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ノイシュロス市
#42 ディモンの生態 (アリー)
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「ルコ隊長。ラコ副隊長。これは一体なんなんですか!?」
勢いよく聞いたクロの質問に二人は少しの沈黙を作った後答えを出した。
「飛行型ディモンにも一定の活動領域があると考えられる。今までは推測でしかなかったけどね。」
「歩行型は胞子蔓延区域でのみ生存可能ですが、飛行型は胞子が無くても生存が可能です。活動領域に条件があるとは思えません。」
「じゃあ、どうして胞子の無いナマイトダフやシュタンツファーに飛行型ディモンは行かないの?」
「それは…餌場などの関係とか…。飛行時間とか…。」
「それも無いとは言えないけど、それだと私たちの基地に出現しないことは説明がつかなくなる。」
クロも私も同じことを話したことがあったが、胞子の研究はおろか飛行型ディモンに遭遇する機会でさえ少なかったため、何とか理由をつけてそういうものだと落とし込んでいた。だが、今私たちはワイルが見えないところにいる。そしてディモンは近づいてきていない。ということはディモンはワイルが見えないところでは活動が出来ないということだ。でも、何故だろうか。歩行型はワイルとの関係性はあまり見られないように見えたのだが。私は今まで起きたことを全て整理していた。
「…音波。」
自然とでた答えは簡単なものだった。
「さすがアリリ!正解!!」
「正確にいうと音波じゃなくて、圧力波なんだけどね。これも鯨の生態と同じだよ。たぶんワイルを介してディモンたちは圧力波でコミュニケーションしながら活動してるんだよ。その圧力波も一定の範囲内じゃないと届かないんじゃないかな。」
「ラコ!私が言いたかったのに!」
「どっちでもいいでしょ!」
そうなると先程無線を妨害したのはワイルの圧力波によるものだ。あの時同時にベリアが不調を訴えた。考えていくうちに私はベリアに対しての疑問を抱き始めていた。
「でも、どうしてこんな数のディモンが…」
「それまでは分からない。…多分だけどベリアちゃんが関係していると私は思う。」
ルコの言葉は私の気持ちとそのままであった。おそらくこの子はワイルとの間に何らかの通ずるものを持っている。それが良いものなのか、悪いものなのか。答えによってはこの子の運命は大きく変わってしまう。そう思うとここに連れてきたことを強く後悔した。
「おばあちゃん。何か知ってるんじゃないの?」
「……。」
「答えてもらわないと困るよ。国の人たちの命に関わることだもん。」
「…時期が来たら教えよう。その前にこの子と二人きりで話させて欲しいんじゃ。この子の気持ちのこともあるでの。」
「時期って……」
ルコの声をかき消したのは戦闘機五機の轟音だった。
「応援が来ました!!」
応援と言ってもディモンの数が多すぎる。ディモンたちは一気に戦闘機を襲い始めた。犠牲なしには勝てない。
「数が多すぎる…。」
私の言葉を聞いたラコは嬉しそうな笑顔で、満を持して話し始めた。
「第二部隊は戦闘に特化した部隊だよ。こんなんで死ぬような生半可な指導はしてないつもりだよ。」
そうか。パイロットの指導責任者はラコだ。十八歳の少女の言葉なのに信頼度が桁外れに大きい。ラコの言葉にルコが付け加えた。それを裏付けるように戦闘機たちは素早くディモンを殲滅している。
「部下が死ぬのは上が弱いからだよ。私たちは中途半端にここで戦ってるんじゃない。ディモン殲滅、ワイルの観察も仕事だけど、その前に私たちは部下の命を守る義務がある。もちろんアリリも含めだよ。」
節々に思う。戦闘のためにファタング隊で養成されたこの二人には私が何年かけても敵わないであろうプロ意識がある。
戦闘機がディモンをある程度片付けた後に私たちはその隙間を縫って基地へと向かっていった。どの航空隊よりも見事な飛行だった。
勢いよく聞いたクロの質問に二人は少しの沈黙を作った後答えを出した。
「飛行型ディモンにも一定の活動領域があると考えられる。今までは推測でしかなかったけどね。」
「歩行型は胞子蔓延区域でのみ生存可能ですが、飛行型は胞子が無くても生存が可能です。活動領域に条件があるとは思えません。」
「じゃあ、どうして胞子の無いナマイトダフやシュタンツファーに飛行型ディモンは行かないの?」
「それは…餌場などの関係とか…。飛行時間とか…。」
「それも無いとは言えないけど、それだと私たちの基地に出現しないことは説明がつかなくなる。」
クロも私も同じことを話したことがあったが、胞子の研究はおろか飛行型ディモンに遭遇する機会でさえ少なかったため、何とか理由をつけてそういうものだと落とし込んでいた。だが、今私たちはワイルが見えないところにいる。そしてディモンは近づいてきていない。ということはディモンはワイルが見えないところでは活動が出来ないということだ。でも、何故だろうか。歩行型はワイルとの関係性はあまり見られないように見えたのだが。私は今まで起きたことを全て整理していた。
「…音波。」
自然とでた答えは簡単なものだった。
「さすがアリリ!正解!!」
「正確にいうと音波じゃなくて、圧力波なんだけどね。これも鯨の生態と同じだよ。たぶんワイルを介してディモンたちは圧力波でコミュニケーションしながら活動してるんだよ。その圧力波も一定の範囲内じゃないと届かないんじゃないかな。」
「ラコ!私が言いたかったのに!」
「どっちでもいいでしょ!」
そうなると先程無線を妨害したのはワイルの圧力波によるものだ。あの時同時にベリアが不調を訴えた。考えていくうちに私はベリアに対しての疑問を抱き始めていた。
「でも、どうしてこんな数のディモンが…」
「それまでは分からない。…多分だけどベリアちゃんが関係していると私は思う。」
ルコの言葉は私の気持ちとそのままであった。おそらくこの子はワイルとの間に何らかの通ずるものを持っている。それが良いものなのか、悪いものなのか。答えによってはこの子の運命は大きく変わってしまう。そう思うとここに連れてきたことを強く後悔した。
「おばあちゃん。何か知ってるんじゃないの?」
「……。」
「答えてもらわないと困るよ。国の人たちの命に関わることだもん。」
「…時期が来たら教えよう。その前にこの子と二人きりで話させて欲しいんじゃ。この子の気持ちのこともあるでの。」
「時期って……」
ルコの声をかき消したのは戦闘機五機の轟音だった。
「応援が来ました!!」
応援と言ってもディモンの数が多すぎる。ディモンたちは一気に戦闘機を襲い始めた。犠牲なしには勝てない。
「数が多すぎる…。」
私の言葉を聞いたラコは嬉しそうな笑顔で、満を持して話し始めた。
「第二部隊は戦闘に特化した部隊だよ。こんなんで死ぬような生半可な指導はしてないつもりだよ。」
そうか。パイロットの指導責任者はラコだ。十八歳の少女の言葉なのに信頼度が桁外れに大きい。ラコの言葉にルコが付け加えた。それを裏付けるように戦闘機たちは素早くディモンを殲滅している。
「部下が死ぬのは上が弱いからだよ。私たちは中途半端にここで戦ってるんじゃない。ディモン殲滅、ワイルの観察も仕事だけど、その前に私たちは部下の命を守る義務がある。もちろんアリリも含めだよ。」
節々に思う。戦闘のためにファタング隊で養成されたこの二人には私が何年かけても敵わないであろうプロ意識がある。
戦闘機がディモンをある程度片付けた後に私たちはその隙間を縫って基地へと向かっていった。どの航空隊よりも見事な飛行だった。
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