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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
グレイ・ルフナー(98)
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それから、マリーとサングマ教皇猊下のとの間でこの場をどうするかとのやり取りがあった後。
鳥達が勝手気ままに飛び回る中、僕が聖女の夫となる事、そしてサングマ教皇猊下がこの結婚を祝福される事が告げられた。
居並ぶ高位聖職者達からも特に異論も出ず、僕は呆気ない程名誉枢機卿の地位を頂く事が出来たのだった。
教皇猊下は後日聖女のお披露目を仕切り直したかったみたいだったけど、マリーはそれを断っていた。
それよりも、参列した信徒達の為に温かい食事を振舞って欲しいと言い、それは叶えられる事となる。
儀式が終わり、僕達は着替えて中庭へ向かう。マリーは僕とヴェスカルと手を繋ぎ、鳥達も大人しくそれについて来た。
中庭では既にシチューが振舞われていた。聖女様も如何ですかと勧められたけれど、彼女は一番最後に貰うと言って断っていた。
その様子を見た周囲の人々は「『皆に行き渡るようにと敢えてそのように言われたのだ、何と慈悲深い……』」と感動したように囁いている。
マリーはそんな人々に気付く様子も無く、真っ先に前脚後ろ脚に命じて、用意されていた野菜や肉くず、残飯等を少し離れた所に運ばせ鳥達に与えていた。
一斉に群がる鳥達。暫く見ていると、腹が膨れたものから満足そうに一羽、また一羽と飛び去って行く。
最後の一羽が飛び去った後、マリーはやっとシチューを受け取った。僕もそれに倣う。
人々が、じっとマリーを見詰めていた。それに気付いた彼女は首を傾げる。
「まあ、皆様どうされましたの?」
枢機卿の一人が代表して口を開いた。
「『聖女様、ここに居る者達は皆、聖女様の奇跡を目の当たりにし、また聖女再臨の場に居合わせるという栄誉に酔いしれております。つきましては、聖女様に是非お言葉を賜りたく』」
マリーは分かりましたわ、と言って皿をサリーナに預けると、皆を見渡した。
「ああ、お食事中の方はそのままで。どうぞ気軽にお聞きくださいまし。
皆様、今日のこの聖女降誕節に集って頂けました事、そして共に祝う事が出来た事を――皆様と、私をこの世にお遣わしになられた御方に感謝致しますわ。
一つだけ皆様に知っていて欲しい事があります。聖女再臨は必ずしも喜ばしい事ではないという事。
何故なら、聖女が現れるという事は、聖女が必要とされる事態が迫っているという事に他ならないからです。
初代聖女の時もそうでした。
私は、神より授けられた知恵と力を使い、これから世界を襲い掛かる苦難から人々を出来る限り救い、神の栄光とする使命を帯びております。
今日のこの日、中央大聖堂にて私が神より授かった力を示し、神の実在を証明致しました。
叶う事ならば、その事を国を問わず、出来るだけ多くの人々に広めて頂ければ幸いに存じます。
ここには様々な国や地域からの方々がいらっしゃいます。しかし同じ鍋で作られたシチューを分け合って、共に食べています。
私は最後に頂きましたが、十分な量で、鍋にもまだ余る程ありました。
どんな試練や困難の中にあっても、奪い合う事無く、人々が分け合うという思いやりを忘れる事が無ければ不足が無くなります。
皆様の思いやりと優しさに感謝を捧げ、私の挨拶とさせて頂きます」
マリーが挨拶を終えて、優雅に淑女の礼を取ると、一拍の後、万雷の拍手が巻き起こった。
***
「さあ、頂きましょう」
お腹がペコペコなの、とマリーはにこやかに言って、食事を始めた。サングマ教皇猊下や枢機卿達に周囲を固められいるので、信徒達はこちらを気にしてはいるものの、声を掛けて来る者は居なかった。
と、その時。
「『あの……聖女様』」
意を決したように、一人の頭巾を目深に被った男が近付いて来た。警戒する僕達に、マリーが手を挙げて大丈夫だと制する。
カレル様が「『怪しい奴、顔を見せろ』」と言うと、男は素直に「『失礼します』」と断って頭巾を取り去る。
そこに現れた姿に僕はあっと息を呑んだ。僕と同じ、見事な赤毛。
膝をついて恭しく頭を下げた男は、静かに語り出した。
「『このように私は聖女様の夫君と同じ、赤毛なのです。この見た目で随分と苦労して生きてきました。
人々は、太陽神を裏切って争いの種となりえる火を盗んで人間に与えた火の神の色だと忌み嫌っております。
赤毛の方を夫に迎えられ、また神がお遣わしになられたという聖女様にお聞きしたい、火の神は本当に邪悪だったのですか?』」
言って、その男は救いを求め、また挑むようにマリーを見詰めた。
