溺愛Domの優しいコマンド

水ノ瀬 あおい

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セラピスト

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「あと三十分待って下さい」

 先生がピリッとした声を出してハッとする。
 すぐに俺のことを気遣ってくれて背中を撫でてくれたが、俺の身体は少し強張ってしまっていた。

「無理だよ。ここはあのクリニックじゃない。後ろがもうつかえているからね」

 高尾先生の困ったような声。
 それも深谷先生以外の存在を感じてしまっただけで、俺にはただ不安でしかなかった。

「……せめて十分」

 俺を心配そうに見つめて深谷先生は絞り出すように声を出す。

「五分後にまた来るよ」

 それでも高尾先生はそれだけ言って靴音と共に去って行った。

「……周防先生?」

 呼び掛けられて顔を上げる。
 先生の上に乗ったまま抱き締められていることに気づいて退こうと腰を上げると、腕を回されて引き戻された。
 そのまま抱き締められているだけで時間が過ぎたのか、再びノックの音がしてビクッと跳ねてしまう。
 先生はため息を吐いたが、俺がそれを制した。

「どうぞ」

 さすがに深谷先生の上から降りてベッドの端に腰掛けてからドアの向こうに声を掛ける。
 すると、高尾先生が看護師と共に入って来た。

「落ち着いたようだね。バイタルチェックしても?」

 聞かれて頷くと、看護師がすぐに血圧計を持って側に来る。

「プレイできたようだね」
「軽くですけどね」
「キミのプレイはいつも軽かったと思うけど?」

 先生たちが話しているのを俺は色々測定されながらただ聞いていた。
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