貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】

グレイ・ダージリン(44)

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 鳥ノ庄の城で歓待を受けた明くる日、僕達は金鉱山とダイヤモンド鉱山の場所の特定と採掘を開始する具体的な場所を選定する為に鳥ノ庄を出る事になった。ただし、アルトガルとエヴァン修道士は機密保持の為に留守番となる。
 マリーが烏のリーダーに「二人だけじゃ心細いだろうからついていてあげて」と彼らに託す。
 何かあればリーダーを飛ばすようにとの意味もあるのだろう。

 「それにしても、山の中なのにこんなに大きな街で賑わっているなんて思いもよりませんでしたよ。もっと、こう……秘密主義かと思っていました」

 馬の庄を思い出しながらそう言うと、マリーも頷く。

 「そうよね、馬の庄より段違いに発展しているから吃驚したわ」

 「鳥ノ庄は銀山採掘で生計を立てておりますし、その分潤う為豊かで一番発展しているのですわ」

 隠密騎士の里の中心的な街なんですの、と説明する侍女エロイーズ。

 「近くの庄で生産された品物の取引場所ともなっていますね。獅子ノ庄では銀細工を請け負っておりますから、結構往来はございますよ」

 「近くの蛇ノ庄では薬を作ってましてー、その薬の問屋もありますねー」

 サリーナとカールが補足説明を加えてくれた。
 価値あるものが生産される場所は発展する。そんな当たり前の事を失念していたと思う。

 「しかしそれでどうやって機密性を保っているんだろう?」

 「ああ、それは一般の人間が通る道とそうでない道を別々に管理しているのですよ」

 開放しているのは鳥ノ庄や南のジュリヴァの港に近い龍ノ庄位だとサリーナは言う。
 誘い込んで潰す、というやり方なんですよねー、とカールが薄ら寒い事をにこやかに口にした。

 そんなやり取りをしながら進む僕達。
 流石に高山地帯の中でも険しい山々の連なる土地を行くのは大変だったけれど、マリーの能力のお蔭で調査の時間がかからないだけマシなのだろう。
 彼女は鷲のマイティ―を飛ばしてその目を借り、更に空から鉱山を透視する方法を取った。一見寝転がっているだけだけれど、二重に力を使うことでかなり集中力を要し、また精神的疲労も大きいらしい。
 調査は一日で終わった。サイモン様達も採掘計画の目途が立ったようだ。

 次の日になって、マリーは温泉を探しに行くと言いだした。

 「今日しか温泉探しに行けないし!」

 僕達は鳥ノ庄を明日出発する事になる。急がなければならないだろう。
 サイモン様とジェロック卿にお伺いを立てると、今度は留守番をしていたアルトガルとエヴァン修道士も連れて行っていいとの事。僕も温泉計画に噛んでいるから行かない訳にはいかない。

 街を出た僕達は、川沿いを進んで行った。マリーが草原に逸れる道を行くように言い、その先に見つけたのは森の入り口にある奇妙な朽ちた遺跡のような場所だった。

 マリーが透視した結果、それは古代帝国に作られたと思われる浴場である事が判明する。
 彼女が変な声を出した時は何事かと思って僕も吃驚したけれど、ああいう凄い光景を見てしまったのなら無理もない。
 それにしても古代帝国は風紀が乱れていたと習った事があったけれど、本当にそうだと思う。
 僕達男性陣は気まずい微妙な雰囲気になったけれど、何故かサリーナとエロイーズはどこか嬉しそうにしていたような……深く考えたら負けかも知れない。

 「熱水脈が移動してしまっているわ。それでここが枯れてしまったから放棄されたのね」

 そう言ってマリーは森の中を進んで行く。川に突き当たった。
 鷲のマイティ―を使った捜索の結果、マリーはもう少し下流に行くと言いだした。森を引き返し、馬に乗って迂回するように下流の河原へ向かう。

 マリーがいきなり靴を脱いでズボンをまくり上げると、川に入って石を脇にどかして積み始めた。サリーナが慌てて引き留め、ヨハン達に任せるようにと言う。アルトガルも混じってマリーの言う通りにすると、本当に熱水が湧き出てきたようだ。
 思わず近付いて手を差し入れると、確かに温かい。
 そう言えばアヤスラニ帝国に野外の浴場があったなぁと思い出していると、マリーが今度は垣根を作るようにと命じた。裸になって温泉を堪能したいらしい。

 ――裸になるだって!?

 ありえない。ぎょっとして全員で必死に止めるも、マリーは一番風呂は自分が! と譲らない。

 「この為にお風呂の用意までしてきたのよ!」

 「駄目だよ、マリー! せめて、ここに温泉用の建物を作るまで待ってよ」

 「グレイ様の仰るとおりですわ、一番風呂が必要ならここには誰にも近寄らぬように命じておきますから!」

 「建物が立つまで我慢する代わり、せめて足だけでも駄目なの!? サリーナとエロイーズも付き合って頂戴よ!」

 そんなやり取りの末、結局足だけ浸かる事を譲歩し、その場は収める事になった。勿論温泉の建物が出来上がった後の一番乗りはマリーと言う約束で。

 どっと疲れた……。

 気持ちいい~、と歌うように言うマリーの声を聞きながら、僕は少し離れた場所にある岩場で空を仰いだのだった。
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