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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
昔取った杵柄。
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メイソンの処遇に関しての話し合いが終わった頃。
パーティーが無事に終わったらしく、他の家族達が喫茶室に戻ってきた。そこで事件を知って大変驚き慌てていた。母に抱きしめられ、アナベラ姉に怖かったわねと労わられる。メリーにも縋りつかれた。義姉キャロラインには護身術を勧められる。
中でも特に、義兄アールは物凄く責任を感じたらしい。平謝りされ、後日改めて謝罪を、と言われた。そんな一幕があったものの、一先ずこの場はお開きとなる。
そして、皆が寝静まった頃――。
私はサリーナと馬の脚共を引き連れてメイソンの捕らえられている客間へ向かっていた。
兄達からの怪しいバタフライ仮面、祖母からの女王襟を装備して気合を入れる。
というのも、殴られた仕返しをする為である。その機会は今を置いて他にはない。勿論反対されるので父達には内緒だ。
要は、身体に目立った傷を負わせなければ何をしても良いと私は解釈した。
私が受けた恐怖と痛み、百倍返しにしてやる!
所持品。鞭良し、目隠し良し、口枷と鼻フック良し、縄良し。蝋燭や替えの服その他の道具もちゃんと準備してある。
入室する時に警備の者に大分渋られたが、サリーナも馬の脚共も居る。ただメイソンと話をしたい、何かあれば叫ぶからと言って押し通った。
メイソンは縛られていたが、目を覚ましていたようだ。サリーナが明かりを灯していく。私の姿を認めると、異様な出で立ちに一瞬息を飲んだようだが、やがてフンと小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「……マリアージュ姫か。ドルトン侯爵家を敵に回したく無ければ私をさっさと解放するのだな。今なら私を騙した事も含めて許してやらんでもない」
捕らわれの身、まな板の鯉になったというのにまだ高慢な物言い。私の眉間に皺が寄る。
「おお、臭い。雨に濡れた野良犬のような臭いが部屋中に染み付いていますわ」
「何だと!?」
「それにしてもさっきから随分と余裕ですこと。豚風情が生意気にも人語を話して服を着ているわ。脱がせなさい!」
「「ははっ!」」
鞭をわざと大きく鳴らす。それを命令の合図とばかりに素直に動き出す馬の脚共。奴を押さえ付け、ナイフでビリビリと服を引き裂いて行く。
流石に動転したのだろう。メイソンは焦った顔になって首を振った。
「なっ、何をする、やめろ! 私を辱めるつもりか!? このようなことをすればドルトン家が黙っていないぞ!」
「お黙りっ! 豚は豚らしくブヒッと鳴きなさいっ!」
痕が残らない程度に鞭で露わになった尻をピシリと叩く。それでもそれなりの痛みはあるだろう。馬の脚共が手際良く口枷を噛ませ、鼻フックを装着。メイソンの顔があっという間に豚面になった。
もごご! ごごごごご! と言葉にならない声を出すメイソン。
「では今からされることをご両親に逐一詳しく説明するのかしら? まずは自分のその恥ずかしい姿を見てご覧なさいな」
サリーナに合図をして鏡を差し出させる。メイソンは自分の豚面を見てショックを受けたように呆けた。
「さぁ、これからお仕置きの時間ですわ。反省の色も無い薄汚い雄豚はとことん躾けて差し上げなくてはね?」
鞭を両手で弄びながら宣言する。小刻みに震えながらこちらを見上げるメイソンの瞳に恐怖が宿った。
数時間後――。
「マリアージュ様……この日この時よりこの罪深き雄豚奴隷メイソンはマリアージュ様に全てを委ねます……」
前世来取った杵柄、怒涛の調きょ…躾けを受けた後。目からハイライトが消えたメイソンは、私のハイヒールに踏みつけられながら恍惚とした顔で堕ちた。
途中、馬の脚共も鞭で打って下さいと申し出てきたりお座りくださいと四つん這いになったり色々あったが、あくまでもそれは想定内の範疇で……メイソンのこれは流石に私としても計算外だった。
そういう男は社会的地位が高く、プライドをぶっ壊される事で堕ちると言われているが――メイソンも例に漏れなかったようである。
……どうしよう、これ。
ちょっとした仕返しのつもりが奴隷を作ってしまった。
いや、と思う。メイソンは二度と犯罪出来ないように座敷牢にでも監禁されるだろう、きっと。
つまり二度と会う事はあるまい。
後の事は知ーらないっ!
