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ハイヒウォッツ市
#54 ゴーゾム文化
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ダリアとの挨拶を終え、女性に案内された部屋に入った。
「どうぞおくつろぎくださいませ。」
女性は二人分のタオルと服を置いて一礼をし、引き戸を閉めて行ってしまった。
部屋はそこまで広くなく、脚の短い机とクッションのようなものが中央に置いてあった。横に行くと、一つ段の上がったところがあった。その中央には綺麗な花がポツンと置いてあり、質素にも美しい雰囲気を醸し出していた。
「シンプルな部屋ですね…。それに良い匂いがします。」
「そうでしょ?これが畳の匂いよ。」
「タタミ?」
「ゴーゾム文化の民家は畳が敷いてあるの。とても落ち着く匂いよね。」
アリーの言葉通り、心がスッとするような匂いであった。
「さあ、お風呂に行きましょうか。」
「この部屋にあるんじゃないんですか?」
「ここは露天風呂があるのよ!入らなきゃ損でしょ!」
アリーはにやけて言葉を跳ねさせ、女性が置いていったタオルと服を持ち上げた。
「失礼します。」
端麗な女性の声がすると、引き戸がすっと開き、一礼をした女将さんがいた。その横にはダリアもいる。
「毎度、浴衣の着付け方でお困りになってしまうお客様が多いので伺わせていただきました。」
「それはありがとうごうざいます!」
「浴衣って…」
「浴衣っていうのは…これ。」
そう言ってアリーは持っていた服を広げた。私はびっくりした。ただ一枚の布に袖が着いているだけでファスナーもボタンも無かったのだ。これでは体を隠せれないではないか。私は怪訝な顔でアリーを見た。その様子を見て、女将さんがクスッと笑い、アリーが持っている浴衣を手に取った。
「浴衣は伝統的な服なんです。採寸などしなくても着付けさえ覚えてしまえば、自分の体に合う素敵な服になる物なんですよ。」
「……そうなんですか。」
正直、まだこの布一枚がどう着れるのか想像がつかない。アリーはどうやら着たことがあるようだったが、自分で着てみたいと女将さんに着付け指導をしてもらっていた。私はダリアに着せてもらうことになった。
「失礼しますね……。袖に両腕を通して横に真っ直ぐ腕を伸ばしてください…。そうです。次に…」
ダリアは手際良く私に浴衣を着せていった。胸の前で交差を作り、私の身長に合わせて裾丈を調整し、余った布は腰あたりで綺麗にまとめ、帯と呼ばれる物で腰を巻き、線対称な蝶々結びをしてくれた。
「すごい…。綺麗ですね…。」
一枚の布という事実に驚きすぎて気づかなかったが、布の柄が花柄でとても可愛らしい。
「この花はダリアって言うんです。私の名前もこの花から来た物なんです。ダリアは今の時期によく咲いているので明日一緒に見に行きましょ!」
「はい。よろしくお願いします。
……ダリアさんはおいくつなんですか?」
「今月で十八になりました。」
「じゃあ、同い年なんですね!私も今月の四日に十八になったんです。」
「四日!?私と同じです!」
「え!?すごいですね!誕生日が同じ人、初めて会いました!」
二人で驚き、顔を見合わせて笑った。誕生付きが同じ子に会ったことがなかったので日付も同じということに異様に興奮してしまった。今思うと、ダリアとベリアとで名前もよく似ているように感じる。
「二人とも敬語やめれば良いのに。」
アリーは私たちを見て呆れるように呟いた。私たちはその言葉に再び目を合わせ、笑った。
「じゃあ、よろしく…ベリアちゃん…。」
「よろしく…ダリアちゃん…。」
二人ともなんだか小っ恥ずかしくて照れ笑いをしていた。シュタンツファーを出て初めてできた女の子の友達であった。同い年の女の子と話すこの感覚を懐かしいと感じてしまうことに寂しさを感じながら、幼馴染の顔を心の隅で思い浮かべていた。
