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セラピスト

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 初めて入った処置室はよく見る病院のそれとは違った。
 ちゃんと一つの部屋になっていて、病院の中とは思えない暖色系の照明と大きなベッド。
 大きめの三人掛けの布製のソファーと温かみのある木製の丸テーブル。
 花瓶には真っ白のダリアとオレンジと黄色のマリーゴールド。
 金木犀の枝も壁にある花器に挿してあってふわりと優しい甘さの香りで満たされていた。

「座れますか?」

 支えられながらソファーに並んで腰掛ける。
 部屋には俺と深谷先生だけだが何となく落ち着かない。

「先生、大丈夫ですよ。ここはいわゆるプレイルームではありません。だから、確認用のモニターもないことは確認済みです」

 俺の不安を理解してくれた先生が優しく背中を撫でてくれて、やっと少し身体の力を抜くことができた。

「ごめ……さい」

 途切れつつも謝ると、先生は俺の顎を指で持ち上げて顔を合わせる。
 じっとこっちを見てフルフルと首を横に振ると、ゆっくりと微笑んでくれた。

「謝ることではありません。軽いサブドロップでしたが……今は僕にケアをさせて下さい」

 そのまま抱き寄せられて頭を撫でられる。

「僕に、委ねてもらえますか?」
「……はい」

 答えると先生は一度身体を離して笑顔を見せてくれた。

「コマンドを使います。いいですか?」
「はい」

 頷くと、先生はゆっくりと立ち上がる。
 ベッドの前まで行って腰を降ろすとこっちを見て微笑んだ。
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