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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
某おかめ印のアレ。
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文官採用面接が終わり、横領犯共及び紛れ込んでいたスパイやなんかをドナドナし、尋問の上で牢にぶち込み片付けた後。
「やれやれ、やっと帰られましたよ。正直なところ、もう二度とお会いしたくありませんね」
アルバート第一王子がそんなことを言いながらひょっこりと戻って来た。
いつものポーカーフェイスも隠す気もなくげっそりとした顔である。何でも、あのゴリラ野郎は船に乗るまでも時間稼ぎなのかウホウホごねまくったらしい。
「往生際の悪さにほとほとくたびれました。お陰で私も『オコノミ』を食べられたのは良かったですけどね……」
『黒鶏亭』という所で食べたのですが、とても美味しかったです。流石に八本足入りは受け付けませんでしたが。
そう言って肩を竦めるアルバート王子。
「それにしても、色々面白い話を聞けて良かったと思います。マリーが作ったというあのソースは素晴らしいものでしたしね。王宮でも食べられたら、と思った程ですよ」
恐らくピエールに聞いたのだろうが……どんな話を聞いたのだろう。
その時、グレイの目がキラリと光ったような気がした。
「アルバート殿下。そんなにお気に召して頂けたのならば、当家より人を王宮に派遣してオコノミ作りを宮廷料理人に教えることも可能です。いかがでしょう、庭園で気軽にオコノミを楽しむ昼食会などをなされては?」
突然のグレイの申し出に、アルバート王子は若干戸惑っているようだった。
「門外不出の秘伝のソースと伺いましたが、良いのですか?」
頼み込んだのですがどうしても売っては貰えなかったのですよ、という。まあ確かに相手が相手だし、今はお墨付きを与えた上でソースも一から作らせているしなぁ。売る程の量は無い。
「ソースも定期的に仕入れる契約を結んで下さるのであれば融通可能です。殿下がお望みであればお売り致しましょう。丁度、アーダム皇子の妹皇女殿下がご滞在だと伺っております。カレドニアの女王陛下もいらっしゃることですし、殿下が召し上がって来た美食として話の種にはなるかと」
お許しを頂けるならば急がせますし、費用等も最初はこちらで全て手配致します。殿下は許可を下さるだけで良いのです。
微笑んで手揉みせんばかりのグレイ。
あ、商人や。商人の顔をしてはる。
まあ彼が考えていることは精神感応使うまでもなく何となく理解出来るので、私は微笑みながら頷いていた。
第一王子殿下が喜ばれた美食として、社交界にオコノミが広まるのだ。これ以上の宣伝はない。
アルバート王子はそうして下さるのであれば、と礼を言って休むべく客室へ戻って行った。
残された私達。
父サイモンがじろりとグレイを見た。
「……そう言えば、アルジャヴリヨンにも店を出して欲しいと民から要望があったのだが?」
「ええ、義父様。勿論そちらも忘れてはおりません。王都への出店も同時に行いましょう」
グレイはホクホク顔をしていた。
話がトントン拍子に進んで行く。私はふと思い出して口を開いた。
「であれば、いっそ株式会社にして、ソースを作る工場を作った方が良さそうね。
オコノミを売るのは人に任せて、私達は契約書を用意してソースを売る。どうかしら?」
オコノミが普及すればする程ソースが売れるというやり方である。
前世のそういう商売を思い出しながら言うと、グレイはそういう商売もあったんだね、と感心していた。
スレイマンとヤンを呼んで、デーツやソヤの輸入量を増やす手配を頼む。私は手に入りやすい材料で作れるソースレシピ等を幾つかピックアップして書き出すことにした。
***
引き続き、武官採用試験が行われたのだが。
文官採用試験の話をギャヴィンから聞いたのか、何とアルバート王子も興味を示して見学を申し出てきた。
クロヴラン・ピュトロワとパトリュック・カルカイムには早速領政に携わって貰っている。新たに採用された文官達に、ギャヴィンはもう少し引継ぎをしてくれるということだったのでアルバート王子の滞在延期が決定。
筆記試験の後、数日間かけた勝ち抜き戦のトーナメント形式の実技試験が行われた。
アルバート第一王子殿下もご臨席、という触れ込みに、彼らはダージリン伯爵家以外にも王族に取り立てて貰える可能性にいっそう張り切っていた。
結果。
「聖女様、そしてヨハン卿、シュテファン卿。このロイジウス・ウーファー、戻って参りました!」
勝ち抜いて優勝に輝いたのは、修道騎士ロイジウス・ウーファーだった。
「教皇猊下には聖女様にお仕えするのならば好きにしても良い、と温かいお言葉を賜っております」
