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第1章「警察官になりました」
5話「不幸を与えるカメラ」
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カメラからは何者かの霊力が検出された。
「能力を付加する?」
「そうです。私も出来るんですけど、このカメラに術を施した
術者はかなりの手練れですよ。ユリさんが術者ではないとしたら離れた
位置から術をずっとかけ続けているんですから」
そう語るのは監察ではない。一般職員、美澤六花。道具に何かしらの
能力を付加することが出来る。長い髪を掻き分けて彼女はカメラを
舞雪に手渡した。
「じゃあ、しっかり返してきてね」
「分かってますよ」
月影写真館に再び訪れるとユリは昨日と変わらない様子で店を経営していた。
「凄く良い写真が撮れました」
「そう、良かった。そうだわ、折角だからカメラで写真を撮ってあげる」
ユリは舞雪から受け取ったカメラを構える。
「良いのよ、遠慮しないで。料金もいらないわ。見返りも何も…ね」
妖しい笑みを浮かべる。この時、彼女の隠された本性が見えた気がした。
彼女は自身の写真館で思い出作りをした人たちを仮死状態に追いやっていることを
承知している。知っていても尚、このカメラを手放さない。
「…良いんですか?それならお願いします!」
ユリはきっと舞雪が苦しむ様を見たがっている。
馬鹿な女、この写真は貴方の遺影になるのよ。隣に立つ男諸共ね!
「はい、チーズ」という合図と同時にシャッター音が聞こえた。そのあとに
笑い出した彼女はすぐに固まった。目の前にいる彼女たちは何事も無かったかのように
そこに立っているでは無いか。
「どうして…一体、どうして!?」
「私たち、霊障対策課の刑事ですよ。名前ぐらい聞いたことあるはずです。カメラには
撮った人に呪いを掛けているんでしょう?このカメラだけ、やけに強力だったから」
「だけどこの術はアンタが掛けた訳じゃない。別の人間がカメラに術を付加し、
アンタはそのカメラを使って人を撮影する。こういう場所で撮影に来るのは結婚記念とか
入学祝いとか、何かしらめでたいことがある人だ。色々調べさせてもらったよ」
ユリは歯噛みする。この女は誘惑に負けた。彼女は本来ならば犯罪に手を染めることは
無かった。結婚し、子を産み幸せな家庭を築く。ある日、彼女は夫が自分から金を
巻き上げていることを知った。彼女は彼を徹底的に調べて不倫を知る。
『君ばかり、不幸な目に遭っているね。それは不公平だと思わないかい?』
カメラに術を付加した術者に目を付けられて、まんまと彼女は犯罪に手を染めた。
「こんなの不公平よ!私だって不幸なの、周りを不幸にして何が悪いの…!!」
「悪いです。自分が行ったことは自分に倍になって返ってくるんです。苦しんでいるのは
貴方だけではないと思いますよ」
「…不思議な子。まだ若いのに妙に達観してるのね貴方」
そう言ってユリは自身の両手を出した。自身が人を困らせていたことを素直に
認めて償うことを決意した。
「一つだけ聞いても良い?」
「はい、何ですか?」
連れていかれる直前にユリは舞雪にあることを聞いた。
「貴方の名字は月輪っていうの?」
「?いいえ、違います。私は兎澤ですよ」
「そう」
意味深な質問だった。この写真館は完全に消え去った。存在していたカメラも全て
浄化完了後、全てスクラップされた。仮死状態だった被害者たちも意識を取り戻して
無事に全員退院することが出来た。月影ユリは誰から誘いを受けたのか、どんな
人物だったかなどの事情聴取を行った上で判決が下された。
何者かにより嵌められた形で犯罪を犯したということで執行猶予1年とされた。
執行猶予の期間内に再び犯罪を起こさなければ彼女は牢屋に入れられることは無いのだ。
「能力を付加する?」
「そうです。私も出来るんですけど、このカメラに術を施した
術者はかなりの手練れですよ。ユリさんが術者ではないとしたら離れた
位置から術をずっとかけ続けているんですから」
そう語るのは監察ではない。一般職員、美澤六花。道具に何かしらの
能力を付加することが出来る。長い髪を掻き分けて彼女はカメラを
舞雪に手渡した。
「じゃあ、しっかり返してきてね」
「分かってますよ」
月影写真館に再び訪れるとユリは昨日と変わらない様子で店を経営していた。
「凄く良い写真が撮れました」
「そう、良かった。そうだわ、折角だからカメラで写真を撮ってあげる」
ユリは舞雪から受け取ったカメラを構える。
「良いのよ、遠慮しないで。料金もいらないわ。見返りも何も…ね」
妖しい笑みを浮かべる。この時、彼女の隠された本性が見えた気がした。
彼女は自身の写真館で思い出作りをした人たちを仮死状態に追いやっていることを
承知している。知っていても尚、このカメラを手放さない。
「…良いんですか?それならお願いします!」
ユリはきっと舞雪が苦しむ様を見たがっている。
馬鹿な女、この写真は貴方の遺影になるのよ。隣に立つ男諸共ね!
「はい、チーズ」という合図と同時にシャッター音が聞こえた。そのあとに
笑い出した彼女はすぐに固まった。目の前にいる彼女たちは何事も無かったかのように
そこに立っているでは無いか。
「どうして…一体、どうして!?」
「私たち、霊障対策課の刑事ですよ。名前ぐらい聞いたことあるはずです。カメラには
撮った人に呪いを掛けているんでしょう?このカメラだけ、やけに強力だったから」
「だけどこの術はアンタが掛けた訳じゃない。別の人間がカメラに術を付加し、
アンタはそのカメラを使って人を撮影する。こういう場所で撮影に来るのは結婚記念とか
入学祝いとか、何かしらめでたいことがある人だ。色々調べさせてもらったよ」
ユリは歯噛みする。この女は誘惑に負けた。彼女は本来ならば犯罪に手を染めることは
無かった。結婚し、子を産み幸せな家庭を築く。ある日、彼女は夫が自分から金を
巻き上げていることを知った。彼女は彼を徹底的に調べて不倫を知る。
『君ばかり、不幸な目に遭っているね。それは不公平だと思わないかい?』
カメラに術を付加した術者に目を付けられて、まんまと彼女は犯罪に手を染めた。
「こんなの不公平よ!私だって不幸なの、周りを不幸にして何が悪いの…!!」
「悪いです。自分が行ったことは自分に倍になって返ってくるんです。苦しんでいるのは
貴方だけではないと思いますよ」
「…不思議な子。まだ若いのに妙に達観してるのね貴方」
そう言ってユリは自身の両手を出した。自身が人を困らせていたことを素直に
認めて償うことを決意した。
「一つだけ聞いても良い?」
「はい、何ですか?」
連れていかれる直前にユリは舞雪にあることを聞いた。
「貴方の名字は月輪っていうの?」
「?いいえ、違います。私は兎澤ですよ」
「そう」
意味深な質問だった。この写真館は完全に消え去った。存在していたカメラも全て
浄化完了後、全てスクラップされた。仮死状態だった被害者たちも意識を取り戻して
無事に全員退院することが出来た。月影ユリは誰から誘いを受けたのか、どんな
人物だったかなどの事情聴取を行った上で判決が下された。
何者かにより嵌められた形で犯罪を犯したということで執行猶予1年とされた。
執行猶予の期間内に再び犯罪を起こさなければ彼女は牢屋に入れられることは無いのだ。
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