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ノイシュロス市
#45 ロウの人
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二〇〇〇年代、人間は自分たちの罪を認識し始めた。温室効果ガス、水質汚濁などによる自然破壊は怒涛のスピードで進んでいった。それに拍車をかける人口増加がもたらす効果は目も当てられないほどだった。
そんな中、一部の善良な人間は大変革計画を始動させた。数々の国に別れていた人々に声かけをし、自然の大切さを布教していた。また貧困問題や戦争撲滅運動を行なっていた。しかし、その結果は目標までには程遠く、二〇三〇年までの解決はあまりに無謀なものだった。そして善良な人間の善良さにも限界が訪れる。
大量殺人を水面下で行なったのだ。それはウイルスによるものだった。世界中の人々は困惑しながらも何とかして疫病を抑えようとしたが、開発されたウイルスは止まることを知らなかった。変異を繰り返し、感染力も致死率も増していったウイルスは多くの人々の命を奪っていった。これを第一次滅亡期という。
その後にウイルスは人によるものだったという事実が世界中に広まり、またこの世界で生きられる人間の数には限りがあるという事実も広まっていた。あらゆる国々は武器を持ち、争いを始めた。少しでも自国の人間が、自分の家族が生きられるように他国の人間を殺した。それまでの侵略戦争とは違う、人を殺すことが目的の争いであった。これを第二次滅亡期という。そしてこれは自然破壊を助長させるものであった。
三〇〇〇年代、それでも生き残り生活を営んでいた人間たちにさらなる不幸が降り注いだ。それは世界規模の謎のエネルギー凝縮現象だった。空と海は血の如くに真っ赤に染まり、大半の生き物が苦しみながら死んでいった。それはまさに地獄絵図だった。これを第三次滅亡期という。しかし、数少なく残った人々はまだ諦めなかった。四〇〇〇年まで第四次滅亡期、第五次滅亡期が起こり、海面上昇で大地は狭くなっていったが、人々は住む場所を変え、生き方を変え、生き続けることをやめなかった。そして四六三九年、自然環境の安定が訪れ、人々は再び人間らしく生きようと決心した。
しかし、そう簡単にいくものでは無かった。元々、点でバラバラでいた人達は生き方も話し方も全く違っていた。人々は意見を押し付け合い、争いあった。価値観や生活、容姿までもが争いの火種となった。
そんな中、ある子は思い悩んでいた。このままでは人間は本当に壊れてしまう。何とかして人々を丸くまとめなければ、と。そしてその子は動いた。あるゆる者たちの争いの仲介をしたのだ。意見の押し付け合いで争う者たちには、相手に理解をして欲しければ先ずは相手の意志を理解しようと試みることが大切だと説き、生活の形が合わずに争う者たちには、生活区域をみんなで話し合って決めれば良いと提案をした。容姿で争っていた者たちにはお互いの良いところだけを見ようとすることが最初にすべきことであり、そうすると自然にお互いが美しく見えると説いた。これは大変な苦労であった。最初の方はまだ単純な問題が多かったが、時を重ねるにつれて問題は複雑化を増していった。それでも諦めることなく、腐ることなく、大きくなったソノヒトは問題解決に勤しんだ。
社会と呼べるものができた後、人々はソノヒトを新しくできた国、後のリベフィラ國の長にした。ソノヒトはあらゆる社会の仕組みの基盤や方針を決めていった。どれだけ国が良くなっても、困っている人が一人でもいれば努力を怠ることはなかった。
ある日、ソノヒトは病にかかった。心の病だった。人のためにと身を削りすぎてしまったのだ。ソノヒトはみるみると痩せていき、回復はしなかった。そして、ソノヒトは沢山の人々に囲まれて亡くなった。齢二十七。病にかかってから一年ともたずに亡くなった。早すぎる死であった。
ソノヒトの死後、人々はソノヒトを神として崇め、ソノヒトが説いた教えを教典としてまとめた。これがアイズ教である。その後のリベフィラ國はソノヒトの子孫がアイズ教を元にして治めていった。
