9 / 60
シュタンツファー市
#9 髪結び
しおりを挟む
市役所に入ると、一流ホテルのような大理石の床が広がり、両脇には大きな西洋彫刻が飾られており、中央にはシャンデリアのような受付が置いてあった。
「おはようございます。今回はどのような件でございましょうか。」
「ハイヒブルック市から避難をしてきた子の住民登録、その他諸々の手続きをするために来ました。」
「左様でございますか。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。」
「ベリア・ハイヒブルックです。」
「ありがとうございます。では今から住民課の者を呼んできます。しばらくお待ちください。」
とってつけたような笑顔を保ったままの女性はそのまま作業に取り掛かる。
「ここは玄関がすごいだけで、中は普通なのよ。」
と、含み笑いでアリーは私に静かな声で言った。
「おはようございます。住民課所属でハイヒブルック様を担当させていただきます。よろしくお願いします。」
そう言いながら、とってつけたような笑顔を保ったままの男性は私たちを部屋へ案内して行った。
そのあとは長い時間、証明写真の制作含め、必要となる全ての手続きを行った。最後に身寄りの話になり、一番親しかった幼馴染、リーヌ・ハイヒブルックの家族に招き入れてもらうことになった。
「これで貴方もシュタンツファー市民よ。私はナマイトダフ行きの電車が出るまではこの街に残るわ。」
「あれ、電車ってないんじゃ」
「それはワイルの周辺だけ。シュタンツファーからナマイトダフまでは線路がやっとできてね。早い電車は走れないんだけど、ちゃんとあるのよ。」
「その電車はいつ出発なんですか?」
「予定通り行けば、二週間後だわ」
「…」
「…」
「そうだ!ベリア!貴方、髪がクシャクシャになってるわ!」
「え?」
「直してあげる」
アリーは器用に私の長い髪をポニーテールでまとめてくれた。どこか懐かしい気がした。
「できた!」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、こういうの得意なのよ。」
「それだけじゃなくて、避難から何から何まで。アリーさん寝てなかったですよね。本当に親身になってくださって、ありがとうございました。」
「………」
「アリー、さん?」
「いいのよ。私の仕事だもの。」
アリーは柔らかく微笑み私の顔をずっと見ていた。
「私は二週間後の夜二十時発に乗るからね。」
「……はい」
アリーは軽く別れの言葉を残して郵便の職員と奥の部屋へ行ってしまった。
本当にお世話になった。後に、結ばれたところを触ってみると、金属でできた蝶々の髪飾りがついてることに気づいた。
しばらくして、待ち合わせの時計台まで行った。
時計はすでに十五時をまわっていた。
「ベリアちゃん!!」
そこには、最後に会った時と何も変わらない幼馴染の姿がそこにあった。
私はその姿を見て目が熱くなった。目の前がぼやけてリーヌの姿もぼやけたあと、私の頬に生暖かいものが流れたのがわかった。
「おはようございます。今回はどのような件でございましょうか。」
「ハイヒブルック市から避難をしてきた子の住民登録、その他諸々の手続きをするために来ました。」
「左様でございますか。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。」
「ベリア・ハイヒブルックです。」
「ありがとうございます。では今から住民課の者を呼んできます。しばらくお待ちください。」
とってつけたような笑顔を保ったままの女性はそのまま作業に取り掛かる。
「ここは玄関がすごいだけで、中は普通なのよ。」
と、含み笑いでアリーは私に静かな声で言った。
「おはようございます。住民課所属でハイヒブルック様を担当させていただきます。よろしくお願いします。」
そう言いながら、とってつけたような笑顔を保ったままの男性は私たちを部屋へ案内して行った。
そのあとは長い時間、証明写真の制作含め、必要となる全ての手続きを行った。最後に身寄りの話になり、一番親しかった幼馴染、リーヌ・ハイヒブルックの家族に招き入れてもらうことになった。
「これで貴方もシュタンツファー市民よ。私はナマイトダフ行きの電車が出るまではこの街に残るわ。」
「あれ、電車ってないんじゃ」
「それはワイルの周辺だけ。シュタンツファーからナマイトダフまでは線路がやっとできてね。早い電車は走れないんだけど、ちゃんとあるのよ。」
「その電車はいつ出発なんですか?」
「予定通り行けば、二週間後だわ」
「…」
「…」
「そうだ!ベリア!貴方、髪がクシャクシャになってるわ!」
「え?」
「直してあげる」
アリーは器用に私の長い髪をポニーテールでまとめてくれた。どこか懐かしい気がした。
「できた!」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、こういうの得意なのよ。」
「それだけじゃなくて、避難から何から何まで。アリーさん寝てなかったですよね。本当に親身になってくださって、ありがとうございました。」
「………」
「アリー、さん?」
「いいのよ。私の仕事だもの。」
アリーは柔らかく微笑み私の顔をずっと見ていた。
「私は二週間後の夜二十時発に乗るからね。」
「……はい」
アリーは軽く別れの言葉を残して郵便の職員と奥の部屋へ行ってしまった。
本当にお世話になった。後に、結ばれたところを触ってみると、金属でできた蝶々の髪飾りがついてることに気づいた。
しばらくして、待ち合わせの時計台まで行った。
時計はすでに十五時をまわっていた。
「ベリアちゃん!!」
そこには、最後に会った時と何も変わらない幼馴染の姿がそこにあった。
私はその姿を見て目が熱くなった。目の前がぼやけてリーヌの姿もぼやけたあと、私の頬に生暖かいものが流れたのがわかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
陸のくじら侍 -元禄の竜-
陸 理明
歴史・時代
元禄時代、江戸に「くじら侍」と呼ばれた男がいた。かつて武士であるにも関わらず鯨漁に没頭し、そして誰も知らない理由で江戸に流れてきた赤銅色の大男――権藤伊佐馬という。海の巨獣との命を削る凄絶な戦いの果てに会得した正確無比な投げ銛術と、苛烈なまでの剛剣の使い手でもある伊佐馬は、南町奉行所の戦闘狂の美貌の同心・青碕伯之進とともに江戸の悪を討ちつつ、日がな一日ずっと釣りをして生きていくだけの暮らしを続けていた……
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる