上 下
36 / 311
野外活動

1

しおりを挟む
 夏休みで少しダレていたのもあったかもしれない。
 朝早くの集合がキツくてあくびを噛み殺しながら職員室に入ると、既にほとんどの先生方が集まっていた。

「すいませんっ!!」

 慌ててその場まで走ると、

「まだ時間前なんで大丈夫ですよ」

 主任の真野先生に笑われる。しかも、

「それより……髪ハネてますよ?直しましょうか?」

 隣に来た深谷先生に微笑まれて恥ずかしかった。
 俯く俺の肩からリュックを降ろされて手を引かれる。
 先生の席のイスに座らされて引き出しから出したクシで梳かされる髪。

「手の掛かる弟ねぇ」
「いやぁ、かわいくて仕方ないですよ」

 真野先生と深谷先生の会話も恥ずかし過ぎて俯くことしかできなかった。

「じゃあ、野活中、弟のことよろしくね」
「はい」

 二人は穏やかに話しているがこっちは居た堪れない。
 ワックスで整えられながら俺はずっと黙っていた。すると、

「……照れてます?」

 耳元で囁かれて跳ね上がる。
 パッと見ると、深谷先生は満足そうに微笑んでいた。

「僕はお世話できて、かわいい顔も見れて満足ですよ?」

 俺たち五年の担任が集まる机から深谷先生の机は少し距離がある。
 それでも小声でそんなことを言われてドキッとして、慌てて他の先生たちの反応を確認してしまった。
 こっちのことは一切気にもしていないようだが心臓はバクバクとうるさい。

「野活、楽しみですね」

 ちょっと心臓が保たなさそうで心配なのは俺だけらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...