24 / 57
第二章 ノア
24、ロサ子爵邸にて
しおりを挟む
キャンキャンッ
「犬?」
「犬だ。」
「・・・いや、この犬は君の家の飼い犬?」
クラウスにこれは犬かと聞かれたから、犬だと肯定したら、困惑されてしまった。
また、言葉が足りなかったらしい。
現在、クレープを食べた後、数軒の店をまわってから、パトリック殿、イザベルの順に送って最後の私の家に着いたところだ。
うちは遠いし適当な所で降ろしてくれたら歩いて帰るからと言ったら、もの凄い勢いで怒られた。
曰く、君は自分をなんだと思っているんだ、大事な女性を途中で降ろして歩いて帰らせるなんてあり得ない。
きっちり自分で屋敷内まで送り届けないと心配で眠れない。朝イチでロサ邸に無事を確認しに行くほうが大変だから大人しく送られて欲しい、とまで言われてしまったのだ。
どうもそういう扱いは受けたことがないので、背中がむず痒い気がしたが、前ほど嫌ではなかった。少し、慣れてきたのかもしれない。
いかに女性のひとり歩きが危ないかということを力説するクラウスに負けて、家まで送ってもらったら玄関の中までついてきた。
そして、彼はうちの玄関に入ったところで薄茶の短毛の子犬に吠えられている。
「この子は、先週の学校帰りに拾ったんだ。でも、うちにはもう犬がいて、二匹は飼えないから貰い手を探してるところだ。躾がもう少し掛かるから急いでいないのだが。」
「いつもと違って貰い手がなかなか見つからないと思ったら、そういうことだったのか。」
「ベネディクト兄様、ただいま帰りました。」
ムスッとした顔でやって来た兄は、クラウスを見て慌てて笑顔を貼り付けた。
「髪色は違いますけど、クラウス殿下ですよね。まさか、ここまで妹を送ってくださったのですか?!」
「こんばんは、ベネディクト。僕が大事な婚約者を一人で帰すわけがないでしょ。」
その台詞に兄が曖昧な笑みを浮かべて私を見た。
・・・言いたいことは分かる。
私を女だと分かっていても普段弟と同じように雑に扱っているから、いざ他人からここまで女性扱いされているのを見ると微妙な気持ちになるのだろう。
私はどう反応すべきか戸惑っている兄から目を逸らし、クーンと鳴きながら足元にすり寄ってきた子犬を抱き上げ頬ずりした。
かわいい。兄はいつも嫌な顔をするが、こんなに小さくていたいけな生き物を見捨てるなんてできるわけがない。
「ノアは捨てられた生き物をしょっちゅう拾って来るのです。その度に引き取り手を探すのが大変で・・・。」
兄がほとほと困ったというふうに王子に嘆いている。
兄よ、それを言って婚約が取り消されるかもしれないとは思わないのか?無差別に捨て生物を拾ってくる妻を欲しいと思う人はいないと思うが?
・・・私は、取り消されても全く構わないのだが。
そう思うと同時に胸がぎゅっと締め付けられた。
クラウスとの婚約解消を想像しただけで、胸が痛むとは。・・・私は、クラウスとの婚約が無くなるのが嫌、なのか?
まさか、そんな。こんな直ぐに好意を抱くはずがない。気のせいだ。
今日のデートがちょっと、割と、楽しかったからだ。そうに違いない。
私は犬を抱いたまま、そのフワフワの首筋に顔と自分の中に芽生えた気持ちを埋め、兄とクラウスの会話の行方に耳を澄ませた。
「ふうん、彼女はそんなにたくさん拾ってくるの?」
「ええ、生き物とくれば見境なく、犬猫から怪我した鳥、先月は羊まで!」
「迷い羊は直ぐに飼い主が引き取りに来たではないですか。」
「何を言うか!ほんの数日でも屋敷内を羊が闊歩して迷惑だっただろうが!」
そっと抗議すれば、すごい勢いで文句を言われた。自室に粗相されたことをまだ根に持っているらしい。
弟は小さすぎる庭の草抜きが不要になって喜んでいたけどな。
「犬猫、鳥に羊か。賑やかで良いね。ノアは彼等を何処で見つけてくるの?」
嫌がるどころか、面白そうに瞳を煌めかせているクラウスに兄は目を瞬かせている。
「私が見つけるんじゃなくて、彼等とはバッタリ出会うんだ。学校帰りが多いかな。んー、いい匂い。」
クラウスが婚約取り消しを言い出さなかったことに安堵した私は答えつつ、腕の中の子犬の頭にキスをした。
するといきなりクラウスの気配が変わった。彼は私の腕の中から犬を摘み上げると、ジロジロ眺め回し始めた。
「お前は女の子?男の子?」
「男の子だ。」
「そうなの?!もう一匹の飼ってる方は?!」
「女の子。」
「・・・ふーん。じゃあ、この子は僕がもらっていい?」
「えっ」
「なんとありがたい!殿下にもらって頂けるなんてとんでもなく名誉なことだぞ、犬!ただいま籠をお持ちします!」
私が呆気にとられている間に兄がサクサクとことを進め、子犬は餌や匂いの付いた毛布と共に籠に詰められた。
「え、そんなの急すぎる。躾の続きはどうするんだ。」
我に返って抗議をすれば、クラウスが得たり、と笑う。
「君が僕の所に来て、この犬に躾の続きをしてよ。それに、僕が引き取れば結婚後はこの子と毎日一緒にいられるよ?」
なんだか犬を人質にとられたような気になって私は膨れた。
「それは狡くないか?躾が終わってから渡すよ。」
返してくれ、と手を伸ばせば籠がヒョイと上に持ち上げられた。
身長差があり過ぎて手が届かない。卑怯だ!
ぴょんぴょん飛ぶ私の頭にぽんと手が置かれ、クラウスが爽やかに宣った。
「だーめ。君のことだから、一緒に寝てたりするんじゃないの?」
「その子と私が一緒に寝ることを、何で貴方に阻止されないといけないんだ。」
「やっぱり一緒に寝てたのか。いいじゃないか、君はもう一匹と一緒に寝なよ。じゃあ、この子はもらって行くよ。明日、王子妃の勉強に来た時に会いに来てね。」
そう言って立ち去ろうとするクラウスの服をぎゅっと掴んで止める。
「ちょっと待て。王子妃の勉強ってなんだ。聞いてないぞ?」
低い声で聞き返した私に、クラウスがあれっ?と小首を傾げた。
「言ってなかったっけ?やっと僕達の婚約が認可されたんだ。だから、明日から妃の勉強が始まるので城へ通ってね。」
「そんなの聞いてない!そういう大事なことは会って直ぐに言え!それが出来ない人との結婚は無理だぞ。」
「ごめん!次からは絶対忘れないから今回は許して!昨日から君と街へ行くのが楽しみ過ぎて寝てないくらいなんだよ。うっかりしてた、本当に申し訳ない。」
眠れないくらい、今日を楽しみにしていたと必死に謝るクラウスをこれ以上責めることはできず、私は渋々といった体で彼を許した。
「今回だけだ。こんな大事なことを忘れるなんて、次はないからな。寝不足ならさっさと帰って寝てくれ。」
「ありがとう!うん、もう忘れない。・・・ああ、婚約のことは君の卒業を待って公表する予定だから安心して。」
「卒業したら直ぐ結婚じゃないのか?」
「そうしたいのは山々だけど、王子妃の勉強もあるし、式の準備もあるから結婚は一年以上先になるみたい。」
「なるほど。」
「ノア。君は今、結婚が思ったより先でホッとしたね?僕は明日からでも君と一緒に暮らしたいのに。」
猶予があることに内心ホッとしたことを直ぐに気付かれた。
本当にこの男はカンが鋭すぎる。
私はつとめて感情を出さないように、無表情になるよう努力した。
しかし、それもあっさり看破され、クラウスはふはっと吹き出しつつ、私の顔を覗き込んだ。
「君はいつものままが素敵だよ。妃の勉強と同時に結婚式の準備も進めていくのでお互い忙しくなるけど、出来る限り君の希望を聞くから二人で頑張って乗り切ろうね!今日はノアとデートできて、とても楽しかったよ、ありがとう。また明日ね!」
クラウスは心底嬉しそうな顔でそう言って、子犬と共に軽やかに立ち去った。
♦♦♦♦♦
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
クラウス殿下は嫉妬のあまり子犬を誘拐・・・。
パットの両親のお話である「色褪せ令嬢は似合わない婚約を破棄したい」に
パットとイザベルの小さい頃の話を番外編として投稿しました。
最新話『番外編 いつかの、未来7』です。半分は両親の話ですが、
よろしければ読んでやってください。
「犬?」
「犬だ。」
「・・・いや、この犬は君の家の飼い犬?」
クラウスにこれは犬かと聞かれたから、犬だと肯定したら、困惑されてしまった。
また、言葉が足りなかったらしい。
現在、クレープを食べた後、数軒の店をまわってから、パトリック殿、イザベルの順に送って最後の私の家に着いたところだ。
うちは遠いし適当な所で降ろしてくれたら歩いて帰るからと言ったら、もの凄い勢いで怒られた。
曰く、君は自分をなんだと思っているんだ、大事な女性を途中で降ろして歩いて帰らせるなんてあり得ない。
きっちり自分で屋敷内まで送り届けないと心配で眠れない。朝イチでロサ邸に無事を確認しに行くほうが大変だから大人しく送られて欲しい、とまで言われてしまったのだ。
どうもそういう扱いは受けたことがないので、背中がむず痒い気がしたが、前ほど嫌ではなかった。少し、慣れてきたのかもしれない。
いかに女性のひとり歩きが危ないかということを力説するクラウスに負けて、家まで送ってもらったら玄関の中までついてきた。
そして、彼はうちの玄関に入ったところで薄茶の短毛の子犬に吠えられている。
「この子は、先週の学校帰りに拾ったんだ。でも、うちにはもう犬がいて、二匹は飼えないから貰い手を探してるところだ。躾がもう少し掛かるから急いでいないのだが。」
「いつもと違って貰い手がなかなか見つからないと思ったら、そういうことだったのか。」
「ベネディクト兄様、ただいま帰りました。」
ムスッとした顔でやって来た兄は、クラウスを見て慌てて笑顔を貼り付けた。
「髪色は違いますけど、クラウス殿下ですよね。まさか、ここまで妹を送ってくださったのですか?!」
「こんばんは、ベネディクト。僕が大事な婚約者を一人で帰すわけがないでしょ。」
その台詞に兄が曖昧な笑みを浮かべて私を見た。
・・・言いたいことは分かる。
私を女だと分かっていても普段弟と同じように雑に扱っているから、いざ他人からここまで女性扱いされているのを見ると微妙な気持ちになるのだろう。
私はどう反応すべきか戸惑っている兄から目を逸らし、クーンと鳴きながら足元にすり寄ってきた子犬を抱き上げ頬ずりした。
かわいい。兄はいつも嫌な顔をするが、こんなに小さくていたいけな生き物を見捨てるなんてできるわけがない。
「ノアは捨てられた生き物をしょっちゅう拾って来るのです。その度に引き取り手を探すのが大変で・・・。」
兄がほとほと困ったというふうに王子に嘆いている。
兄よ、それを言って婚約が取り消されるかもしれないとは思わないのか?無差別に捨て生物を拾ってくる妻を欲しいと思う人はいないと思うが?
・・・私は、取り消されても全く構わないのだが。
そう思うと同時に胸がぎゅっと締め付けられた。
クラウスとの婚約解消を想像しただけで、胸が痛むとは。・・・私は、クラウスとの婚約が無くなるのが嫌、なのか?
まさか、そんな。こんな直ぐに好意を抱くはずがない。気のせいだ。
今日のデートがちょっと、割と、楽しかったからだ。そうに違いない。
私は犬を抱いたまま、そのフワフワの首筋に顔と自分の中に芽生えた気持ちを埋め、兄とクラウスの会話の行方に耳を澄ませた。
「ふうん、彼女はそんなにたくさん拾ってくるの?」
「ええ、生き物とくれば見境なく、犬猫から怪我した鳥、先月は羊まで!」
「迷い羊は直ぐに飼い主が引き取りに来たではないですか。」
「何を言うか!ほんの数日でも屋敷内を羊が闊歩して迷惑だっただろうが!」
そっと抗議すれば、すごい勢いで文句を言われた。自室に粗相されたことをまだ根に持っているらしい。
弟は小さすぎる庭の草抜きが不要になって喜んでいたけどな。
「犬猫、鳥に羊か。賑やかで良いね。ノアは彼等を何処で見つけてくるの?」
嫌がるどころか、面白そうに瞳を煌めかせているクラウスに兄は目を瞬かせている。
「私が見つけるんじゃなくて、彼等とはバッタリ出会うんだ。学校帰りが多いかな。んー、いい匂い。」
クラウスが婚約取り消しを言い出さなかったことに安堵した私は答えつつ、腕の中の子犬の頭にキスをした。
するといきなりクラウスの気配が変わった。彼は私の腕の中から犬を摘み上げると、ジロジロ眺め回し始めた。
「お前は女の子?男の子?」
「男の子だ。」
「そうなの?!もう一匹の飼ってる方は?!」
「女の子。」
「・・・ふーん。じゃあ、この子は僕がもらっていい?」
「えっ」
「なんとありがたい!殿下にもらって頂けるなんてとんでもなく名誉なことだぞ、犬!ただいま籠をお持ちします!」
私が呆気にとられている間に兄がサクサクとことを進め、子犬は餌や匂いの付いた毛布と共に籠に詰められた。
「え、そんなの急すぎる。躾の続きはどうするんだ。」
我に返って抗議をすれば、クラウスが得たり、と笑う。
「君が僕の所に来て、この犬に躾の続きをしてよ。それに、僕が引き取れば結婚後はこの子と毎日一緒にいられるよ?」
なんだか犬を人質にとられたような気になって私は膨れた。
「それは狡くないか?躾が終わってから渡すよ。」
返してくれ、と手を伸ばせば籠がヒョイと上に持ち上げられた。
身長差があり過ぎて手が届かない。卑怯だ!
ぴょんぴょん飛ぶ私の頭にぽんと手が置かれ、クラウスが爽やかに宣った。
「だーめ。君のことだから、一緒に寝てたりするんじゃないの?」
「その子と私が一緒に寝ることを、何で貴方に阻止されないといけないんだ。」
「やっぱり一緒に寝てたのか。いいじゃないか、君はもう一匹と一緒に寝なよ。じゃあ、この子はもらって行くよ。明日、王子妃の勉強に来た時に会いに来てね。」
そう言って立ち去ろうとするクラウスの服をぎゅっと掴んで止める。
「ちょっと待て。王子妃の勉強ってなんだ。聞いてないぞ?」
低い声で聞き返した私に、クラウスがあれっ?と小首を傾げた。
「言ってなかったっけ?やっと僕達の婚約が認可されたんだ。だから、明日から妃の勉強が始まるので城へ通ってね。」
「そんなの聞いてない!そういう大事なことは会って直ぐに言え!それが出来ない人との結婚は無理だぞ。」
「ごめん!次からは絶対忘れないから今回は許して!昨日から君と街へ行くのが楽しみ過ぎて寝てないくらいなんだよ。うっかりしてた、本当に申し訳ない。」
眠れないくらい、今日を楽しみにしていたと必死に謝るクラウスをこれ以上責めることはできず、私は渋々といった体で彼を許した。
「今回だけだ。こんな大事なことを忘れるなんて、次はないからな。寝不足ならさっさと帰って寝てくれ。」
「ありがとう!うん、もう忘れない。・・・ああ、婚約のことは君の卒業を待って公表する予定だから安心して。」
「卒業したら直ぐ結婚じゃないのか?」
「そうしたいのは山々だけど、王子妃の勉強もあるし、式の準備もあるから結婚は一年以上先になるみたい。」
「なるほど。」
「ノア。君は今、結婚が思ったより先でホッとしたね?僕は明日からでも君と一緒に暮らしたいのに。」
猶予があることに内心ホッとしたことを直ぐに気付かれた。
本当にこの男はカンが鋭すぎる。
私はつとめて感情を出さないように、無表情になるよう努力した。
しかし、それもあっさり看破され、クラウスはふはっと吹き出しつつ、私の顔を覗き込んだ。
「君はいつものままが素敵だよ。妃の勉強と同時に結婚式の準備も進めていくのでお互い忙しくなるけど、出来る限り君の希望を聞くから二人で頑張って乗り切ろうね!今日はノアとデートできて、とても楽しかったよ、ありがとう。また明日ね!」
クラウスは心底嬉しそうな顔でそう言って、子犬と共に軽やかに立ち去った。
♦♦♦♦♦
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
クラウス殿下は嫉妬のあまり子犬を誘拐・・・。
パットの両親のお話である「色褪せ令嬢は似合わない婚約を破棄したい」に
パットとイザベルの小さい頃の話を番外編として投稿しました。
最新話『番外編 いつかの、未来7』です。半分は両親の話ですが、
よろしければ読んでやってください。
6
お気に入りに追加
595
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
婚約者に好きな人がいると言われました
みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり――――――
🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる