15 / 26
15、告白
しおりを挟む
ルキウスを好きだと気がついた途端、他の男の人にうかうかとキスされた自分に情けなさがつのる。
あれをみた彼はどう思っただろうか。
私に恋人ができたと思ってルームシェアを解消しようと言うだろうか。
クロードもそうなればいいと思って、あんな嫌がらせをしたのだろう。最低だ。
誰か、この勝手に流れ落ちていく涙を止めてください。
「俺も城に用があったから、一緒に帰ろうと思ってラシェルを探していたんだ。お前を見つけたと思ったら、髪が解かれて。何があった?」
私の前まで来たルキウスは、そう言いながらポケットから出したハンカチで涙を拭きつつ、ついでに唇が痛くなるまで擦ってきた。
キスされたことはわかっているらしい。そのことに余計涙が溢れてくる。
昔みたいに誤解される前に、本当のことを伝えておかなくては。
彼のハンカチを借りてそのまま目を抑え、涙を無理やり止めながら、説明する。
「クロードが、いきなり結婚の申込みをしてきて、断ったら、髪解いて、嫌がらせにキスしてきた。私が好きなのはルキウスだって言ったのに!」
「今、なんて?」
ルキウスが呆然と呟いた。それから慌てて私の口を片手で塞ぐと、
「やっぱり、今は言わないでくれ。人目があるから、家に帰ってからにしよう。」
早口で言って、私の肩を抱くと家へと転移した。
家に帰ると、ローブを脱がされて、ソファに座らせられる。ルキウスも同じようにローブを脱いだが、いつもならちゃんと片付けるのに、今は二人分のローブが、ダイニングテーブルの椅子の背に乱暴に放り投げられて掛かった状態だ。ソファに座るときも、いつもは向かい合わせで座るのに、今は一人分の隙間を開けて、彼が隣にいる。
で、と真剣な表情のルキウスが私の方をじっと見る。青紫の瞳に少しだけ不安が揺れている。
「さっき、ラシェルが言ったことなんだが、その、俺のことが好きって、それは、恋人になってもいいという好き、であってるか?」
私は顔が真っ赤になった。記憶をたどれば、説明しているうちに、勢い余って告白とやらをかましてしまっていたようだ。
私は告白なんてするつもり、全くなかったのに。ルキウスが返事をしないうちに聞かなかったことにしてもらって、現状維持に務めなければ!
私は慌てて、弁解をする。
「違うの、いや、そうなんだけど、さっき気がついたばかりで、その、自分でもよくわかってないんだけども!ルキウスにも好きになってもらいたいとか思ってないし、私は誰とも付き合わないって決めてるし、だから、聞かなかったことにして、現状維持をお願いしたいのですが!」
「それはできない。」
瞬間で却下され、すぐにふわりと抱きしめられる。なんでこうなるのかわからず、目を瞬かせた私の耳元で低くてよく通る彼の声がする。
「ずっと好きだった相手から好きだと言われて、聞かなかったことになんてできないだろ。ラシェル、好きだ、ルームメイトなんて辞めて、俺の恋人になって欲しい。」
ルキウスも私を好きでいてくれた。それもずっと前から。
好きな人から言われる、好きという言葉のなんと嬉しいことか。
でも、私はそれを言ってもらっていい人間じゃない。
私は止まっていた涙がまた溢れてきたのをそのままにして、彼に縋りついて首を振った。
「ごめんなさい、本当は好きって伝えるつもりじゃなかったのに。私は、研究者である限り、誰とも付き合っちゃだめなの。」
「なぜそんなことを言う? 俺達が付き合うのに、何の障害もないだろう?」
心底不思議そうに聞いてくる彼に、私は子供の頃の話を聞いてほしいと告げた。
「私の父も魔術師で研究者だったそうなの。都じゃなくて、もっと辺境の方の研究所にいたらしいんだけど。私みたいに自分の研究にばかりかまけて、せっかく結婚した母のことはほったらかしで、たまに思い出したように帰って来るだけ。母は魔術師じゃなかったんだけど、なんで結婚したのかは知らないの。それでも、母は子供が生まれれば、少しは変わるかと期待したけれども、余計寄り付かなくなって、ある日、調査中に死んだと連絡が来て終わり。」
そこまで話して、涙を拭き、ちゅんと鼻をかんだ私の前にマグカップが置かれる。
ルキウスはずっと横で話を聞いてくれていたのに、いつの間に?