サングマ教皇猊下や聖職者達も含め、その場の人々は彼女がどう答えるのかを注視している。
マリーはゆっくりと周囲を見渡した。
「ここには様々な背景の方々が居られますわね。皆様にもお訊きしましょう。もし、火の神が人間に火を齎さなければ、どうなっていたと思いますか?」
彼女の問いに、一人の裕福そうな信徒が口を開いた。
「『僭越ながら……争いや不和が無く、太陽神のご加護の下で人々は平和に暮らしていたのではないでしょうか』」
「あら、火を使わない野の獣達は殺伐とした毎日を生きておりますわ。人も同じ世界に生きる以上、平和にとはいかないのではなくて?」
クスクスと笑うマリー。その信徒も、人々も困惑しているようだった。
彼女は匙でシチューを掬って一口食べる。
「とても美味しいシチューね」
そして、シチューの入った皿を皆に見せるように掲げる。
「火があれば、土から器を作り出す事が出来ますわ。それを使って食べ物を煮炊きする事で、生のまま肉や野菜を齧る必要も無くなり、お腹を壊したり老人子供が死ぬ事が少なくなりました。
寒い日には暖を取れるようになりましたし、鍛冶で包丁や鍋を作れるようにもなりましたわ。
私達がこのように美味しい料理を食べられるのは、火の神様のお蔭ですのよ」
そこで初めて、人々はあっと声を上げた。
皿を下ろしたマリーは続ける。
「火は扱いを間違えれば大惨事になる刃物のようなもの。
それを危ないからと人間から遠ざける太陽神様。危ないけれど人間の成長には必要だからと渡す火の神様。
どちらが正解という事ではなく、どちらも慈悲であり優しさなのです。
そこで改めて皆様に問いましょう。人間が誰かを火なり刃物なり――何でも良いですわ、神から齎された何かで傷つけたとしたら、その罪は神が被るべきなのでしょうか?」
「そ、それは……」
「私はそうは思いませんわ。物の分からない赤ん坊や幼子ならばまだしも、人々には分別が備わっております。罪はそれを犯した者に帰す、至極当たり前の事ではありませんか?
敢えて申し上げましょう。火を争い等に使った人間達の罪を、火の神様は背負わされているのですわ。
火の神様を忌み嫌う方には、どうぞ遠慮なく普段から生肉や生野菜を食らい、食器や金属も使わず、冬でも火を一切使わずにお過ごし下さいまし、と言いたいですわね」
最後はおどけたように締めくくると、マリーは赤毛の男の方を振り返った。
「エグバートさん、これで答えになったかしら?」
「『私の名前を……!? あ…ありがとうございます、聖女様!』」
エグバートと呼ばれた男は地に這いつくばるように感謝を捧げる。
マリーは優しく微笑んだ。
鳥達が勝手気ままに飛び回る中、僕が聖女の夫となる事、そしてサングマ教皇猊下がこの結婚を祝福される事が告げられた。
居並ぶ高位聖職者達からも特に異論も出ず、僕は呆気ない程名誉枢機卿の地位を頂く事が出来たのだった。
教皇猊下は後日聖女のお披露目を仕切り直したかったみたいだったけど、マリーはそれを断っていた。
それよりも、参列した信徒達の為に温かい食事を振舞って欲しいと言い、それは叶えられる事となる。
儀式が終わり、僕達は着替えて中庭へ向かう。マリーは僕とヴェスカルと手を繋ぎ、鳥達も大人しくそれについて来た。
中庭では既にシチューが振舞われていた。聖女様も如何ですかと勧められたけれど、彼女は一番最後に貰うと言って断っていた。
その様子を見た周囲の人々は「『皆に行き渡るようにと敢えてそのように言われたのだ、何と慈悲深い……』」と感動したように囁いている。
マリーはそんな人々に気付く様子も無く、真っ先に前脚後ろ脚に命じて、用意されていた野菜や肉くず、残飯等を少し離れた所に運ばせ鳥達に与えていた。
一斉に群がる鳥達。暫く見ていると、腹が膨れたものから満足そうに一羽、また一羽と飛び去って行く。
最後の一羽が飛び去った後、マリーはやっとシチューを受け取った。僕もそれに倣う。
人々が、じっとマリーを見詰めていた。それに気付いた彼女は首を傾げる。
「まあ、皆様どうされましたの?」
枢機卿の一人が代表して口を開いた。
「『聖女様、ここに居る者達は皆、聖女様の奇跡を目の当たりにし、また聖女再臨の場に居合わせるという栄誉に酔いしれております。つきましては、聖女様に是非お言葉を賜りたく』」
マリーは分かりましたわ、と言って皿をサリーナに預けると、皆を見渡した。
「ああ、お食事中の方はそのままで。どうぞ気軽にお聞きくださいまし。
皆様、今日のこの聖女降誕節に集って頂けました事、そして共に祝う事が出来た事を――皆様と、私をこの世にお遣わしになられた御方に感謝致しますわ。
一つだけ皆様に知っていて欲しい事があります。聖女再臨は必ずしも喜ばしい事ではないという事。
何故なら、聖女が現れるという事は、聖女が必要とされる事態が迫っているという事に他ならないからです。
初代聖女の時もそうでした。
私は、神より授けられた知恵と力を使い、これから世界を襲い掛かる苦難から人々を出来る限り救い、神の栄光とする使命を帯びております。
今日のこの日、中央大聖堂にて私が神より授かった力を示し、神の実在を証明致しました。
叶う事ならば、その事を国を問わず、出来るだけ多くの人々に広めて頂ければ幸いに存じます。
ここには様々な国や地域からの方々がいらっしゃいます。しかし同じ鍋で作られたシチューを分け合って、共に食べています。
私は最後に頂きましたが、十分な量で、鍋にもまだ余る程ありました。
どんな試練や困難の中にあっても、奪い合う事無く、人々が分け合うという思いやりを忘れる事が無ければ不足が無くなります。
皆様の思いやりと優しさに感謝を捧げ、私の挨拶とさせて頂きます」
マリーが挨拶を終えて、優雅に淑女の礼を取ると、一拍の後、万雷の拍手が巻き起こった。
***
「さあ、頂きましょう」
お腹がペコペコなの、とマリーはにこやかに言って、食事を始めた。サングマ教皇猊下や枢機卿達に周囲を固められいるので、信徒達はこちらを気にしてはいるものの、声を掛けて来る者は居なかった。
と、その時。
「『あの……聖女様』」
意を決したように、一人の頭巾を目深に被った男が近付いて来た。警戒する僕達に、マリーが手を挙げて大丈夫だと制する。
カレル様が「『怪しい奴、顔を見せろ』」と言うと、男は素直に「『失礼します』」と断って頭巾を取り去る。
そこに現れた姿に僕はあっと息を呑んだ。僕と同じ、見事な赤毛。
膝をついて恭しく頭を下げた男は、静かに語り出した。
「『このように私は聖女様の夫君と同じ、赤毛なのです。この見た目で随分と苦労して生きてきました。
人々は、太陽神を裏切って争いの種となりえる火を盗んで人間に与えた火の神の色だと忌み嫌っております。
赤毛の方を夫に迎えられ、また神がお遣わしになられたという聖女様にお聞きしたい、火の神は本当に邪悪だったのですか?』」
言って、その男は救いを求め、また挑むようにマリーを見詰めた。
サングマ教皇猊下や聖職者達も含め、その場の人々は彼女がどう答えるのかを注視している。
マリーはゆっくりと周囲を見渡した。
「ここには様々な背景の方々が居られますわね。皆様にもお訊きしましょう。もし、火の神が人間に火を齎さなければ、どうなっていたと思いますか?」
彼女の問いに、一人の裕福そうな信徒が口を開いた。
「『僭越ながら……争いや不和が無く、太陽神のご加護の下で人々は平和に暮らしていたのではないでしょうか』」
「あら、火を使わない野の獣達は殺伐とした毎日を生きておりますわ。人も同じ世界に生きる以上、平和にとはいかないのではなくて?」
クスクスと笑うマリー。その信徒も、人々も困惑しているようだった。
彼女は匙でシチューを掬って一口食べる。
「とても美味しいシチューね」
そして、シチューの入った皿を皆に見せるように掲げる。
「火があれば、土から器を作り出す事が出来ますわ。それを使って食べ物を煮炊きする事で、生のまま肉や野菜を齧る必要も無くなり、お腹を壊したり老人子供が死ぬ事が少なくなりました。
寒い日には暖を取れるようになりましたし、鍛冶で包丁や鍋を作れるようにもなりましたわ。
私達がこのように美味しい料理を食べられるのは、火の神様のお蔭ですのよ」
そこで初めて、人々はあっと声を上げた。
皿を下ろしたマリーは続ける。
「火は扱いを間違えれば大惨事になる刃物のようなもの。
それを危ないからと人間から遠ざける太陽神様。危ないけれど人間の成長には必要だからと渡す火の神様。
どちらが正解という事ではなく、どちらも慈悲であり優しさなのです。
そこで改めて皆様に問いましょう。人間が誰かを火なり刃物なり――何でも良いですわ、神から齎された何かで傷つけたとしたら、その罪は神が被るべきなのでしょうか?」
「そ、それは……」
「私はそうは思いませんわ。物の分からない赤ん坊や幼子ならばまだしも、人々には分別が備わっております。罪はそれを犯した者に帰す、至極当たり前の事ではありませんか?
敢えて申し上げましょう。火を争い等に使った人間達の罪を、火の神様は背負わされているのですわ。
火の神様を忌み嫌う方には、どうぞ遠慮なく普段から生肉や生野菜を食らい、食器や金属も使わず、冬でも火を一切使わずにお過ごし下さいまし、と言いたいですわね」
最後はおどけたように締めくくると、マリーは赤毛の男の方を振り返った。
「エグバートさん、これで答えになったかしら?」
「『私の名前を……!? あ…ありがとうございます、聖女様!』」
エグバートと呼ばれた男は地に這いつくばるように感謝を捧げる。
マリーは優しく微笑んだ。
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