ロウの人 〜 What you see 〜

ムラサキ

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シュタンツファー市

#10 幼馴染、リーヌ

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「ベリアちゃん…!?なんで泣いてるの?」
「いや、懐かしくなって……もう私安全な場所にいるんだって思って…。グスッ」
「そうだよね。ほんとに無事で良かった。守ってあげれなくてごめんね…。」
「なんでリーヌが泣いてんの。余計に泣けるじゃん…。」
「私もずっと心配してたんだから!!」

私たちはお互いの涙を見ていたはずなのに、いつの間にかお互いの笑っている顔を見ていた。

時計台から近くのカフェに移り、いろいろな話をした。
リーヌはワイルが出現する前にノイシュロス市という街に引っ越していった。ナマイトダフ地震があった後、ハイヒブルック市は原因不明の環境悪化が増し、引っ越していく人が多くなっていたのだ。
リーヌの両親は農家で土地愛が非常に強く、最後の最後まで残ろうとしたが、リーヌを含む五人の子供のため、引っ越しを決意した。引っ越す前に、土地を見つけれたら私と私の祖父を必ず迎えに来る、と言ってくれた。しかし、リーヌの家族が出発した二日後、長い揺れと共にワイルが出現。内側はもちろん、外側からハイヒブルック市に入れないほどの被害だった。私たちはその後から連絡を取ることができなくなった。

最近のリーヌは高校で大学受験の勉強をしているらしい。
そもそも学校があること自体に私は驚いた。しかも大学まであるとは。
高校は市内で十五校、大学は大きな規模のものが五校あるそうだ。

リーヌはワイルの出現後、引っ越しの身支度は避難の身支度に代わり、ノイシュロスに行ったものの、すぐに被害のないシュタンツファーに行ったそうだ。
ワイルが出現してから二ヶ月ほど学校はおろか、全ての職場や機関が停止。全国は混乱に陥っていたそうだ。リーヌはこの時を戦争中のようだった、と言った。

「私、何度もハイヒブルックに行こうとしたの。でも結局、大人に止められた。そのくせ政府の大人たちは機関を再生するのを優先させて避難しなきゃいけない人たちを後回しにしたんだよ!…確かに国の機関が大切なのはわかるけど、人の命には変えられないだろってすごく怒った。
学校が再開して、故郷に友達や親戚が残っているっていう子たちとたくさん知り合った。その子たちと団結してお父さんを先頭にデモ隊を作ったの。それでも政府は動いてくれなかった。でも、復興途中だったナマイトダフのファタング隊のアルティアさんって方が直接私の家に来て、私たちに任せてくださいって言ってくださった。蔓延した胞子やディモンの存在が未確認だったからすぐには救助できなかったみたいだけど、逐一現状報告をしてくださった。そして、その流れで今あなたが目の前にいる。
ほんとに申し訳ないって気持ちで押し潰されそうだった……ほんとに……」
「リーヌ……」

リーヌは大粒の涙を流しながら言った。

「自暴自棄にならなくて良かった。ほんの欠片でしか役に立てれてないかもだけど頑張って良かったって思ってる。」
「ううん!全部リーヌとリーヌのご家族、それとデモ隊の皆様のおかげだよ!!ほんとにありがとう。……ありがとう…」

そのあとも、気の済むまで二人で泣いたり笑ったりしてカフェを出た。
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