ソノヒトの名はどこにも残されておらず不明だったため、人々はソノヒトを周りを明るく照らす火を身を削りながら支える蝋のような人という意味で『ロウの人』と呼ぶようになったのである。
そんな中、一部の善良な人間は大変革計画を始動させた。数々の国に別れていた人々に声かけをし、自然の大切さを布教していた。また貧困問題や戦争撲滅運動を行なっていた。しかし、その結果は目標までには程遠く、二〇三〇年までの解決はあまりに無謀なものだった。そして善良な人間の善良さにも限界が訪れる。
大量殺人を水面下で行なったのだ。それはウイルスによるものだった。世界中の人々は困惑しながらも何とかして疫病を抑えようとしたが、開発されたウイルスは止まることを知らなかった。変異を繰り返し、感染力も致死率も増していったウイルスは多くの人々の命を奪っていった。これを第一次滅亡期という。
その後にウイルスは人によるものだったという事実が世界中に広まり、またこの世界で生きられる人間の数には限りがあるという事実も広まっていた。あらゆる国々は武器を持ち、争いを始めた。少しでも自国の人間が、自分の家族が生きられるように他国の人間を殺した。それまでの侵略戦争とは違う、人を殺すことが目的の争いであった。これを第二次滅亡期という。そしてこれは自然破壊を助長させるものであった。
三〇〇〇年代、それでも生き残り生活を営んでいた人間たちにさらなる不幸が降り注いだ。それは世界規模の謎のエネルギー凝縮現象だった。空と海は血の如くに真っ赤に染まり、大半の生き物が苦しみながら死んでいった。それはまさに地獄絵図だった。これを第三次滅亡期という。しかし、数少なく残った人々はまだ諦めなかった。四〇〇〇年まで第四次滅亡期、第五次滅亡期が起こり、海面上昇で大地は狭くなっていったが、人々は住む場所を変え、生き方を変え、生き続けることをやめなかった。そして四六三九年、自然環境の安定が訪れ、人々は再び人間らしく生きようと決心した。
しかし、そう簡単にいくものでは無かった。元々、点でバラバラでいた人達は生き方も話し方も全く違っていた。人々は意見を押し付け合い、争いあった。価値観や生活、容姿までもが争いの火種となった。
そんな中、ある子は思い悩んでいた。このままでは人間は本当に壊れてしまう。何とかして人々を丸くまとめなければ、と。そしてその子は動いた。あるゆる者たちの争いの仲介をしたのだ。意見の押し付け合いで争う者たちには、相手に理解をして欲しければ先ずは相手の意志を理解しようと試みることが大切だと説き、生活の形が合わずに争う者たちには、生活区域をみんなで話し合って決めれば良いと提案をした。容姿で争っていた者たちにはお互いの良いところだけを見ようとすることが最初にすべきことであり、そうすると自然にお互いが美しく見えると説いた。これは大変な苦労であった。最初の方はまだ単純な問題が多かったが、時を重ねるにつれて問題は複雑化を増していった。それでも諦めることなく、腐ることなく、大きくなったソノヒトは問題解決に勤しんだ。
社会と呼べるものができた後、人々はソノヒトを新しくできた国、後のリベフィラ國の長にした。ソノヒトはあらゆる社会の仕組みの基盤や方針を決めていった。どれだけ国が良くなっても、困っている人が一人でもいれば努力を怠ることはなかった。
ある日、ソノヒトは病にかかった。心の病だった。人のためにと身を削りすぎてしまったのだ。ソノヒトはみるみると痩せていき、回復はしなかった。そして、ソノヒトは沢山の人々に囲まれて亡くなった。齢二十七。病にかかってから一年ともたずに亡くなった。早すぎる死であった。
ソノヒトの死後、人々はソノヒトを神として崇め、ソノヒトが説いた教えを教典としてまとめた。これがアイズ教である。その後のリベフィラ國はソノヒトの子孫がアイズ教を元にして治めていった。
ソノヒトの名はどこにも残されておらず不明だったため、人々はソノヒトを周りを明るく照らす火を身を削りながら支える蝋のような人という意味で『ロウの人』と呼ぶようになったのである。
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