「どうぞおくつろぎくださいませ。」
女性は二人分のタオルと服を置いて一礼をし、引き戸を閉めて行ってしまった。
部屋はそこまで広くなく、脚の短い机とクッションのようなものが中央に置いてあった。横に行くと、一つ段の上がったところがあった。その中央には綺麗な花がポツンと置いてあり、質素にも美しい雰囲気を醸し出していた。
「シンプルな部屋ですね…。それに良い匂いがします。」
「そうでしょ?これが畳の匂いよ。」
「タタミ?」
「ゴーゾム文化の民家は畳が敷いてあるの。とても落ち着く匂いよね。」
アリーの言葉通り、心がスッとするような匂いであった。
「さあ、お風呂に行きましょうか。」
「この部屋にあるんじゃないんですか?」
「ここは露天風呂があるのよ!入らなきゃ損でしょ!」
アリーはにやけて言葉を跳ねさせ、女性が置いていったタオルと服を持ち上げた。
「失礼します。」
端麗な女性の声がすると、引き戸がすっと開き、一礼をした女将さんがいた。その横にはダリアもいる。
「毎度、浴衣の着付け方でお困りになってしまうお客様が多いので伺わせていただきました。」
「それはありがとうごうざいます!」
「浴衣って…」
「浴衣っていうのは…これ。」
そう言ってアリーは持っていた服を広げた。私はびっくりした。ただ一枚の布に袖が着いているだけでファスナーもボタンも無かったのだ。これでは体を隠せれないではないか。私は怪訝な顔でアリーを見た。その様子を見て、女将さんがクスッと笑い、アリーが持っている浴衣を手に取った。
「浴衣は伝統的な服なんです。採寸などしなくても着付けさえ覚えてしまえば、自分の体に合う素敵な服になる物なんですよ。」
「……そうなんですか。」
正直、まだこの布一枚がどう着れるのか想像がつかない。アリーはどうやら着たことがあるようだったが、自分で着てみたいと女将さんに着付け指導をしてもらっていた。私はダリアに着せてもらうことになった。
「失礼しますね……。袖に両腕を通して横に真っ直ぐ腕を伸ばしてください…。そうです。次に…」
ダリアは手際良く私に浴衣を着せていった。胸の前で交差を作り、私の身長に合わせて裾丈を調整し、余った布は腰あたりで綺麗にまとめ、帯と呼ばれる物で腰を巻き、線対称な蝶々結びをしてくれた。
「すごい…。綺麗ですね…。」
一枚の布という事実に驚きすぎて気づかなかったが、布の柄が花柄でとても可愛らしい。
「この花はダリアって言うんです。私の名前もこの花から来た物なんです。ダリアは今の時期によく咲いているので明日一緒に見に行きましょ!」
「はい。よろしくお願いします。
……ダリアさんはおいくつなんですか?」
「今月で十八になりました。」
「じゃあ、同い年なんですね!私も今月の四日に十八になったんです。」
「四日!?私と同じです!」
「え!?すごいですね!誕生日が同じ人、初めて会いました!」
二人で驚き、顔を見合わせて笑った。誕生付きが同じ子に会ったことがなかったので日付も同じということに異様に興奮してしまった。今思うと、ダリアとベリアとで名前もよく似ているように感じる。
「二人とも敬語やめれば良いのに。」
アリーは私たちを見て呆れるように呟いた。私たちはその言葉に再び目を合わせ、笑った。
「じゃあ、よろしく…ベリアちゃん…。」
「よろしく…ダリアちゃん…。」
二人ともなんだか小っ恥ずかしくて照れ笑いをしていた。シュタンツファーを出て初めてできた女の子の友達であった。同い年の女の子と話すこの感覚を懐かしいと感じてしまうことに寂しさを感じながら、幼馴染の顔を心の隅で思い浮かべていた。
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