ロウの人 〜 What you see 〜

ムラサキ

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ハイヒブルック市

#2 第三部隊のアリーとクック

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私が声を発する前にその男性は布で私の口を押さえつけた。

「胞子が蔓延してます。苦しいと思いますが、息をできるだけ止めてください。」

最初は何が起きているのか分からず放心していたが、急に恐ろしくなって震えた。怪物をあんな至近距離で見たのは初めてだ。思っていた大きさより少しだけ小さかったが、それでも大きかった。

「もう大丈夫です。僕たちがついてます。」

彼は私の恐怖心に気づいたのか優しい声をかけてくれた。

「おーい!ガスマスク持ってきたよ!」

声のする方向からガスマスクを持ち、男性と同じような隊服を着た人が駆け寄ってきた。間近で見てやっと分かったが女性だった。

「ガスマスクつけますね。………
もう息しても大丈夫ですよ。苦しくはないですか?」
「はい」

女性は私にガスマスクをつけた後そっと優しく背中を撫でてくれた。

「あなた……」
「…はい」
「ううん、なんでもないわ。無事でよかった。」

少し不安気な声がした。女性は私の背中をさすっていた手を肩に置いてそこから腕をつたって私の手を優しく握った。

向こう側で男性が何処かと連絡をしていた。

「…はい。とりあえず要救助者の避難場所に行き、そこで聴取をしたいと思います。…はい。着いたら連絡します。
…いえ、痩せてはいますが意識もはっきりしていますし大丈夫かと…はい。
失礼します。」

連絡が終わったのか男性がこちらに向かってくる。

「君の住んでいるところに案内してほしいです。そこでいろいろ聞かせてください。」
「…分かりました。」
「そんなに警戒しないでいいわ。私はファタング隊第三部隊に所属している
アリー・リーリックっていうの。よろしくね。」
「同じく第三部隊のクック・ドルです。よろしく。」

男性は明るく女性は優しくそう言ったが、私はまだ受け止めれそうにもなく、ただただ息をするしかなかった。

彼らと山を登った。アリーは私の手をずっと握っていた。クックは道中何回か何処かと連絡をとっていた。しばらくして祖父のいる家に着いた。

「ベリア!!なんだその方々は!?」
「ファタング隊の者です。ハイヒブルック市の要救助者捜索のためやって参りました。」
「あー、助けが来たのか…良かった…」

気が抜けたのか祖父はその場で腰を抜かしてしまった。

クックはどこかと連絡をとっている。

私はガスマスクを外し、彼らもガスマスクを外した。初めて顔を見た。
アリーは少し吊り目でお堅い雰囲気だが微笑んだ表情はとても優しい。
クックは口調の通りの明るそうな顔で瞳の色が少しだけ青く見える。

「あ!アルティア隊長!メル副隊長!ここです!」

クックが見る方角をみると、高身長で強面な男性と私と同じくらいの背格好でしたたかそうな女性を先頭に、隊員数名がこちらに向かっていた。
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