戻って来た時、試験の噂を聞いて急ぎ準備をして採用試験の申し込みを済ませたらしい。
筆記試験の結果も優秀だった。
成程、ロイジウスならば表向きの軍人として適任だろう。
「やれやれ、やっと帰られましたよ。正直なところ、もう二度とお会いしたくありませんね」
アルバート第一王子がそんなことを言いながらひょっこりと戻って来た。
いつものポーカーフェイスも隠す気もなくげっそりとした顔である。何でも、あのゴリラ野郎は船に乗るまでも時間稼ぎなのかウホウホごねまくったらしい。
「往生際の悪さにほとほとくたびれました。お陰で私も『オコノミ』を食べられたのは良かったですけどね……」
『黒鶏亭』という所で食べたのですが、とても美味しかったです。流石に八本足入りは受け付けませんでしたが。
そう言って肩を竦めるアルバート王子。
「それにしても、色々面白い話を聞けて良かったと思います。マリーが作ったというあのソースは素晴らしいものでしたしね。王宮でも食べられたら、と思った程ですよ」
恐らくピエールに聞いたのだろうが……どんな話を聞いたのだろう。
その時、グレイの目がキラリと光ったような気がした。
「アルバート殿下。そんなにお気に召して頂けたのならば、当家より人を王宮に派遣してオコノミ作りを宮廷料理人に教えることも可能です。いかがでしょう、庭園で気軽にオコノミを楽しむ昼食会などをなされては?」
突然のグレイの申し出に、アルバート王子は若干戸惑っているようだった。
「門外不出の秘伝のソースと伺いましたが、良いのですか?」
頼み込んだのですがどうしても売っては貰えなかったのですよ、という。まあ確かに相手が相手だし、今はお墨付きを与えた上でソースも一から作らせているしなぁ。売る程の量は無い。
「ソースも定期的に仕入れる契約を結んで下さるのであれば融通可能です。殿下がお望みであればお売り致しましょう。丁度、アーダム皇子の妹皇女殿下がご滞在だと伺っております。カレドニアの女王陛下もいらっしゃることですし、殿下が召し上がって来た美食として話の種にはなるかと」
お許しを頂けるならば急がせますし、費用等も最初はこちらで全て手配致します。殿下は許可を下さるだけで良いのです。
微笑んで手揉みせんばかりのグレイ。
あ、商人や。商人の顔をしてはる。
まあ彼が考えていることは精神感応使うまでもなく何となく理解出来るので、私は微笑みながら頷いていた。
第一王子殿下が喜ばれた美食として、社交界にオコノミが広まるのだ。これ以上の宣伝はない。
アルバート王子はそうして下さるのであれば、と礼を言って休むべく客室へ戻って行った。
残された私達。
父サイモンがじろりとグレイを見た。
「……そう言えば、アルジャヴリヨンにも店を出して欲しいと民から要望があったのだが?」
「ええ、義父様。勿論そちらも忘れてはおりません。王都への出店も同時に行いましょう」
グレイはホクホク顔をしていた。
話がトントン拍子に進んで行く。私はふと思い出して口を開いた。
「であれば、いっそ株式会社にして、ソースを作る工場を作った方が良さそうね。
オコノミを売るのは人に任せて、私達は契約書を用意してソースを売る。どうかしら?」
オコノミが普及すればする程ソースが売れるというやり方である。
前世のそういう商売を思い出しながら言うと、グレイはそういう商売もあったんだね、と感心していた。
スレイマンとヤンを呼んで、デーツやソヤの輸入量を増やす手配を頼む。私は手に入りやすい材料で作れるソースレシピ等を幾つかピックアップして書き出すことにした。
***
引き続き、武官採用試験が行われたのだが。
文官採用試験の話をギャヴィンから聞いたのか、何とアルバート王子も興味を示して見学を申し出てきた。
クロヴラン・ピュトロワとパトリュック・カルカイムには早速領政に携わって貰っている。新たに採用された文官達に、ギャヴィンはもう少し引継ぎをしてくれるということだったのでアルバート王子の滞在延期が決定。
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アルバート第一王子殿下もご臨席、という触れ込みに、彼らはダージリン伯爵家以外にも王族に取り立てて貰える可能性にいっそう張り切っていた。
結果。
「聖女様、そしてヨハン卿、シュテファン卿。このロイジウス・ウーファー、戻って参りました!」
勝ち抜いて優勝に輝いたのは、修道騎士ロイジウス・ウーファーだった。
「教皇猊下には聖女様にお仕えするのならば好きにしても良い、と温かいお言葉を賜っております」
戻って来た時、試験の噂を聞いて急ぎ準備をして採用試験の申し込みを済ませたらしい。
筆記試験の結果も優秀だった。
成程、ロイジウスならば表向きの軍人として適任だろう。
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