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ノイシュロス市
#46 運命
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モウカは一通りの話が終わると大きな溜息を吐いた。軟膏を塗った背にはガーゼが貼られていた。私は服をそっと下ろし、モウカの方に体を向けた。
「その話は本当の話なんですか?」
「…そう言われておるが、ちと信じ難いのう。今よりうんと人口が少なかったと言っても人一人が國全体から拝められるほどのことができるとは思えん。しかも、教典によれば八歳からの活躍とある。今の子供達もしっかりしておるが、なかなかに信じられんのう。」
「じゃあ、嘘なんでしょうか…。」
「……今から言うことを、聞いて、お前さんが傷つくかもしれん。それでも聞きたいか。」
モウカは悲しそうな目で私を見つめていた。どういうわけか私は聞かなければいけない気がした。怖さ、疑心、色々のものが込み上げたが、それでも聞かなければと思った。
「…はい。」
モウカは立ち上がり、話を続けた。
「ロウの人はある能力があったのではないかと言われているんじゃ。」
「能力?」
「そうじゃ。その能力は人の魂の形や色が見えるというものだそうだ。その能力は人の心を読むのと同様の力で、その力を使っていたが故に難しい争いでさえも素早く解決させれたのではないかと言われている。」
「色……」
私は偵察飛行で見にいったワイルのことを思い出した。確かにワイルは虹色に光っていたのに、他の人たちは見えていないようだった。あれはワイルが光ったのではなく、私がワイルの色を見たのだろうか。
「流石にわしもただの作り話と思っていたが、アイザーの妻であったアーツ・ミアンガがシスターとなって来てから信じざるおえんようになった。アーツは大地震にあったナマイトダフを短な期間で立て直し、ポリチカ政権にも的確な助言をするようになっていった。わしは当時、ロウの人が帰ってきたのだろうかと驚いたよ。しばらくして、本人に話を聞いてみると本人は人の魂の形が見えると言った。色は見えない。空間を歪める何かがそこにあって訳もわからず、その意味が頭で理解ができてしまうというものだった。だが、それには代償があって、お腹にある鯨型のアザが痛むらしいんじゃ。」
「アザって…」
「アーツのアザを見せてもらったが、お前さんと全く同じものじゃったよ。」
私は急に怖くなって背中を触った。背中は先程より痛くなく、軟膏が効いているように感じた。だが、何かが私の身体中を這いずり回るような感覚に陥った。痛かった。
「ロウの人とは別で不思議な古文書がつい最近見つかった。誰がなんのために書いたかは知らんが、そこにはこう書いてある。」
そういうとモウカはメモ書きのようなものを私に渡した。そこにはこう書いてあった。
『形見えしもの人を導く。色見えしもの人に寄り添う。人に災いが降ることあらば柱となって支えるべし。』
意味はよく分からなかったが、モウカがこの文は私とアーツという人を指しているのではないかと疑っているということは分かった。
「そしてこの古文書には柱となった者の運命が書かれている。…お前さん、色が見えるのではないか?」
「………はい。」
モウカはメモ書きをバックにしまうと、息継ぎをしながら苦しそうにしていった。
「もしこの古文書がロウの人やあんたら二人を指しているのなら、二人は短命の運命になっておるのじゃ。」
「それじゃ、ロウの人が早死にだったのは…」
「そういうことになるな。」
「……私はあと十年も生きられないということなんですか?」
「…分からんがな。」
私は身震いをした。急に背中に時限爆弾を仕掛けられた気がする。私が遠くに見ていた将来が一気に閉じた。泣くにも泣けず、ただただ呆然とするしかなかった。
「その話は本当の話なんですか?」
「…そう言われておるが、ちと信じ難いのう。今よりうんと人口が少なかったと言っても人一人が國全体から拝められるほどのことができるとは思えん。しかも、教典によれば八歳からの活躍とある。今の子供達もしっかりしておるが、なかなかに信じられんのう。」
「じゃあ、嘘なんでしょうか…。」
「……今から言うことを、聞いて、お前さんが傷つくかもしれん。それでも聞きたいか。」
モウカは悲しそうな目で私を見つめていた。どういうわけか私は聞かなければいけない気がした。怖さ、疑心、色々のものが込み上げたが、それでも聞かなければと思った。
「…はい。」
モウカは立ち上がり、話を続けた。
「ロウの人はある能力があったのではないかと言われているんじゃ。」
「能力?」
「そうじゃ。その能力は人の魂の形や色が見えるというものだそうだ。その能力は人の心を読むのと同様の力で、その力を使っていたが故に難しい争いでさえも素早く解決させれたのではないかと言われている。」
「色……」
私は偵察飛行で見にいったワイルのことを思い出した。確かにワイルは虹色に光っていたのに、他の人たちは見えていないようだった。あれはワイルが光ったのではなく、私がワイルの色を見たのだろうか。
「流石にわしもただの作り話と思っていたが、アイザーの妻であったアーツ・ミアンガがシスターとなって来てから信じざるおえんようになった。アーツは大地震にあったナマイトダフを短な期間で立て直し、ポリチカ政権にも的確な助言をするようになっていった。わしは当時、ロウの人が帰ってきたのだろうかと驚いたよ。しばらくして、本人に話を聞いてみると本人は人の魂の形が見えると言った。色は見えない。空間を歪める何かがそこにあって訳もわからず、その意味が頭で理解ができてしまうというものだった。だが、それには代償があって、お腹にある鯨型のアザが痛むらしいんじゃ。」
「アザって…」
「アーツのアザを見せてもらったが、お前さんと全く同じものじゃったよ。」
私は急に怖くなって背中を触った。背中は先程より痛くなく、軟膏が効いているように感じた。だが、何かが私の身体中を這いずり回るような感覚に陥った。痛かった。
「ロウの人とは別で不思議な古文書がつい最近見つかった。誰がなんのために書いたかは知らんが、そこにはこう書いてある。」
そういうとモウカはメモ書きのようなものを私に渡した。そこにはこう書いてあった。
『形見えしもの人を導く。色見えしもの人に寄り添う。人に災いが降ることあらば柱となって支えるべし。』
意味はよく分からなかったが、モウカがこの文は私とアーツという人を指しているのではないかと疑っているということは分かった。
「そしてこの古文書には柱となった者の運命が書かれている。…お前さん、色が見えるのではないか?」
「………はい。」
モウカはメモ書きをバックにしまうと、息継ぎをしながら苦しそうにしていった。
「もしこの古文書がロウの人やあんたら二人を指しているのなら、二人は短命の運命になっておるのじゃ。」
「それじゃ、ロウの人が早死にだったのは…」
「そういうことになるな。」
「……私はあと十年も生きられないということなんですか?」
「…分からんがな。」
私は身震いをした。急に背中に時限爆弾を仕掛けられた気がする。私が遠くに見ていた将来が一気に閉じた。泣くにも泣けず、ただただ呆然とするしかなかった。
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