私は分かればよいのだと偉そうに言って、外の警備と馬の脚共にすっかり抵抗を止めたメイソンに替えの服を着せ元通りに縛っておくよう命じると、客室をそそくさと撤退した。
***
さて、結論から言おう。
義兄ザインにドルトン侯爵家へ苦情を入れて貰おうとしたのだが、その前にアルバート第一王子殿下の仲裁という名の横やりが入ったのである。ギャヴィンの奴だろう。第一王子殿下の恩を売るつもりだろうが、全く余計な事しかしない。
メイソンは事件のあった次の日の朝に、王家から回収班がやってきた。「悪いようにはしないから、メイソンの身柄は一旦アルバート第一王子殿下預かりにするように」との王命を携えて。
我が家としても流石に勅命に逆らう訳には行かず、メイソンを引き渡す事に。
その後、改めてリプトン伯爵家やドルトン侯爵家に知らせが行き、殿下の名で交渉の場が持たれたそうだ。
その結果、メイソンは監視付き座敷牢で暫く謹慎、リプトン伯爵位そのものは継続となった。ただ、この態度も一過性のものかも知れないという事で、謹慎が解けても一年は監察処分が続くそうだ。
犯した罪からすれば甘い処分だと思うが、それには理由があった。私の躾けによってすっかり大人しくなったメイソンは反省の色を見せて素直に謝罪し、どんな処分でも甘んじて受けます、とさえ口にした――つまり、すっかり人が変わったようになっていたからである。
何故そのように変わってしまったのかと訊かれたメイソンは、「自分は女神によって生まれ変わったのだ」と聖人の如く清らかな目で言うだけで詳しくは語ろうとしなかったそうだ。ほっ。
ただ、私が何かをした事は警備から報告を受けてバレているらしく、語ってる最中こちらをピンポイントで見詰めて来る父サイモンの目力が半端なかった。
馬の脚共やサリーナにもこっそり聞いたのだが、詳細は秘密にしてくれているらしい。うん、若気の至りは墓場まで持って行こう。
我が家は賠償としてドルトン侯爵家から多額の金および侯爵領地における銀行の設立に我が家への商売に関する税制優遇、そしてリプトン伯爵家からは幾ばくかの不動産や産業と税制優遇を得る形となった。
両家からの賠償に第一王子殿下からの頼みで手打ちにしてくれ、という事である。メイソンとフレールの離婚も回避された形なので、父もそこで矛を収める形となった。
ウィッタード公爵家もドルトン侯爵家から賠償を申し入れられたが、ザインは貸し一つという事で保留にしたらしい。もしかしたら殿下から何か言われたのかも知れないが、具体的な内容が無い分、厄介な気もする。
……というのが数日の内に瞬く間に決まったのである。
パーティーが無事に終わったらしく、他の家族達が喫茶室に戻ってきた。そこで事件を知って大変驚き慌てていた。母に抱きしめられ、アナベラ姉に怖かったわねと労わられる。メリーにも縋りつかれた。義姉キャロラインには護身術を勧められる。
中でも特に、義兄アールは物凄く責任を感じたらしい。平謝りされ、後日改めて謝罪を、と言われた。そんな一幕があったものの、一先ずこの場はお開きとなる。
そして、皆が寝静まった頃――。
私はサリーナと馬の脚共を引き連れてメイソンの捕らえられている客間へ向かっていた。
兄達からの怪しいバタフライ仮面、祖母からの女王襟を装備して気合を入れる。
というのも、殴られた仕返しをする為である。その機会は今を置いて他にはない。勿論反対されるので父達には内緒だ。
要は、身体に目立った傷を負わせなければ何をしても良いと私は解釈した。
私が受けた恐怖と痛み、百倍返しにしてやる!
