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セラピスト

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「“Comeおいで”」

 いつもの穏やかな声で呼ばれてじんわりと胸が熱くなる。
 それまでの冷えて固まった身体を解すようなその温かいコマンドが嬉しかった。
 立ち上がって先生の元へと向かう。
 伸ばしてくれているその手に触れると、先生は「“Good boyよくできました”」と手を握って笑ってくれた。

「では……“Sit座って”」

 左手は俺の手を握ったまま、右手でトントンと先生の腿を叩かれて戸惑う。
 でも、先生が軽く俺の手を引いて微笑んでくれて、俺はゆっくり足を踏み出した。
 靴のままは躊躇ってその場で脱いでからベッドに座る先生を跨ぐように膝立ちで乗る。
 そのまま腰を降ろしてしまうのは迷っていると、先生はこっちを見上げて小さく首を傾げた。

「これでは先生の好きなキスもできませんよ?」

 ふわりと笑われて先生の肩に手を乗せる。
 ゆっくり窺うように腰を降ろすと、先生は笑って軽くキスをしてくれた。
 それでも元々身長の高い俺が先生の上に乗ると更にデカさが際立つ気もする。
 申し訳なさに腰をズラそうとすると、先生は俺の腰に手を回してギュッと抱き締めてきた。

「“Goodいい子”」

 優しいそのコマンドを聞くだけでゾクッとしてしまう。
 甘い疼きはじっくりと全身へと広がって心地よかった。
 安心感から力の抜けた俺は先生に凭れ掛かってトロンとその表情を溶けさせてしまう。
 だから、部屋がノックされたのも気付かなかった。
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