#VTuber連続殺人事件

阿賀岡あすか

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朝野佑馬は推理バカである①

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『この一連の連続殺人の犯人は……あなたです!』

 ブラウン管に映るスーツを華麗に着こなした男性が、ビシッ! と複数人の中から一人を指さした。

 指をさされた男性は、最初こそは馬鹿馬鹿しいとすっとぼけていたが、彼の用意したアリバイを一つ一つ丁寧に崩していく内にみるみる顔が赤くなり、歯をむき出しながら探偵に怒声を浴びせる。威圧によってその場を支配しようとしていた。

 しかし探偵は終始落ち着いた様子で事件の全貌を語る。犯人以外の周囲の人間は、探偵の一言一句を聞き逃さないように固唾を飲んで聞き入っていた。

 ついに我慢の限界に来た犯人は鬼の形相で叫ぶ。

『偉そうに語ってるけどさぁ! 結局それは全部予想じゃねぇか! 証拠はあんのか証拠はよぉ!』
 その言葉を聞いた探偵は待ってましたと言わんばかりに――にやりと口角を上げた。
『ありますよ。証拠ならね』
『なっ……』

 動揺した犯人の隙にまるで畳みかけるように探偵はとっておきの証拠を叩きつける。激怒していた犯人は急速に顔を真っ青にして――静寂。

 がっくりと犯人は項垂れる。――決着の瞬間だった。


「か、かかかっけぇ……!!」

 僕は初めて視聴した推理ドラマの面白さに震えるほど感動していた。グラスに注がれたコーラは炭酸が抜けてぬるくなっていた。
 ぶっちゃけ話の内容の半分も理解できていなかったけど、クールに犯人を追い詰める姿がとてつもなく新鮮で、僕にとって戦隊モノよりもかっこよく見えた。

 少年時代の僕は、その日を境に推理というものに夢中になった。推理をドラマや推理小説を凄まじい勢いで消費し、小学生の将来の夢には筆圧強めに『名探偵』と書いた。友達には笑われた。ギャグと思われたらしい。

 推理に対する情熱は、成人しても消えるどころかさらに強く腹の内で燃え滾っていた。僕はなんの躊躇もなく警察学校を入学し、卒業。厳しい日々だったが、持ち前の明るい性格とハキハキとした語り口が印象を良くするのに一役買っていた。推理がしたいから刑事になりたいだけなんて言ったら教官にブチ切れそうだから秘密にしておいた。

 ちなみに探偵にならなかったのは、現実の探偵は殺人事件などの大きい案件に関与できないと知ったからだ。

 そんな訳で、僕――朝野佑馬はついに警察官として警察署に配属され、交番勤務が始まったのであった。ここで経験を積み、捜査官として活躍し上司から推薦をもらえば、夢の刑事になることができる!
 人生のモチベーションは高く、おまわりさんとしての自分に誇りをもって日々を過ごすこと――数年


 推薦される気配は一向になく、胸が躍るような謎多き事件にも巡り合うこともなく、大手柄を得る機会を窺う日々であったが、

 唐突に、まるで推理ドラマのような謎多き殺人事件に彼は関わるのであった。
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