と。カレドニア王国のリュサイ女王陛下にとっても、アルビオンの好色王は不倶戴天の敵だそうです。それに……かの王は聖女たる私の身柄を狙っているとか。私、恐ろしくて……」
体を掻き抱きながら怯えて見せるマリーに、レアンドロ王子は庇護欲を掻きたてられたようだった。
「何と……道理で海賊のことで取り締まるよう苦情を申し入れても、一向に被害が減らぬどころか増える訳だ。そうなれば確かにカレドニア王国との同盟は我が国にとっても意義がある。ホセ、そなたはどう思う?」
「アルビオン王国が海賊を嗾けてきているのであれば、反対する理由はございません。しかしそれには裏付けが必要です」
いかな聖女の言葉であろうとも、飽くまでも冷静なホセ子爵。マリーは裏付けならばありますわ! と声を上げる。
「レアンドロ殿下。殿下は無敵艦隊の主と伺いました。海賊達を拿捕して証拠を掴めば良いのですわ。 太陽神はこう仰せになりましたの。『アルビオンの海賊、ヒューズ・ドレイクがアルビオン王の私掠許可証を所持している』と。艦隊で海賊達を駆逐し、私掠許可証を手に入れればアルビオン王に言い訳は出来ませんわ。
神の教えを失ったアルビオンに、再び神の恩寵を齎す為に、どうか殿下のお力添えを頂けないでしょうか。これはグレイには出来ぬことなのです」
マリーがちらりとこちらを見る。
レアンドロ王子はほう、と優越感を帯びた眼差しを向けて来た。
僕は小さく「そうですね。悔しいですが……武勇のない身には、流石に海賊退治は私には出来ません」と口にして項垂れてみせる。
この時の僕の目には――レアンドロ王子が仕掛けられた罠に疑問すら持たず、むしろ前のめりでかかっていく憐れで馬鹿な鳥に見えて仕方が無かった。怒る気はすっかり失せていたのだった。
僕のそんな態度が諦めた負け犬だと思われたかどうかは定かではないが、レアンドロ王子の笑い声が喫茶室に響き渡る。
「成程! しかし海賊退治となれば、私も命を懸けねばなりません。神はその功績をどれ程のものとして下さるのでしょうか」
「そうですわね……海賊退治が終われば、功績はグレイのそれを超えることになりますわ。後は――神の難問を残すのみとなります」
「ほう! 分かりました。必ずや、海賊退治を成し遂げて、難問にも答えて見せましょう。その難問は、もう決まっているのでしょうか。時間が惜しいのです。先に教えて頂くことは出来ますか?」
「勿論ですわ。紙に記して出立の日にお渡しいたしましょう」
その後、無事に女王リュサイとレアンドロ王子の間で同盟の約束が交わされた。聖女であるマリーの立ち合いであり、このことは教会を通じて公にされることになる。
そして、レアンドロ王子の帰国の日。
見送るマリーは、その難問の紙を手渡しながら、それに正しく答えられるまでは会うことは叶わない、太陽神が許さないと伝えている。
中身を改めたレアンドロ王子は、世界中の学者をかき集めてでも必ず答えを出してみせると言って帰って行った。僕も見せて貰ったけれど、学者なら解けそうな感じの数学の証明問題。
数学が得意なヤンが興味深そうに頑張れば出来そうだと言って書き写していく。
本当に大丈夫なのかな――そう不安が心を過ったのも束の間。
「解明出来るといいわねぇ、私達が生きている間に」
マリーの前世で四百年かかった証明問題だと聞いて、僕は素っ頓狂な声を上げた。
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