舞雪の霊感事件日誌

惣島ヒミカ。

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第1章「警察官になりました」

2話「月輪という名前」

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「よぅ、体調はどうだ?」

名前は広がっていたようだ。

「大丈夫です」
「とか言いつつ、魘されてたぜ。聞いてたんだからな」

黒野千景は煙の妖怪、煙々羅を式としている。その式を使った情報収集が
彼の主な仕事だという。その煙々羅と舞雪は意思疎通が出来る。

「えぇ!?嘘…因みになんて?」
「前と同じ。月輪じゃない、兎澤だってな。そんなに魘されてんのに
何も分からないのか?」
「さっぱり分かりません。月輪なんて、今まで一度も聞いたこと…」
「ちょっと待て!」

千景は彼女の話を途中で折る。話を折られた舞雪は目を点にした。

「名前…って言ったな?」
「言いました、けど…」
「記憶が無くても頭に薄っすら焼き付いてんな。そうか…月輪ってのは名前か」

千景はふと笑みを浮かべた。

「そうだったら調べることも出来るんじゃねえか。知りたいと思わないか?
月輪ってのが一体どんな人の名前なのか」

知りたい。でも怖くて仕方ない。知るのが怖い…。その答えを出す前に穂積が
やって来た。

「昨日の答えは決まったかい?真雪ちゃん」
「…はい。私、警察官やってみます」
「そんなに気張る必要は無いよ。何時でも周りを頼ればいいんだからね」
「ありがとうございます」
「そうだ。君が呟いていた月輪について少し手がかりを見つけたんだ。
こちらで手が付けられない場所があってね。その場所について探ってみたら
その村の御子一族として月輪家が存在していたんだ。こっちでもう少し
調べてみるよ」

御子、神事関連を担っている一家だというのだろうか。確かに霊障対策課に
情報があっても可笑しくない。きっとそれは舞雪の施設に入る前の消えた記憶に
真実があるはずだ。今は思い出さなくても良い。これからゆっくり思い出せば
良いのだ。

「さぁ、これが君の警察手帳だ。受け取ってくれ」

穂積から警察手帳を受け取った。穂積は警察をやめるわけでは無い。別の課に
移動するだけらしい。

「あ、でも…まだ親には何も言えてないや…」
「兎澤の親か。じゃあ今、電話して言っちまえば?」
「そうしてみよう」

と、軽い気持ちで電話すると両親は簡単に許可してくれた。

「おう、まさかこんなアッサリイクトは思いもしなかったわ」
「同感。もう少し驚かれると思ったんだけどさ…え、スゲェじゃん!
頑張れ!って言われた」
「君にもフィールドワークを色々体験してもらいたいけど…ふむ、君が
フィールドワークをするときは必ず戦える職員が近くにいること。それだけは
絶対に守ってくれるかな」
「はい。分かりました」

翌日から本格的に舞雪は霊障対策課で働くことになった。

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