ロウの人 〜 What you see 〜

ムラサキ

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シュタンツファー市

#11 温かい朝食

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リーヌとカフェを出たあと、リーヌの父親の車に乗って、リーヌの家にお邪魔した。

「ベリアちゃん、ほんとうにすまなかった。あの時置いて行くべきではなかった。でも、これからは俺たちが君の家族だ。何でも言ってくれ。」

リーヌの父親はものすごく誠実で真面目な人である。

「いえいえ、あの時はそれで仕方なかったんですよ。祖父はあの時寝たきりだったし…。」
「サンオさんは?…もしかして…」
「いや!祖父は無事にナマイトダフの病院に行くことができました。」
「よかった…。」

車の中で何度も何度もリーヌの父親は私に謝った。

家に着いたあと、小学五年になった次男のライヤと小さい子供二人と母親が私を迎えてくれた。長男は今家を出ているらしい。
それから私はリーヌの家族とご飯を食べ、久しぶりの湯船に入り、床についた。

「なんか夢みたい。覚めたらあの山の物置に戻ってそう。」
「何言ってるの、ベリアちゃん!君はもう私の家族みたいなものなんだから!ね!」
「うん、ありがとう。リーヌ。」

私はその夜、安心感に包まれて、眠りについた。

ーーー翌朝ーーー

「ベリアちゃーん。朝だよー。」
「……ん?」
「おはよう~」
「……おはよう。」

寝起きの悪い私は状況が把握できず、唸りながらベットを出た。
顔を洗い、もらった服に着替え、アリーからの蝶の飾りがついた髪ゴムで髪を纏め、リビングに出た。リビングにはすでに子供達とリーヌが席についており、リーヌの母親は朝御飯の支度をしていた。

「………ここ、どこ?…」
「何言ってるの!私の家だよ!」
「あ、そうか。まだ夢見心地で。目が覚めてないのかな。」
「もう!ベリアちゃんったら!あははっ!」

そうか。私はいよいよ安全と自由を手に入れたのだ。いつ死ぬか分からないような日々を送らなくてもいいのだ。再びそのことを考えると心がいっぱいになった。

「みんな~!朝ごはんできたわよー!」
「「「「はーい!!」」」」

「あれ、パパさんは?」
「あー、お父さんは四時出勤なの。」
「あれ、待って。リーヌ、それって制服?」
「そうよ!可愛いでしょう~!ベリアちゃんも体重が回復したら一緒に着るんだからね!」
「うん!すごく可愛い……」

私はまだ健康基準を満たしていないため、体重が戻るまでは学校にいけないのだ。

「そっかぁ。今日はリーヌがいないのか……。」
「すぐ帰ってくるからね!」

そんなやりとりをしていると、母親が焼きたてのパンとハム付きの目玉焼きを持ってきた。今まで食べてきた即席麺ではない。温かい朝食だった。その温かさに私はまた涙した。

「朝ごはんも食べれてなかったのね。かわいそうに…。でも、もう忘れなさい。辛かったことも悲しかったことも。これからは普通に生きていけるわ。」
「……はい。」

私はパンを食べた。とてもおいしかった。とても嬉しかった。だが、この時もまた霧がかった気持ちがした。
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