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ハイヒブルック市
#7 非常食の朝食
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ハイヒブルック市を出て、しばらく経った。馬車の揺れは少し収まってきたがそれでも時々くる大きな揺れでなかなか眠れない。体が痛い。馬車は人生で初めて乗ったが、車という人類の世紀の発明の凄さが身に染みて感じれる。
アリーはずっと起きている。あくまでもアリーは任務で私といるのだから、安心して眠れるはずもない。それでも少しは寝てもいいのではないかと心配になる。
「そろそろ、朝ごはんにしましょ。
馭者さん、停めれそうな場所が確認できたら停めてください。」
「あいよ」
私たちは山道の脇に馬車を停め、朝食を食べた。朝食といっても携帯用の非常食だ。味はあまりない。
馭者が馬の水を少し先にある小さな川で汲むのを手伝ったあと、アリーも朝食をとり始めた。
「シュタンツファーに着いたらもっと美味しいものが食べられるわ。我慢してね。」
「アリーさんはシュタンツファーに行ったことあるんですか?」
「そりゃ、あるわよ。好きで最初からナマイトダフに行く人なんてそういないわ。」
私の質問がおかしかったのか、そうい言いながら彼女は笑った。
「じゃあ、アリーさんは元々シュタンツファーに住む予定だったんですか?」
「うん。安全だし、仕事もあるし、ほとんど前の世界と同じ街並みだしね。避難した時は故郷が少し恋しかったけど、それでもシュタンツファーに行けるって大喜びしてた。」
「どうしてナマイトダフに行くことになったんですか?」
「……うーん、そうね…」
アリーはどこか悲しいような、懐かしむような表情をしながら食べかけの非常食を見つめていた。
「なんでだったか、忘れたわ、うふふ」
スッキリした顔で私に笑いかけた。
「もしかしたら、貴方もシュタンツファーに着いたら分かるかも知れないわね。」
「え?」
「その前に!到着しなきゃ話が始まらないわ!早く行きましょう!」
「…はい」
すると、馭者さんが重たそうな腰を上げ、こちらに近づいてきた。
「お姉さんや、ワシもちと休みたいで昼になったら休んでええか」
「あ!気が利かなくて申し訳ありません。」
「いやいや、こんな年寄りですまんの」
「そんな乗せていただけるだけでありがたいです。
昼になったら仮眠が取れる場所でゆっくりしてください。その間私が馬の世話をしておくので。」
「いやいや、お姉さんも寝てええよぉ。」
「私は大丈夫ですから。ご心配ありがとうございます。」
「あの、アリーさん」
「ん?」
「寝れる場所なんてあるんですか?」
「うん。この先はもう下りだから昼になれば平野に出るわ。夕方頃にはシュタンツファーの湖までいけるんじゃないかな。」
意外と早く着きそうだと思っていたのだが、それが顔に出ていたのかアリーはすぐにシュタンツファーに入ってからも大分時間はかかると笑いながら言った。
この時はまだアリーがナマイトダフを選んだ理由の重たさをちゃんと理解していなかった。
アリーはずっと起きている。あくまでもアリーは任務で私といるのだから、安心して眠れるはずもない。それでも少しは寝てもいいのではないかと心配になる。
「そろそろ、朝ごはんにしましょ。
馭者さん、停めれそうな場所が確認できたら停めてください。」
「あいよ」
私たちは山道の脇に馬車を停め、朝食を食べた。朝食といっても携帯用の非常食だ。味はあまりない。
馭者が馬の水を少し先にある小さな川で汲むのを手伝ったあと、アリーも朝食をとり始めた。
「シュタンツファーに着いたらもっと美味しいものが食べられるわ。我慢してね。」
「アリーさんはシュタンツファーに行ったことあるんですか?」
「そりゃ、あるわよ。好きで最初からナマイトダフに行く人なんてそういないわ。」
私の質問がおかしかったのか、そうい言いながら彼女は笑った。
「じゃあ、アリーさんは元々シュタンツファーに住む予定だったんですか?」
「うん。安全だし、仕事もあるし、ほとんど前の世界と同じ街並みだしね。避難した時は故郷が少し恋しかったけど、それでもシュタンツファーに行けるって大喜びしてた。」
「どうしてナマイトダフに行くことになったんですか?」
「……うーん、そうね…」
アリーはどこか悲しいような、懐かしむような表情をしながら食べかけの非常食を見つめていた。
「なんでだったか、忘れたわ、うふふ」
スッキリした顔で私に笑いかけた。
「もしかしたら、貴方もシュタンツファーに着いたら分かるかも知れないわね。」
「え?」
「その前に!到着しなきゃ話が始まらないわ!早く行きましょう!」
「…はい」
すると、馭者さんが重たそうな腰を上げ、こちらに近づいてきた。
「お姉さんや、ワシもちと休みたいで昼になったら休んでええか」
「あ!気が利かなくて申し訳ありません。」
「いやいや、こんな年寄りですまんの」
「そんな乗せていただけるだけでありがたいです。
昼になったら仮眠が取れる場所でゆっくりしてください。その間私が馬の世話をしておくので。」
「いやいや、お姉さんも寝てええよぉ。」
「私は大丈夫ですから。ご心配ありがとうございます。」
「あの、アリーさん」
「ん?」
「寝れる場所なんてあるんですか?」
「うん。この先はもう下りだから昼になれば平野に出るわ。夕方頃にはシュタンツファーの湖までいけるんじゃないかな。」
意外と早く着きそうだと思っていたのだが、それが顔に出ていたのかアリーはすぐにシュタンツファーに入ってからも大分時間はかかると笑いながら言った。
この時はまだアリーがナマイトダフを選んだ理由の重たさをちゃんと理解していなかった。
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