彼は驚く私からびしょ濡れのハンカチを取り上げ、タオルを渡しながら優しく言う。
「お前、城の図書館に行く日はいつもほこりで喉を痛めてくるから、作っておいたハニージンジャーティーを温めただけだ。泣いた分、水分補給しとけ。」
なんだか、いつも以上に優しい。雰囲気もなんか甘い。やばい、この人、すでに私を恋人扱いしてるんじゃなかろうか。
居心地の悪さを感じつつ、温かいマグカップを両手で包み込むように持って口に運ぶ。ほんのりした甘さと、ぴりっとした生姜に喉が癒やされる気がする。彼も横でマグカップを片手で持って飲みながら、続きを待ってくれている。
ぐっと半分まで飲んで、続きを話す勢いをつけた。
「それでね、父が死んだ時、私はまだ小さくて覚えてないんだけど、母はすぐ再婚したのね。で、私は連れていけないからって孤児院に置いていかれたらしいの。そこで私は古代魔術文字に出会って、色々あって魔術学校に入学が決まったんだけど、その時、支度金がもらえるじゃない?」
確認すると、ルキウスが頷く。私は冷めてきたお茶を一口飲んで続ける。
「本来なら、そのお金で学校までの旅費や、私服など賄うんだろうけど、私のお世話になっていた所はとっても貧しくていつもご飯が足りなかったから育ててくれたお礼の気持ちもあって、私は支度金を全部寄付したの。」
目を丸くする彼に、幸い都まで歩いて一日の距離だったし、制服とか必要なものは支給されたしね。と付け加えた。それでも何か渋い顔をしている。
「学校に出発する前日に、母が訪ねて来たの。あの村から魔術学校に行くのは珍しかったから、噂になって知ったみたいで。」
ここからが、彼に聞いてほしいことだ。もちろん楽しい話ではない。ぎゅっと両手でタオルを握りしめる。
「母は産んでやったのだから、支度金をよこせといって来たのだけど、すでに全部使った後だったし、返してもらうわけにもいかず、私もお金なんて他に持ってなかったからどうしようもなくて謝って断ったの。そしたら、父の事をいってきて、あんたも同じだと。『どうせ、他を思いやれない、どうしようもない研究者になるんだろう、あんたは何があっても恋愛も結婚もしちゃいけない。相手を不幸に突き落とすだけだ。』って言われたの。今の私はその言葉通りの、家族を顧みなかった父と同じような人間になったわ。母の言う通りになったから、恋愛も結婚もしちゃいけないと言われたことも正しいことなんだろうと思うの。だから、」
「俺とは付き合えない?」
頷く私に、ルキウスはほっと息をついた。
「そんなことは理由にならないぞ。お前と母親は学校に入学した時点で、縁は切れている。俺の見解だと、幼い頃に孤児院に預けられた時点で無関係になっていると思う。そんな他人の言葉に捕らわれるな。大体、もう何年も一緒に暮らして、俺は不幸になっていないし、俺も同じ魔術師で研究者だ。お前が家に寄り付かず、どこに行こうと俺は追いかけられるし、実際何度も捕まえに行ってるじゃないか。なんの問題もない。俺はずっと前からラシェルが好きで、一緒にいたいと思ってる。他人の言うことより、俺の気持ちを大事にしてくれ。それより何より、お前自身はどうしたいんだ?」
確かにルキウスの気持ちも大事だ。彼も私と一緒にいることを望んでくれて、母の言葉を気にしなくてもいいのなら、私の答えは一つだ。
「私も、ルキウスが好きだから、ずっと一緒にいたいに決まってる。でも、お世話してもらうばかりで、私ばっかり得してる気がしてなんとかしなきゃっていつも思ってるのに、どうしていいかわからない。こんなので恋人同士っていいのかな。」
彼が嬉しそうに笑う。
「じゃあ、俺達、今から恋人同士だな。あのな、ラシェル、どっちが得してるとかそんなこと、気にしなくてもいいんだ。俺はお前がそばにいて、元気に過ごしているのを見られたらそれで幸せなのだから。でも、どうしても気になるなら、恋人同士になったことだし、一つお願いしてもいいか?」
「私にできること?」
自分の家事能力を知っているので、不安が募る。彼はにやっと笑うと、私の頭に手を乗せて顔を覗き込む。
「ラシェルにしかできないことだし、すっごく簡単なことだから、安心して。毎朝、起きたら俺に抱きついてキスするだけ。できるだろ?」
確かに、動作としては簡単だろうけど、心理的に物凄く難しいような・・・。いや、やる前から諦めてはだめだ、挑戦はしてみるべきだ、好きな人からの頼みなのだから。
「わかった、ルキウスがそうして欲しいなら頑張る。」
「楽しみにしてる。」
小さく拳を作って気合を入れた私を、柔らかい笑みで見ていた彼が、急に真剣な顔になった。
「ところで、そろそろ我慢できなくなって来たから、キスしていいか? あいつにお前の唇奪われっ放しとか嫌なんだけど。」
真っ向からそういうことを聞かれると、かなり恥ずかしいんだけど、私もあれを忘れたかったのでお願いすることにした。
「えっと、私もこのままは嫌なので、お願いしま」
す、と言い終わらないうちに、唇が重ねられる。
そのまま、何度もキスしていたら、苦しそうに言われた。
「ごめん、夕飯抜きでいい?明日の朝豪華にするから。ちょっと、止められそうにない。」
「え、夕飯抜きはいいんだけど、それってどういう・・・?!」
「どうしても嫌なら我慢するけど・・・。」
慌てる私を苦しげに見てくる彼に、降参した。
「嫌じゃ、ない・・・。」
あれをみた彼はどう思っただろうか。
私に恋人ができたと思ってルームシェアを解消しようと言うだろうか。
クロードもそうなればいいと思って、あんな嫌がらせをしたのだろう。最低だ。
誰か、この勝手に流れ落ちていく涙を止めてください。
「俺も城に用があったから、一緒に帰ろうと思ってラシェルを探していたんだ。お前を見つけたと思ったら、髪が解かれて。何があった?」
私の前まで来たルキウスは、そう言いながらポケットから出したハンカチで涙を拭きつつ、ついでに唇が痛くなるまで擦ってきた。
キスされたことはわかっているらしい。そのことに余計涙が溢れてくる。
昔みたいに誤解される前に、本当のことを伝えておかなくては。
彼のハンカチを借りてそのまま目を抑え、涙を無理やり止めながら、説明する。
「クロードが、いきなり結婚の申込みをしてきて、断ったら、髪解いて、嫌がらせにキスしてきた。私が好きなのはルキウスだって言ったのに!」
「今、なんて?」
ルキウスが呆然と呟いた。それから慌てて私の口を片手で塞ぐと、
「やっぱり、今は言わないでくれ。人目があるから、家に帰ってからにしよう。」
早口で言って、私の肩を抱くと家へと転移した。
家に帰ると、ローブを脱がされて、ソファに座らせられる。ルキウスも同じようにローブを脱いだが、いつもならちゃんと片付けるのに、今は二人分のローブが、ダイニングテーブルの椅子の背に乱暴に放り投げられて掛かった状態だ。ソファに座るときも、いつもは向かい合わせで座るのに、今は一人分の隙間を開けて、彼が隣にいる。
で、と真剣な表情のルキウスが私の方をじっと見る。青紫の瞳に少しだけ不安が揺れている。
「さっき、ラシェルが言ったことなんだが、その、俺のことが好きって、それは、恋人になってもいいという好き、であってるか?」
私は顔が真っ赤になった。記憶をたどれば、説明しているうちに、勢い余って告白とやらをかましてしまっていたようだ。
私は告白なんてするつもり、全くなかったのに。ルキウスが返事をしないうちに聞かなかったことにしてもらって、現状維持に務めなければ!
