わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

多忙の中で

3

「サライド様、こちらは……」
「あ？あぁ……これはリバーに聞け」

　現場を取り仕切っている壮年の名を口にすると、リバーは凄い勢いでこっちを向く。

「ちょ、ちょっ、ちょっ!!サライド様～!?」

　聞こえたらしく情けない声を出して小走りしてきた紫色の髪のリバーに顎で指示をしておいた。
　村の測量と道の整備から始まった開発。
　三十後半のリバーは知識も経験も多く、頼りになる男だった。
　リューラからリバーを紹介された時はカチコチに固まっているリバーを見て不安でしかなかったが、実際現場での仕事が始まるとかなり豊かな知識も技術も持つ男で信頼もできる。
　まぁ、俺には相当遠慮してまだかなり緊張しているみたいだが。

「サライド様！」

　また別の男が走ってきて、それもリバーに振ってやる。

「えー!?うぅ……」

　恨めしい目は感じつつも俺は知らん顔をしてその場を離れた。
　昨夜の父さん、あれは一体？
　リューラが父さんに何か言ったのか、それとも……。
　考えたところで答えは出ない。
　でも、あの言い方は絶対何かあるはずだ。
　スッキリしなくてモヤつきが残る。
　俺だってリューラが唯一の王で、あいつが何と言おうと簡単に恋愛ができるようになるなんて思っていない。
　ましてや男同士なんてそんなの認められないのはわかっている。
　だから、俺はサフィナと……思いはするが何かが引っ掛かる。
　実際、結婚と踏み切ることはできない気がした。