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「……マジかよ」

 店のドアに貼られた“本日臨時休業”の文字にガックリ肩を落とす。
 この暑い中をわざわざ歩いてきた空腹の俺にはかなり堪えた。
 もうコンビニでいい、と思いつつ、ここまで歩いてきたのに……とやはりまだ諦めきれないでいると、

「こんにちは」

 軽く肩を叩かれて振り返る。
 そこには笑顔の深谷先生が居た。

「あ、こんにちは」

 学校外で“先生”と呼ぶのは躊躇って頭を下げるだけにしておく。

「……お茶休憩の予定でした?」
「いえ……お恥ずかしながら食事に」
「え?もう十四時過ぎですよ?」

 その文字を見て少し困ったように頬を掻いていた先生がピタリと動きを止めた。

「はい……寝過ごしまして」

 恥ずかしくて声が小さくなると、先生は少しだけ笑う。

「もしかして……朝食さえまだ、ということですか?」

 もうその顔さえ見れなくてただ頷くと、「じゃあ!」先生に手を引かれて結局目を合わせてしまった。

「この先に定食屋あるので行きませんか?」

 自宅アパートから徒歩数分の距離なのにそんなお店は覚えがなくて戸惑っていると、

「安いのにおいしいですよ!」

 にっこりと笑みを向けられて了承する。
 すぐ裏通りに入って日陰なのもありがたい、と思っていると先生は「あそこです」と指を差した。
 そこには看板も見当たらなくて、近づいても店らしさはない。
 古民家にしか見えなくて首を傾げると、先生は微笑みながらその玄関ドアをカラカラと引いて開けた。
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