所持品。鞭良し、目隠し良し、口枷と鼻フック良し、縄良し。蝋燭や替えの服その他の道具もちゃんと準備してある。
入室する時に警備の者に大分渋られたが、サリーナも馬の脚共も居る。ただメイソンと話をしたい、何かあれば叫ぶからと言って押し通った。
メイソンは縛られていたが、目を覚ましていたようだ。サリーナが明かりを灯していく。私の姿を認めると、異様な出で立ちに一瞬息を飲んだようだが、やがてフンと小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「……マリアージュ姫か。ドルトン侯爵家を敵に回したく無ければ私をさっさと解放するのだな。今なら私を騙した事も含めて許してやらんでもない」
捕らわれの身、まな板の鯉になったというのにまだ高慢な物言い。私の眉間に皺が寄る。
「おお、臭い。雨に濡れた野良犬のような臭いが部屋中に染み付いていますわ」
「何だと!?」
「それにしてもさっきから随分と余裕ですこと。豚風情が生意気にも人語を話して服を着ているわ。脱がせなさい!」
「「ははっ!」」
鞭をわざと大きく鳴らす。それを命令の合図とばかりに素直に動き出す馬の脚共。奴を押さえ付け、ナイフでビリビリと服を引き裂いて行く。
流石に動転したのだろう。メイソンは焦った顔になって首を振った。
「なっ、何をする、やめろ! 私を辱めるつもりか!? このようなことをすればドルトン家が黙っていないぞ!」
「お黙りっ! 豚は豚らしくブヒッと鳴きなさいっ!」
痕が残らない程度に鞭で露わになった尻をピシリと叩く。それでもそれなりの痛みはあるだろう。馬の脚共が手際良く口枷を噛ませ、鼻フックを装着。メイソンの顔があっという間に豚面になった。
もごご! ごごごごご! と言葉にならない声を出すメイソン。
「では今からされることをご両親に逐一詳しく説明するのかしら? まずは自分のその恥ずかしい姿を見てご覧なさいな」
サリーナに合図をして鏡を差し出させる。メイソンは自分の豚面を見てショックを受けたように呆けた。
「さぁ、これからお仕置きの時間ですわ。反省の色も無い薄汚い雄豚はとことん躾けて差し上げなくてはね?」
鞭を両手で弄びながら宣言する。小刻みに震えながらこちらを見上げるメイソンの瞳に恐怖が宿った。
数時間後――。
「マリアージュ様……この日この時よりこの罪深き雄豚奴隷メイソンはマリアージュ様に全てを委ねます……」
前世来取った杵柄、怒涛の調きょ…躾けを受けた後。目からハイライトが消えたメイソンは、私のハイヒールに踏みつけられながら恍惚とした顔で堕ちた。
途中、馬の脚共も鞭で打って下さいと申し出てきたりお座りくださいと四つん這いになったり色々あったが、あくまでもそれは想定内の範疇で……メイソンのこれは流石に私としても計算外だった。
そういう男は社会的地位が高く、プライドをぶっ壊される事で堕ちると言われているが――メイソンも例に漏れなかったようである。
……どうしよう、これ。
ちょっとした仕返しのつもりが奴隷を作ってしまった。
いや、と思う。メイソンは二度と犯罪出来ないように座敷牢にでも監禁されるだろう、きっと。
つまり二度と会う事はあるまい。
後の事は知ーらないっ!
私は分かればよいのだと偉そうに言って、外の警備と馬の脚共にすっかり抵抗を止めたメイソンに替えの服を着せ元通りに縛っておくよう命じると、客室をそそくさと撤退した。
***
さて、結論から言おう。
義兄ザインにドルトン侯爵家へ苦情を入れて貰おうとしたのだが、その前にアルバート第一王子殿下の仲裁という名の横やりが入ったのである。ギャヴィンの奴だろう。第一王子殿下の恩を売るつもりだろうが、全く余計な事しかしない。
メイソンは事件のあった次の日の朝に、王家から回収班がやってきた。「悪いようにはしないから、メイソンの身柄は一旦アルバート第一王子殿下預かりにするように」との王命を携えて。
我が家としても流石に勅命に逆らう訳には行かず、メイソンを引き渡す事に。
その後、改めてリプトン伯爵家やドルトン侯爵家に知らせが行き、殿下の名で交渉の場が持たれたそうだ。
その結果、メイソンは監視付き座敷牢で暫く謹慎、リプトン伯爵位そのものは継続となった。ただ、この態度も一過性のものかも知れないという事で、謹慎が解けても一年は監察処分が続くそうだ。
犯した罪からすれば甘い処分だと思うが、それには理由があった。私の躾けによってすっかり大人しくなったメイソンは反省の色を見せて素直に謝罪し、どんな処分でも甘んじて受けます、とさえ口にした――つまり、すっかり人が変わったようになっていたからである。
何故そのように変わってしまったのかと訊かれたメイソンは、「自分は女神によって生まれ変わったのだ」と聖人の如く清らかな目で言うだけで詳しくは語ろうとしなかったそうだ。ほっ。
ただ、私が何かをした事は警備から報告を受けてバレているらしく、語ってる最中こちらをピンポイントで見詰めて来る父サイモンの目力が半端なかった。
馬の脚共やサリーナにもこっそり聞いたのだが、詳細は秘密にしてくれているらしい。うん、若気の至りは墓場まで持って行こう。
我が家は賠償としてドルトン侯爵家から多額の金および侯爵領地における銀行の設立に我が家への商売に関する税制優遇、そしてリプトン伯爵家からは幾ばくかの不動産や産業と税制優遇を得る形となった。
両家からの賠償に第一王子殿下からの頼みで手打ちにしてくれ、という事である。メイソンとフレールの離婚も回避された形なので、父もそこで矛を収める形となった。
ウィッタード公爵家もドルトン侯爵家から賠償を申し入れられたが、ザインは貸し一つという事で保留にしたらしい。もしかしたら殿下から何か言われたのかも知れないが、具体的な内容が無い分、厄介な気もする。
……というのが数日の内に瞬く間に決まったのである。
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