溺愛Domの優しいコマンド

水ノ瀬 あおい

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カラー

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 入ってきたのは長身の男性。
 上等そうな黒いスーツにシルバーのフレームのメガネ。
 綺麗にセットされた黒い髪もキリッとした目元も、知的な雰囲気を漂わせていた。

「よくお似合いですね」

 近くまで来て微笑まれて、アワアワしてしまった俺はうまく反応できない。
 男性はテーブルの脇でスッと片膝を付いて名刺を差し出した。

表の店あちらの責任者をしております荒木あらき綜真そうまと申します」

 受け取ると、荒木さんは今度は先生の方に回ってそっちでも挨拶をする。

「ね!綜真!どう思う?」

 挨拶を終えて立った荒木さんに理久さんが声を掛けると、荒木さんはまた俺をチラッと見た。
 このお店の店長さんということは理久さんにとっては上司なのか?
 表の店、ということはこっち側はまた別なのか?

「これがデザインですか?」

 荒木さんはすぐにスケッチブックを手にして真剣な顔になる。

「どう?」
「えぇ。お似合いだと思います。着け心地はいかがですか?」

 スケッチブックを理久さんに渡すと、またこっちを見られて俺は思わず姿勢を正した。

「あ、い……いいです」

 何て間抜けな返答だろう。
 だが、荒木さんは笑うこともなく頷いて、先生にも意見を求めた。

「パートナーの着け心地もですが、Dom側の触れた感覚も大切ですからね」

 微笑んだ荒木さんは言いながらスーツの内から白い革のシンプルなカラーを取り出す。

「ね!着けてっ!」

 それを見た理久さんが少しトロンとしつつ首を伸ばすが、荒木さんはため息を吐いてカラーはテーブルに置いた。
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