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ノイシュロス市
#51 隠し事
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電車に揺られてだいぶ時間が経った。未だにアリーは何も聞かずに黙っている。聞かれなくて安心しているのだが、なんだか居心地が悪い。向かい合わせになっているせいだろうか。アリーは窓に顔を向けていて表情がよく見えない。怒っているようにも見える。
「ベリアは私の顔を見るのが大好きなんだね。」
「え!あ、えっと…」
急に振り向かれてびっくりした。馬車の時もこんなことがあった。外を見ていたはずなのにどうして気付けれるのだろうか。頬に目でもつているのだろうか。
「大丈夫よ。何も言わなくていい。きっと貴方にとって大きなことが分かったのね。分かるわよ、そのくらい。」
「……。」
「罪悪感があっても、言うなと言われているなら言わないで。」
「…はい。」
「これはファタング隊としてじゃない。一個人としてよ。」
「え?」
「私は妹ができたみたいで嬉しいのよ。貴方にナマイトダフで見せたいものや行かせてあげたい所が沢山あるの。だから今はまだ何も知らないでいたい。」
泣きそうに微笑んでくれるアリーの言葉に私は涙が出た。アリーは分かっている。私の秘密がファタング隊の人に知られてしまえば、これから用意されていた日常はおろか、私の命さえなくなってしまうかもしれないと。きっと今言ったことはファタング隊に逆らうことだ。しかし、アリーはそれより私といることを優先してくれた。アリーの掌に包まれた私の手が冷えていたのが分かった。まだ九月で車内は寒くはないはずなのに私の手は冷たくなっていた。
「ベリアは心が温かいのね。」
「…どうしてですか?」
「知らない?手が冷たい人は心が温かいのよ。」
「……いえ、心が温かいのはアリーさんです。」
「ありがとう。」
「本当です!私は、人生で初めて、血の繋がらない人に、家族になりたいという感情を抱きました!それは…アリーさんの心が温かいからです!」
話しているうちに流れている涙が勢いを増して溢れ出してくる。流れた涙はアリーが握っている私の手に落ちた。涙は温かった。これは嬉しき泣きなのだ。こんなにも穏やかな気持ちで涙をがしたことがない。自然と口角が上がる。頬が熱くなる。そのことに気づいた時、アリーも泣きながら笑っていた。
「じゃあ、今日からベリアは私の妹だね。私の唯一の家族だよ。」
「…はい。アリーさんは私の姉さんです。」
「じゃあ、姉さんって呼んでいいから。」
「ね、姉さん…」
照れて言うたびに顔が赤くなるのが分かった。しかし、声に出す『姉さん』という言葉が魔法の言葉のように私の胸を軽くした。
「ベリアは私の顔を見るのが大好きなんだね。」
「え!あ、えっと…」
急に振り向かれてびっくりした。馬車の時もこんなことがあった。外を見ていたはずなのにどうして気付けれるのだろうか。頬に目でもつているのだろうか。
「大丈夫よ。何も言わなくていい。きっと貴方にとって大きなことが分かったのね。分かるわよ、そのくらい。」
「……。」
「罪悪感があっても、言うなと言われているなら言わないで。」
「…はい。」
「これはファタング隊としてじゃない。一個人としてよ。」
「え?」
「私は妹ができたみたいで嬉しいのよ。貴方にナマイトダフで見せたいものや行かせてあげたい所が沢山あるの。だから今はまだ何も知らないでいたい。」
泣きそうに微笑んでくれるアリーの言葉に私は涙が出た。アリーは分かっている。私の秘密がファタング隊の人に知られてしまえば、これから用意されていた日常はおろか、私の命さえなくなってしまうかもしれないと。きっと今言ったことはファタング隊に逆らうことだ。しかし、アリーはそれより私といることを優先してくれた。アリーの掌に包まれた私の手が冷えていたのが分かった。まだ九月で車内は寒くはないはずなのに私の手は冷たくなっていた。
「ベリアは心が温かいのね。」
「…どうしてですか?」
「知らない?手が冷たい人は心が温かいのよ。」
「……いえ、心が温かいのはアリーさんです。」
「ありがとう。」
「本当です!私は、人生で初めて、血の繋がらない人に、家族になりたいという感情を抱きました!それは…アリーさんの心が温かいからです!」
話しているうちに流れている涙が勢いを増して溢れ出してくる。流れた涙はアリーが握っている私の手に落ちた。涙は温かった。これは嬉しき泣きなのだ。こんなにも穏やかな気持ちで涙をがしたことがない。自然と口角が上がる。頬が熱くなる。そのことに気づいた時、アリーも泣きながら笑っていた。
「じゃあ、今日からベリアは私の妹だね。私の唯一の家族だよ。」
「…はい。アリーさんは私の姉さんです。」
「じゃあ、姉さんって呼んでいいから。」
「ね、姉さん…」
照れて言うたびに顔が赤くなるのが分かった。しかし、声に出す『姉さん』という言葉が魔法の言葉のように私の胸を軽くした。
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