私は慌てて、弁解をする。
「違うの、いや、そうなんだけど、さっき気がついたばかりで、その、自分でもよくわかってないんだけども!ルキウスにも好きになってもらいたいとか思ってないし、私は誰とも付き合わないって決めてるし、だから、聞かなかったことにして、現状維持をお願いしたいのですが!」
「それはできない。」
瞬間で却下され、すぐにふわりと抱きしめられる。なんでこうなるのかわからず、目を瞬かせた私の耳元で低くてよく通る彼の声がする。
「ずっと好きだった相手から好きだと言われて、聞かなかったことになんてできないだろ。ラシェル、好きだ、ルームメイトなんて辞めて、俺の恋人になって欲しい。」
ルキウスも私を好きでいてくれた。それもずっと前から。
好きな人から言われる、好きという言葉のなんと嬉しいことか。
でも、私はそれを言ってもらっていい人間じゃない。
私は止まっていた涙がまた溢れてきたのをそのままにして、彼に縋りついて首を振った。
「ごめんなさい、本当は好きって伝えるつもりじゃなかったのに。私は、研究者である限り、誰とも付き合っちゃだめなの。」
「なぜそんなことを言う? 俺達が付き合うのに、何の障害もないだろう?」
心底不思議そうに聞いてくる彼に、私は子供の頃の話を聞いてほしいと告げた。
「私の父も魔術師で研究者だったそうなの。都じゃなくて、もっと辺境の方の研究所にいたらしいんだけど。私みたいに自分の研究にばかりかまけて、せっかく結婚した母のことはほったらかしで、たまに思い出したように帰って来るだけ。母は魔術師じゃなかったんだけど、なんで結婚したのかは知らないの。それでも、母は子供が生まれれば、少しは変わるかと期待したけれども、余計寄り付かなくなって、ある日、調査中に死んだと連絡が来て終わり。」
そこまで話して、涙を拭き、ちゅんと鼻をかんだ私の前にマグカップが置かれる。
ルキウスはずっと横で話を聞いてくれていたのに、いつの間に?
彼は驚く私からびしょ濡れのハンカチを取り上げ、タオルを渡しながら優しく言う。
「お前、城の図書館に行く日はいつもほこりで喉を痛めてくるから、作っておいたハニージンジャーティーを温めただけだ。泣いた分、水分補給しとけ。」
なんだか、いつも以上に優しい。雰囲気もなんか甘い。やばい、この人、すでに私を恋人扱いしてるんじゃなかろうか。
居心地の悪さを感じつつ、温かいマグカップを両手で包み込むように持って口に運ぶ。ほんのりした甘さと、ぴりっとした生姜に喉が癒やされる気がする。彼も横でマグカップを片手で持って飲みながら、続きを待ってくれている。
ぐっと半分まで飲んで、続きを話す勢いをつけた。
「それでね、父が死んだ時、私はまだ小さくて覚えてないんだけど、母はすぐ再婚したのね。で、私は連れていけないからって孤児院に置いていかれたらしいの。そこで私は古代魔術文字に出会って、色々あって魔術学校に入学が決まったんだけど、その時、支度金がもらえるじゃない?」
確認すると、ルキウスが頷く。私は冷めてきたお茶を一口飲んで続ける。
「本来なら、そのお金で学校までの旅費や、私服など賄うんだろうけど、私のお世話になっていた所はとっても貧しくていつもご飯が足りなかったから育ててくれたお礼の気持ちもあって、私は支度金を全部寄付したの。」
目を丸くする彼に、幸い都まで歩いて一日の距離だったし、制服とか必要なものは支給されたしね。と付け加えた。それでも何か渋い顔をしている。
「学校に出発する前日に、母が訪ねて来たの。あの村から魔術学校に行くのは珍しかったから、噂になって知ったみたいで。」
ここからが、彼に聞いてほしいことだ。もちろん楽しい話ではない。ぎゅっと両手でタオルを握りしめる。
「母は産んでやったのだから、支度金をよこせといって来たのだけど、すでに全部使った後だったし、返してもらうわけにもいかず、私もお金なんて他に持ってなかったからどうしようもなくて謝って断ったの。そしたら、父の事をいってきて、あんたも同じだと。『どうせ、他を思いやれない、どうしようもない研究者になるんだろう、あんたは何があっても恋愛も結婚もしちゃいけない。相手を不幸に突き落とすだけだ。』って言われたの。今の私はその言葉通りの、家族を顧みなかった父と同じような人間になったわ。母の言う通りになったから、恋愛も結婚もしちゃいけないと言われたことも正しいことなんだろうと思うの。だから、」
「俺とは付き合えない?」
頷く私に、ルキウスはほっと息をついた。
「そんなことは理由にならないぞ。お前と母親は学校に入学した時点で、縁は切れている。俺の見解だと、幼い頃に孤児院に預けられた時点で無関係になっていると思う。そんな他人の言葉に捕らわれるな。大体、もう何年も一緒に暮らして、俺は不幸になっていないし、俺も同じ魔術師で研究者だ。お前が家に寄り付かず、どこに行こうと俺は追いかけられるし、実際何度も捕まえに行ってるじゃないか。なんの問題もない。俺はずっと前からラシェルが好きで、一緒にいたいと思ってる。他人の言うことより、俺の気持ちを大事にしてくれ。それより何より、お前自身はどうしたいんだ?」
確かにルキウスの気持ちも大事だ。彼も私と一緒にいることを望んでくれて、母の言葉を気にしなくてもいいのなら、私の答えは一つだ。
「私も、ルキウスが好きだから、ずっと一緒にいたいに決まってる。でも、お世話してもらうばかりで、私ばっかり得してる気がしてなんとかしなきゃっていつも思ってるのに、どうしていいかわからない。こんなので恋人同士っていいのかな。」
彼が嬉しそうに笑う。
「じゃあ、俺達、今から恋人同士だな。あのな、ラシェル、どっちが得してるとかそんなこと、気にしなくてもいいんだ。俺はお前がそばにいて、元気に過ごしているのを見られたらそれで幸せなのだから。でも、どうしても気になるなら、恋人同士になったことだし、一つお願いしてもいいか?」
「私にできること?」
自分の家事能力を知っているので、不安が募る。彼はにやっと笑うと、私の頭に手を乗せて顔を覗き込む。
「ラシェルにしかできないことだし、すっごく簡単なことだから、安心して。毎朝、起きたら俺に抱きついてキスするだけ。できるだろ?」
確かに、動作としては簡単だろうけど、心理的に物凄く難しいような・・・。いや、やる前から諦めてはだめだ、挑戦はしてみるべきだ、好きな人からの頼みなのだから。
「わかった、ルキウスがそうして欲しいなら頑張る。」
「楽しみにしてる。」
小さく拳を作って気合を入れた私を、柔らかい笑みで見ていた彼が、急に真剣な顔になった。
「ところで、そろそろ我慢できなくなって来たから、キスしていいか? あいつにお前の唇奪われっ放しとか嫌なんだけど。」
真っ向からそういうことを聞かれると、かなり恥ずかしいんだけど、私もあれを忘れたかったのでお願いすることにした。
「えっと、私もこのままは嫌なので、お願いしま」
す、と言い終わらないうちに、唇が重ねられる。
そのまま、何度もキスしていたら、苦しそうに言われた。
「ごめん、夕飯抜きでいい?明日の朝豪華にするから。ちょっと、止められそうにない。」
「え、夕飯抜きはいいんだけど、それってどういう・・・?!」
「どうしても嫌なら我慢するけど・・・。」
慌てる私を苦しげに見てくる彼に、降参した。
「嫌じゃ、ない・・・。」
71
お気に入りに追加
478
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる